異をとなえん |

新聞社よ、情報の卸売になれ

2009.04.18 Sat

19:59:30

最近読んだ「ブログ論壇の誕生」に次の一節があった。


「既存のマスコミが絶対に理解できない、かつ生理的にも受け付けられないネットの特徴は「編集権を読者に委ねている」ということ。新聞、ラジオ、テレビと既存のマスコミはすべてニュース価値をマスコミの側で判断し、それを受け手に与えるという構造だった。何をどう扱うかは最初から最後まで、すべてマスコミ次第。つまり「編集権を完全にコントロールできる」状態。言い方を変えれば完全なる「押し付け」だ。だから、マスコミはブログやSNSなど受け手の側が発信、編集するというのは生理的にも受け入れられない。」


anti-monosの新メディア論
からの引用なのだが、これを読んで逆に新聞社は編集権を売るということを考えた。
元データのアクセス権と、広告宣伝できる権利を普通の人々に売る。
購入した人は、元データを読み易いように編集してウェブに投稿する。
最低限の費用はアクセス代として徴収し、広告収入を折半する。

新聞社は膨大な生データを持っている。
それをウェブにそのまま置きたいが、
そうすると新聞などを読む人がいなくなってしまう危険性がある。
それを懸念して、
新聞記事をネット上に置くときにはいろいろ制限を加えているのが普通だ。
また、生データをそのままアクセスする人は、そんなに多くはない。
量が多すぎるし、要点を掴むのに時間がかかりすぎる。

元データをアクセスする人を会員制にして、絞り込むことによって、
生データをそのままウェブに置く必要がなくなる。
会員としてアクセスした人は、編集権を行使して、
その中の重要な部分を自分のセンスに従って編集し、かつ論評する。
量はとてつもなく大きいだろうから、新聞みたいな大量の紙面にはならない。
けれども、興味ある部分に限れば、実行してみたい人はいるだろう。
たとえば、海外の小さな国の情報などは、紙面の都合であまり載らない。
けれども、その国に興味を持って継続的にチェックしている人はいる。
そういう人たちにとって、ボツにされている記事を読み、
編集する権利は魅力的ではないだろうか。
読者も個人編集の新聞として、その内容に興味を持ち、
普通に載らないデータにアクセスできる。
新聞の簡約版であるウェブ記事よりずっと魅力的だろう。
読者も集まれば、広告費も期待できる。

新聞社は情報の卸に近い存在になる。
現在の新聞社の問題は、全てのデータを一括して売っているために、
個々の価値が認識できなくなっていることだ。
編集長が複数いて、その編集長は自分の編集しているページに人気が出れば、
必要とする生データを欲しがることだろう。
そうなれば、卸となった新聞社追加取材について、
追加の料金を請求することができるようになる。
個々の情報の価値が上がっていく。
つまりは、ロイターみたいな通信社に近い存在だが、個人にデータを売り、
料金は成果報酬に近い部分が違う。

採算を取れる可能性はあるか。
とりあえず、元データの取得には一銭もかかっていないので、追加の費用はない。
問題は編集権を買ってくれるユーザーがどのくらいいるかだが、
ある程度はいると思う。
たとえば、2ちゃんねるだ。

2ちゃんねるに大量のマスコミからの記事があるのは周知の事実だ。
引用を超えている感じだが、法律の谷間をくぐり抜けている。
けれども、2ちゃんねるは条件次第では、記事を購入するのではないだろうか。
新聞記事を元にして膨大なアクセスを稼いでいる以上、
記事を略することもなく掲載でき、あるいはウェブの限られた記事ではなく、
オリジナルの新聞記事をそのまま載せられれば、金を払う価値が出てくる。
現状よりは、どちらにしても望ましい。

うまく行くかどうかは、わからないが、
編集権を購入したユーザーがあまり成功しないならば、ウェブ上のアクセスも、
新聞の講読数も影響しないのだから、損ということはない。
成功して多くの人が、データを購入してくれれば、うまく行くことになる。

そもそも、ネットでユーザーがデータを買わないのは、
それを消費しているだけだからだ。
そのデータを転売して儲けようと考えている人間は買うはずだ。
データを加工して、転売するためには、
元データをきちんと利用できる権利が必要だからだ。
普通の個人には、元データを読めるというだけで、
加工して売る意識はないかもしれない。
それでも、無料で利用されているよりはいい。

もっと単純に売る方法もある。
今の新聞はネット上のデータを時間が経つと消去してしまう。
ブログで引用している人間にとっては不便もはなはだしい。
ブロガーに現在の購読料程度で、記事をリンクする権利を売ることにしよう。
普通にアクセスする場合ははじき、
ブロガーのサイトからリンクしている記事は読み込みを許す。
そうすれば、
ブロガーにはリンクする権利を購入するインセンティブを与えることができる。

グーグルだって買うかもしれない。
グーグルからのリンクのアクセスに応じて、グーグルが利用料を支払う。
普通とは逆だが、他の検索サイトが読めない新聞記事を読めるということで、
グーグルにもメリットになるはずだ。
本当に成功すれば、どの検索サイトも購入するだろうから、同じだろうけど。

歌田明弘の『地球村の事件簿』:「何でも無料」時代のネットのビジネスモデル
の記事に、95%有料5%無料というビジネスモデルの話が出ている。
料金を払う日本のブロガーはその程度いるのではないだろうか。

データを単純に引用するのではなく、編集する場合に戻ろう。
利用者を測定する方法だが、基本は新聞社がサーバーを貸す方向になる。
テンプレートを用意してやれば、利用者もその方が便利だ。
広告のクリック数も完全に測定できる。
それに応じて料金をかければいい。

問題点としては、
新聞にとっては世論を誘導する力をほとんど失なうことになる。
自分達が誘導した方向と全然違う方向に、
ネットの世論が向いてしまうかもしれない。
これは問題だが、現在の財政的な苦境を考えると、
その部分に拘っていられないだろう。

いろいろと考えてきたが、結構悪くないアイディアのような気がしてきた。
ブログでリンクした記事を残すというのは、ブロガーに歓迎されると思う。
新聞社も編集権を手放すような、革新を必要ともしない。

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