異をとなえん |

40歳定年制を強要するのはおかしくないか?

2012.10.20 Sat

21:35:31

高齢化社会が進むにつれて労働者が足りなくなるから、労働市場の流動化を進めなくてはならない。
だから40歳定年制を導入して終身雇用を廃止しよう、という意見がある。

参照:終身雇用、年功賃金がいつまでも続いている理由

引用開始

人口に占める労働力の割合が低下するという人口オーナス時代においては、限られた労働力をできるだけ有効に活用していくことが必要となる。そのためには、産業・企業を超えて労働力の再配置を行っていくことが必要となる。この時障害となるのが、終身雇用的な日本の雇用慣行だ。40歳定年制は、この硬直的な従来型の雇用慣行を打ち破る方策として提案されているのだ。
引用終了

なにかおかしくないだろうか。
この問題を労働市場における長期契約と短期契約の違いとして考えてみよう。
市場において価格は激しく変化することがある。
需給の変動によって、需要と供給の差が激しく変化してマッチングすることが難しい場合だ。
作りすぎて余ってしまうとか、買えなくてみんなが行列を作っているような場合に起こりやすい。
需要が供給を大きく上回れば価格は上昇するし、逆に需要が供給より大きく下回れば価格は下落する。
その変動幅が激しいと市場で商売する人間にとっては先の見通しが難しくなる。
供給を増やすための長期投資も難しいし、価格が安定していれば買おうと思う購入者にとっても手を出しにくい。
だから、市場の一時的変動を無視して長期での契約を目指すメリットが出てくる。

ただし、市場の需給関係が長期に渡って変化すると考えるならば、長期と短期の契約の選択にも変化が出てくる。
市場の需要が供給を長期にわたって上回り続けると考えるならば、価格は上昇傾向を見せるだろうから、売るほうとしては長期契約を嫌い短期での取引を望むし、買う方は長期契約を好むだろう。
逆に市場の需要が供給を長期にわたって下回り続けると考えるならば、価格は下降傾向を見せるだろうから、売るほうとしては長期での契約を望み、買う方は長期の契約を嫌うだろ。

中国では労働者がなかなか定着しないと聞く。
長期的に労働需要が増加していくと、人々が考えているから、長期雇用は魅力がないのだ。
だから、賃金が高いところに直ぐ移動する。

逆に現在の日本では公務員の人気が高まっている。
デフレが続いているので、賃金は上昇していない。
だからできるだけ長期雇用で、働いている所が潰れないことを望む。
公務員は長期雇用だし、解雇される可能性は極めて低い。
もちろん絶対ではないが、他の企業に比べれば安定している。
公務員に求職者が集中するのは当然の話だ。

つまり労働市場でも人々は長期契約と短期契約の損得を勘案して、職業や職場を選んでいる。
それなのに、契約条件を後出しで変更するのが望ましいかという話だ。

労働者は経営者より数が多いので、民主主義社会では政治の力によって定年延長などと長期契約を変更しようとしている。
民主党の政策はそういうものが多い。
これは経営者側を後付けで不利にしているので問題だが、政治力を使って長期契約を打ち切らせようとする、はっきりした契約違反よりはましだ。
定年延長の場合は賃金の引き下げを当然の前提としている。
価格が変更されることを前提とするならば、契約期間を変更しても妥当な水準での契約となりうる。
それに対して、長期契約をいきなり打ち切るのは、長期の安定した取引のために安い価格で売ることに同意した供給者を裏切る行為だ。
認めるべきではない。

終身雇用は慣習によるものだから契約をキャンセルする方法は幾らでもある。
なによりも、企業が倒産危機にあれば賃金は大幅にカットできるし、退職者を募ることもできる。
つまり長期契約といっても絶対的に保障された契約ではないのだから、法律によって無理に解雇しやすくする必要はないように思える。

そして一番違和感を覚えるのは、高齢化によって労働者を流動化する必要があるから、40歳定年制にしようとする理屈だ。
高齢化によって消費は減少し、経済は成長できなくなっていく。
企業には働いていない労働者がありあまってしまい、解雇しなくては潰れてしまう。
だから企業のために40歳定年制にしようという理屈ならわかる。
それをなにか労働者にとって有利なような感じに40歳定年が出てくるのが、気に入らない。

高齢化で労働者が減少すれば、賃金は上昇していくはずだ。
そうなれば終身雇用形態で働いている人たちは人を雇ったばかりの新興企業に比べて相対的に賃金は低くなる。
終身雇用は企業の義務であって労働者は制約されない。
だから新規求人の賃金が長期安定のメリットを上回るほど高くなれば、労働者は移動していくはずだ。
終身雇用という概念での契約は普通ではありえないほどの長期の契約なので、なかなか簡単には引き抜けないかもしれない。
高給で引き抜かれても、雇った会社が直ぐに倒産しては困るのだから、移動が難しいのも道理だ。
けれども労働市場が段々と逼迫していけば、短期契約での賃金市場は高騰し、それは長期契約での賃金にも波及してゆく。
そうすることで自然と労働者は流動化し、再配置されるはずだ。
40歳定年ということで強制的に追い出さずとも、賃金が上昇し続けるならば人々は自然と流動化する。
法律的に強制する必要は全くない。
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今後の日中関係はどうなるだろうか?

2012.10.19 Fri

20:55:20

私は悲観的である。
前回書いたように、現在の中国が戦前の日本と類似しているならば、日中関係はさらに悪化する。
中国の最終的な目標は尖閣諸島ではないし、南シナ海の島々の実効支配でもないし、西太平洋での覇権の確立でもない。
今中国で日本との対立を煽っている人たちの目標は軍事費の増大だ。
目的ではなく手段の方が重要になりつつあるのだ。
だからとにかく対外関係が悪化させて、世論を軍事費の増加を認める方向に変化させようとしている。
彼らの目的が対外関係の悪化そのものならば、日本がどれほど平和を目指す努力をしても限界がある。
一歩引けばさらに一歩踏み出してくる、というのが現実になる。

もっとも日本が一歩引けば他の所に中国の目標が移動する可能性もあるので、戦術的な対応としての譲歩は考えられないこともない。
つまり、日本が尖閣諸島を放棄すれば中国は他の国にけんかを売る方向に変化するかもしれない。
それはそれでありのような気もする。
けれども、尖閣諸島を放棄するような大きな譲歩ではなく、棚上げ論の復活のようなやり方では、対立は解消しない。
中国にとって尖閣諸島は手ごろな目標なので、日中の対立はどうしても続くだろう。

尖閣諸島がなぜ手ごろかというと、日本との対立の争点だからだ。
日本と対立するということは、中国共産党のそもそもの立党の目標が中国から日本を追い出すことであった以上、復古の精神にかなっている。
日本の軍事力は強くもなく、弱くもなくで、目標としてちょうどいい。
アメリカの軍事力は強すぎて、それに対抗しようとする努力は、莫大な予算を必要とする。
軍事関係以外の人間は予算が巨額すぎることもあって反対しようとするだろう。
日本を仮想敵国とするならば、少し努力すると打ち破れるほどの軍事力が形成できるように見える。
日本の海上戦力は駆逐艦レベルの戦力はかなり大きいが空母はない。
中国とすると、空母を何隻か持てば打ち破れそうに見える。
さらに島への攻撃は、中国軍の中に上陸戦用の戦力を整備する格好の理由となる。
これがアメリカや日本以外の国だと、そう簡単にいかない。
フィリピンやベトナムだと海上戦力が弱すぎて、とても軍事費増大の理由にならない。
そして海軍主体の軍事拡張は金を食うのだ。
軍事費の増大こそが真の目標である以上、海軍主体というのは望ましいことになる。

軍事費増大を目的として反日を旗に掲げた勢力が中国の主導権を握れば、日中間の紛争は激しくなってゆく。
しかし、戦争を嫌い、平和を重視する勢力は中国にはいないのだろうか。
具体的に誰かを判断することは外国から見ていると難しいが、それでもたぶんいることはいる。
戦前の日本で外務省が戦争を避けようといろいろと努力していた。
けれども、その努力は国内から見ていると、宥和的で頼りにならない感じを持たれる。

下記の記事で中国の新聞が共産党批判をしたとある。

参照:中国各紙が異例の共産党批判、「言論の自由」改善の兆しか

引用開始

中国政府系の複数の新聞が、共産党を批判した地方の役人が処罰を受けたことについて批判する報道を行っている。
引用終了

記事の中では「言論の自由」と結びつけて考えているが、私にはむしろ中国中央の権力を否定し、宥和派を追い出して強硬派が権力を握ろうとする企みに見える。
もちろんたいした根拠はないので妄想かもしれない。
しかし今までは経済成長を目標とすることで一致して活動してきた党も、強硬派と宥和派に分かれればどうしても権力闘争が激しくなる。
それは相手を非難することが盛んに行われ、国内の雰囲気が悪くなることで表面化していく。
そんな情勢の一つに見えた。

歴史的に見て、対外強硬派と穏健派が対立した場合、結局は強硬派が勝って戦争状態に突入したケースがほとんどと思える。
と言うか、今いろいろ考えているが穏健派が勝ったケースを思いつかない。

成長できない不満を軍事費の増加で解消しようとすると、その勢力はがん細胞のように増殖していく。
軍事費が増えれば対外関係は悪化するし、対外関係が悪化すれば軍事費は増大する。
このスパイラルを止めるのは難しい。
最終的に戦争になった場合のことを考えて止める力は、まさに戦争になる直前まで力が働かない。
そして戦争直前だと、不可避だということで、重さのある物質が落下するように戦争に突入してしまう。
ただ現在は核による抑止が働くので少し違う。
これについてはまた別途書くとしよう。

日中の間の市民レベルでの対話によって、平和を保とうと考える人たちもいる。
中国の一般市民は日本に対して特別悪い感情を持っていないと主張するわけだ。
確かにそうかも知れないが、問題は彼らに戦争を止める力があるかだ。
戦前の日本においても戦争に突入することを反対した人々はたくさんいた。
けれども彼らは軍部のテロなどによって、押さえ込まれてしまう。
これは平和を求める勢力が戦争を止めようとするならば、たぶん国内での戦いを覚悟しなければならないからだ。
強硬派を叩き潰すために内戦をも覚悟する必要がある。
外国と戦いたくないから、国内の人と戦うというのは、平和を求める人たちには矛盾そのものだ。
それがたぶん穏健派が力を持てず、強硬派が勝つ理由だ。
強硬派が勝てば外国との関係は悪くなる一方だ。

以上の考察から、日中関係は悪化をたどると予想する。
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なぜ中国は戦前の日本と似ているのか?

2012.10.18 Thu

21:50:36

中国が戦前の日本に似ているという話がある。
私も中国の軍部と戦前の日本の軍部が似ているという記事を書いたことがある。
その記事では軍部だけに話をしぼったが、国全体としても似ているように思う。
なぜ本質的に似ているのか。
基本的な理由は、覇権国の交替理論において中国が世界秩序挑戦国になっているからだ、と思う。

もっとも、中国の軍部と戦前の日本の軍部の違いを考えてみると覇権国に挑戦しているかどうかと関係ない部分が多い気がして、理屈の正しさに自信がなくなってきた。
第一本格的なバブルの崩壊が始まったのは2008年なので、それ以前は急成長している国という特徴は似ていても、世界秩序挑戦国といった感じではくくれい。
バブル以後に状況をしぼると、事実がはっきりしないので証明できないだろう。
それでも少し考えてみたい。

まず、現在の中国と戦前の日本が世界秩序挑戦国と考えると何が似てくるか。
世界秩序挑戦国であれば、世界経済がバブル崩壊などの停滞状態に突入する前は急激に成長しているはずだ。
いや、覇権国がもたらした世界秩序の中で急激に成長したからこそ、現在の中国と戦前の日本は世界秩序挑戦国になったのだ。
急激な成長は社会を大きく変動させていく。
特にこの成長を起こした技術進歩は外から導入したものであり、国内での発展要因は経営者が労働者を組織化し、資本を再度投資にあてたことによる。
これは資本家への富の集中を加速させ、貧富の格差を拡大させる。
戦前の日本でも財閥への富の集中は問題になっており、現在の中国でもジニ係数は0.4を越え、世界の中でも高い方だ。

高度成長している時期には格差が拡大していても我慢できるが、成長が止まり停滞すれば不満は増大する。
富の格差を解消するイデオロギーの力が強くなり、人々の間に広まってゆく。
基本的に高度成長する前の格差は小さかったのだから、昔に戻れといった復古的思想が強くなってゆく。
戦前の日本では、共産主義という富の格差の是正を最大のテーマとしたイデオロギーの力が強くなっていき、同時に右翼による復古主義も盛んになった。
左右両極への分離が激しくなったが、本質的には格差の是正を目指しているように思われる。
中国でも、先の尖閣諸島反日デモの際に、毛沢東のポスターが提示されたように富の是正を目指す思想が強くなるのではないだろうか。
中国の復古思想はもろに共産主義なので、左右の分離というより共産主義復活が強く叫ばれるだろう。

軍隊は高度成長している時代や平和な時代では重視されない。
経済の成長している分野で活動した方がずっと儲かるからだ。
覇権国による成長が世界を覆っていればどこの国も戦おうとしたがらないだろうから平和になる。
軍事費自体は経済が成長しているから、それに見合った分は支出されるだろうけれど、相対的には恵まれていない意識を持つ。
軍人はたぶんに復古思想というか、建国の原点に戻れといった感情を抱きがちになるだろう。
成長が止まり、恐慌が発生するような状況になれば、復古思想を支持する国民は多くなり、軍隊はその主導的役割をになうことで国民から広い支持を集めることができる。
同時に不況自体が外国での需要が減ったことが原因で起こるので、国民は外国に対して批判的になり、軍による外国への対決を求めていく。

戦前の日本では第一次大戦による好景気と戦後の軍縮で、軍人の肩身は狭かった。
制服を着て外に出れないような気分になっていた。
けれども昭和恐慌が発生し、社会自体に不穏な雰囲気が漂うと、復古思想をリードする軍人たちへの支持は高まっていった。
五・一五事件、二・二六事件のように、軍が暴力を行使して政府の要人を殺害するけれど、それを国民が支持していく。
不況から来る中国やアメリカの反日行為に対しても、怒りから軍による対決を求めていく。

現在の中国でも高度経済成長の時代はそれほど恵まれた感じを受けない。
党官僚の汚職はたくさん見るけれど、軍人の汚職事件は少ない気がする。
ここらへん実証してはおらず、単に中国報道を見ている自分の感覚だ。
けれども、最近の中国の状況を見てみると経済情勢が悪化していることに伴い、暴動は増えている。
その中で国民は不満のはけ口を求めて、反外国的な態度をとりがちだ。
尖閣諸島での反日行動や、南シナ海での拡張行動、韓国との漁業紛争と領土紛争も、中国国民は強く支持し軍による対決を求めているように見える。

そして、覇権国による成長が頓挫し、世界に保護貿易主義的な雰囲気がまんえんしていくと、国家は成長を保つためにケインズ主義的な公共投資を実行しがちだ。
世界秩序挑戦国は輸出によって成長していたので、余剰となる生産力は極めて大きい。
また、国家個別な単位で見ると、世界秩序挑戦国において新技術はまだ飽和していない。
公共投資を増やすことで経済を回転させ、新製品の普及を図ることが経済は十分成長できる。
今までの世界秩序の中で疎外されている意識と余剰生産力が結びつけば、軍事力の増強を図ることが予想できる。

実際日本の場合大恐慌以後、高橋財政によって軍事力の増強に舵をきった。
そして不況からいち早く脱出したけれど、軍事力の増強自体が世界秩序に対する挑戦となっていった。
中国も同じではないだろうか。
金融危機以降の経済の不況を中国は巨大な公共投資によって封じ込めた。
けれどもそれは何度も使えない。
生産力を増やす投資では消費が増えなければ損になってしまうからだ。
軍事費は純然たる消費であって、反動は出てこない。
けれども軍事費を増大させれば、それを使いたい衝動は強くなる。
軍を使用して対外問題を解決したい欲望を抑えきれなくなっていく。

いろいろ考えてみると、やはり戦前の日本と現在の中国が似ている感じは強まってきた。
似ていることを前提として、今後中国はどうなるだろうか。
まず考えられるのは軍部主導の政権ができるかだ。
日本では不穏な情勢を背景にして、軍部によるクーデター騒ぎやら暗殺事件が大量に発生した。
中国の軍人が非合法な手段での暴力行動に踏み切るかどうかは決定的に重要だろう。
反日デモは非合法ではあったが、政権自体には直接挑戦していなかった。
政権は反日デモの火消しに回り押さえ込んだが、今後は違うかもしれない。
日本に対して宥和的であることを理由にして、軍人がテロに走る。
そういう可能性も十分にあることを考慮して、今後の中国情勢を観察していきたい。
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続:覇権国の交替理論

2012.10.17 Wed

21:19:35

前回はバブル崩壊によって覇権国が保護貿易に走り、そのため輸出で利益を上げていた国が世界秩序に挑戦する国に変貌するところまで説明した。
今回はその続きだ。

バブル崩壊によって保護貿易主義が広まったところで、世界は三つの種類の国に分かれる。
まず覇権国だ。
覇権国の金融システムを支えていた国もここに含まれる。
覇権国は金融に特化しているので、金融システムが成長を止めると、これらの国も成長することは難しくなる。
しかし、元々が極めて繁栄している国々だったので、世界の秩序を変革しようなどとは考えない。

次に覇権国に変わって、最先端の産業を進歩発展させていた国がある。
次期覇権国候補だ。
覇権国は金融業の利益が巨大なので、人材や資源が金融業に集中していく。
すると、それ以外の産業がどうしても手薄になっていく。
金融業には進出できないけれど、技術的には覇権国にほぼ追いついていた国が最先端の産業の支配権を握るようになる。
この国は最先端の製品を輸出するので、保護貿易主義による影響を強く受けない。
他の国には作れない製品を作っているからだ。
また一人当たりGDPも覇権国に追いついているから、成長しようとする強迫観念は強くない。
だから、世界秩序を変革しようとする意識はそれほど持たない。

上記以外の国が世界秩序挑戦国となる。
どこの国でも作れる製品を作っているので、保護貿易主義が広がると輸出を増やすことができない。
だから、技術の劣位国は輸出ではなく、自国の内需によって成長することが望まれる。
でもそれは簡単にはいかない。
消費を増やしていくメカニズムがないからだ。
労働者の賃金は他の要因が変わらなければ増えないから、消費を増やす力がない。
技術進歩こそが、真に消費を増やす仕組みだが、そもそも劣位国では技術進歩を生み出していく仕組み自体がない。
今までは先進国からの技術導入で間に合わせたからだ。
残るのは資本の投入による生産性の向上だが、覇権国でのバブルの崩壊によって輸出ができなくなれば、資産価格自体が下落する。
その状況では資本は投入できない。
結局消費は増えず、内需が拡大しない状況になるわけだ。

世界秩序挑戦国は技術が遅れている以上、一人当たりGDPも低い。
それが成長できない状況に陥れば、不満も高まってゆく。
世界秩序を変革することで成長を目指そうと考えてくる。

また、世界秩序挑戦国が他の国と大きく違うのは輸出中心に成長してきたので生産能力自体は非常に高いことだ。
だから余剰生産力をケインズ政策による公共投資に投入して、成長を回復しようとする。
公共投資といっても、世界の秩序に不満を持つ以上、一番投資したくなるのは軍事力だ。
軍事費を拡大して余剰生産力をそこに注ぎ込み、強化した軍事力で一気に世界秩序を変革することを目指す。
この場合の世界秩序の変革というのは、覇権国が世界に張り巡らした投資を奪い取ることだ。

世界秩序挑戦国が世界秩序に挑戦すると、覇権国は自国の投資を奪われては困るから、世界大戦が勃発する。
この場合次期覇権国候補がどちらにつくかが、決定的に重要かもしれない。
基本的に次期覇権国候補は現在の世界秩序にそれほど不満がないので覇権国側につきやすいが、特に決定的要因はない。
次期覇権国候補のついた陣営が勝利するので、結局次期覇権国候補がリーダーとなって世界秩序を再構築し、覇権国に繰り上がることとなる。
この大戦と同時並行して、次期覇権国候補が技術進歩を再開させれば、世界全体の経済成長が復活する。

これが私の考える覇権国の交替理論だ。
中国の状況をいろいろと考察する内に、現在の中国と戦前の日本がとても似ていると思った。
その理由を考察すると、現在の中国と戦前の日本が世界秩序挑戦国だとするのが一番わかりやすい。
そのために覇権国の交替理論をまず説明した。
次回は現在の中国と戦前の日本が世界秩序挑戦国だから似ていることを説明したい。
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覇権国の交替理論

2012.10.16 Tue

21:43:11

前にも一応書いたような気がするのだが、どの記事だったかも忘れてしまった。
そこで覇権国がなぜ交替していくのかについて、もう一度書いてみる。

覇権国の交替というのは、繰り返し起こっていく現象なので、どこが出発点なのか判別しないのだが、まずは全ての国が平等な場合から始める。
全ての国が平等といっても見かけだけで、実際は技術水準などが異なっている。
そうすると技術がもっとも優位な国は新技術、新製品によって経済成長を始めていく。
新しい需要を作り出し、供給することで、一人当たりGDPが成長するといっていい。
そうすると他の国も新製品が欲しくなり、輸入を始める。
その場合貿易収支の均衡が崩れるのだから、他の国は最先進国に対して輸出をする製品を作り出さなければならない。
一応、全ての国に差がない状態では貿易収支は全て均衡していたと仮定しておく。
また、借金して新製品を輸入することも考えられるが、その場合は返す当てが必要だ。
つまり輸出を増やす必要があることには変わりない。

基本的に国際収支に偏りが出れば、それを是正するために為替相場が変動する。
あるいは金本位制みたいな世界で固定為替相場を想定するならば、新製品を輸入する国の賃金が最先進国に対して安くなればいい。
そうすると、新製品を輸入する国、なんか文が長くなるのでこれからは劣位国と略す、では今までの製品の価格競争力が増すので、輸出が増え、国際収支は均衡することになる。
最先進国での技術進歩が続き、劣位国では開発が止まったままだと、劣位国は相対的に貧乏になってゆく。
この状況は劣位国にとってまずい。
劣位国も技術革新を行い、新製品を輸出することで、豊かになろうと考える。
しかし技術革新は簡単にはできない。
それに新技術を一から開発するより、すでにあるものを導入した方がずっと安上がりだ。
最先進国から技術を導入する。
そして新製品を作るための設備の導入には資金が必要だ。
劣位国は貧しいので、その資金を最先進国から借金した方がいい。
この場合新製品を作ることによって輸入を代替できるので、貿易収支は黒字化する。
だから借金が返済できるので、最先進国は金を貸してくれるわけだ。
最先進国が金を貸す場合、自分たちの国の通貨での返済を要求する。
最先進国の損得は自国の通貨で判断するのだから当然だろう。
劣位国は従うしかない。
最先進国の通貨は基軸通貨として世界に広まっていく。
ここで最先進国は基軸通貨国となったわけだ。

世界経済を一つの経済として考えると、新技術が普及してゆくときは、みんなが新製品を買いたくて仕方がないので、高い利息で借金しても買う。
同時に新技術での製品を作り出す企業も儲かって仕方がないので、借金してでも設備投資を行う。
みんなが借金をするのだから、金貸しは儲かって仕方がない。
基軸通貨国では信用創造できるので金融業が発達し、世界の他の国にたいして金を貸してゆく。
金融業は儲かって仕方がないのだから、基軸通貨国はおおいに繁栄する。
同時に金を貸すということは、借金を踏み倒される危険性ができることだ。
踏み倒されてたら金を貸さないやり方もあるが、軍事的に優っているならば強引に取り立てる方法が使える。
基軸通貨国は技術的にもっとも進んだ国なのだから軍事的にも優位だ。
そこで基軸通貨国は覇権国となり、自分たちの投資を守るために、世界の秩序を安定させる。

覇権国の技術進歩が続いていけば世界は安定するがそうはいかない。
技術進歩自体に波があることも問題だが、一定の速度で技術進化を続けていても、金融資産が増加していれば設備投資も購入資金も簡単に手に入るようなので、新技術の飽和する期間がどんどん短くなるのだ。
そうすると、設備投資資金も購入資金も足りていて、借金する人がいない時期がくる。
金利は低下していく。
金融機関は収益を求め、より筋の悪い貸し手に対して貸す金を増やしていく。
返せる当てのない人にも、みんなが金を貸せば一時的には大丈夫なように見える。
高い金利で貸しているのだがら儲かって仕方がない。
バブルの発生だ。
しかし返せる当てがない人たちがいつまでも利息を返し続けることはできない。
なんらかの条件変化によって一斉にこげつくことになる。
バブルが発生しているときの成長は未来への楽観から来る消費の増加だ。
バブルが崩壊し、未来への楽観がなくなれば消費は減少し、それに合せて経済が縮小する。

バブル崩壊による不況では、各国はケインズ政策に走りたくなる。
今金のある人が将来に期待して、貧しい人に金を貸してくれるわけだ。
けれどもそれは国単位での話となる。
理想的には金持ちの老人が貧乏人の若者に金を貸すけれど、景気が良くなったら貧乏人の若者が金持ちになって借金を返済すればいい。
でも国をまたぐとそうはいかない。
ケインズ政策を実行して国債を発行しても、その代わりに輸入が増えるならば、増やそうとした雇用は輸出国に流出してしまう。
実に問題だ。
そこでケインズ政策を発動した国々は保護貿易主義に走る。

世界の秩序が安定していたのは、覇権国に対して他の国々が輸出をすることで、輸出国が成長し繁栄していたからだ。
覇権国が保護貿易主義に走れば、輸出国は成長のエンジンを失う。
成長できない不満が輸出国を世界秩序に挑戦させる国に変貌させる。

この項続く。
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続々:胡錦濤の面子が潰れたから反日デモが起こったというのは、中国の宣伝工作だ

2012.10.13 Sat

21:34:57

私は「胡錦濤の面子が潰れたから反日デモが起こったというのは、中国の宣伝工作だ」という説をとなえている。
それを裏付けるような意見を見つけたので、メモしておく。

日経新聞の10月10日の真相深層には、次のように書かれている。

引用開始

唐家セン前国務委員は日本の政治家に胡主席のメンツがつぶされたのがデモと破壊活動の原因と訴えた。だが率直過ぎる唐発言からは、日本の世論の矛先を野田政権の不手際に向けるための宣伝、演出のにおいがする。
 実際、日本政府は立ち話前に国有化の決定時期は9月11日と中国外務省に伝えていた。報告を受けたはずの胡氏は面目を失いかねない会談になぜ応じたのか。「中国は直前までの内部協議で国際宣伝、デモ対応など日本を痛い目にあわせる反撃体制を整えていた」。別の中国筋の説明だ。
引用終了

私の主張している次の二点を裏打ちしている。
胡主席のメンツがつぶされたのがデモと破壊活動の原因というのは中国側の宣伝である。
中国は立ち話前に内部協議で反撃体制を準備していた。
後、私がこの説を書いたのは10月8日なので後出しの主張ではない。

また、反撃体制が準備されていたことを前提にすると、胡主席が日本政府による尖閣諸島国有化を批判した発言を中国国営新華社通信がいったん記事から削除し、再び記事中に復活させた事実も、考えさせるものがある。

面子を潰されたことを原因にして日本を攻撃する場合、胡錦濤が日本を批判した記事は広く公開しておく必要がある。
それに対して、日本と事を構えたくないと考えている人間にとっては、批判したという事実はあまり中国国民にとって知られて欲しくないわけだ。
復活させた人たちを反日派、削除した人たちを親日派とすると、必ずしも反日派が全権を把握していたわけではないのかもしれない。
一部の親日派が一時的に発言を削除したけれど、反日派がひっくり返したとすれば筋が通る。
しかし、胡錦濤の国有化批判自体が反日派の意向に沿うものと思われるので、胡錦濤親分の意向を理解していない親日派の外務省が一時的に削除したけれど、中枢部の意思を伝えられて修正されたのだろう。

いろいろと推測はできるけれど、基本的には反日派が中国首脳部をほぼ支配していると見て間違いない。
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日本は尖閣諸島の領有権を棚上げすることで問題解決を図るべきか?

2012.10.12 Fri

21:27:58

「続:中国の指導部は無能」の記事の中では、尖閣諸島問題で中国の目指す落としどころがよくわからなかった。
しかし、中国の民主党政権批判の宣伝工作を読むことで、わかってきた気がする。
ずばり、中国の目標は尖閣諸島領有権の明示的棚上げだ。

次の二つの記事は、民主党の外交を批判することで、尖閣諸島の領有権問題を棚上げして日本が中国政府に妥協することを迫っている。

デモに続き不買広がる中国で日系企業が悲鳴

引用開始

 尖閣諸島は日本が実効支配していたにもかかわらず、わざわざ中国を挑発して「領土問題」を顕在化させてしまったのは日本政府の失態だ。野田政権は国有化をいまさら撤回できず、解決は次期政権に先送りされる公算が高い。中国は、日本が否定してきた領土問題の存在を認めることを求めてこよう。そのうえで領有権は従来どおり「棚上げ」で手を打つしかあるまい。
引用終了

尖閣は「棚上げ」から「共同開発」
領土という戦争の痕跡を超える発想を?


引用開始

 日中友好条約を結んだ1978年当時の関係に立ち戻ることだ。この条約で両国は「紛争解決を武力に訴えない」とうたった。日本国憲法の精神で両国が約束した事柄である。この時点で、尖閣列島の領土問題は棚上げされた。領土問題があるから「棚上げ」したのである。

 日本はその後「日中間には領土問題は存在しない」という姿勢に転じた。棚上げ=問題なし、という奇妙な解釈である。中国としては納得できない措置だった。
引用終了

中国の日本外交批判が成果をあげているのかもしれない。
日本が先に約束を破ったと批判することによって、元の状態まで戻すのは当然だというふんいきを作り上げている。
だから日本が譲歩すべきだと主張する人が出てくるのだろう。
ただ、暗黙の棚上げと明示的棚上げでは大差があるので、日本政府としては納得できないはずだ。
明示的棚上げは中国の領有権主張に一理あると認めるわけで、尖閣諸島が日本固有の領土と主張してきた経緯から見れば大幅な譲歩となる。
第一、外務省としては尖閣諸島の国有化は領土問題に実質的な影響がないと主張していたはずだ。
それを批判されるのは納得がいかないだろう。
中国のやり方は、勝手に誤解して心が傷ついたから賠償を求めるという、やくざのやり方だ。
下記の記事にもある通り中国に対して日本が泣きついていると中国は思うだろう。

日本が尖閣問題で中国側に提示する「妥協案」の解説

引用開始

 そうした中で、中国に対する「妥協案」を提示するということは、中国側の攻勢を受けて、日本側中国に泣きついてきているということに解釈されかねません。
引用終了

譲歩に切りがなくなる。

この提案に対して日本は譲歩すべきか。
基本的には反対したい。
無人の尖閣諸島は前にも述べたが、かえって侵略行動を誘発する危険性がある。
明示的棚上げをしたら、尖閣諸島に自衛隊を駐留させることができない。

もう一つの問題として、中国内部にも穏健派と強硬派がいるはずだ。
ここでの譲歩は強硬派を勢いずかせるだろう。
強硬な態度でいれば外国は譲歩すると思い込んでしまえば、中国はどの国にもそういう態度で迫る。
その態度ではうまくいかないとわかれば、路線が変わるかもしれない。

中国の行動が外国の政策によって影響を受けるかどうかは難しいけれど、害を拡大する方向へ向かわせるのは望ましくない。
ソ連をキューバ危機によって押さえ込んだように、一線を引いてそこからは絶対に譲歩しない、という方針が最終的には中国の行動をおとなしくさせると思う。
これから中国は膨張指向を強めると思うのだが、強く圧力をかけていけば弱いところに出て行く。
弱い部分を食い破って、戦争になるか。
周りの国全てで圧力をかけて、ソ連みたいに内部崩壊するか、どちらかではないか。
日本としては、とにかく自分のところに出て欲しくない。
別のところに行って欲しいということで、譲歩を拒否したい。
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