異をとなえん |

アメリカ経済の復調の理由は?

2012.03.03 Sat

20:50:50

アメリカ経済が復調している。
株価はダウが13000ドル台をつけたし、2月の自動車販売台数は年率調整をして1500万台を越えている。
GDPも金融危機前の状態を追い越してきた。
しかし、金融危機の本質的な原因である、不動産の価格はまだ低いままだ。
住宅の販売件数も最低ベースにある。
資産価格の下落は経済に簡単には癒やしがたい悪影響を与えるというのが、私の意見だった。
それでは、なぜアメリカ経済は復調しているのだろうか。

理由としては、次の四点が挙げられる。
政府が強力な財政政策を実行している。
まだ、バブルの清算が終わっていない。
金融政策が効いている。
シェールガスが利用可能になった。

実は、日本経済と比べてアメリカでは金融政策が効いているのがアメリカ経済の復調の最大の理由だと考えていた。
けれども、四点並べてみると、どうも清算処理がまだ本格的に始まっていないのが最大の理由に思える。

日本と比較してみると、日本はバブル崩壊後も経済成長を続けていた。
1997年が名目の国内総生産では最大になっている。
1998年に金融機関の資金繰りがつかなくなって、ようやく不良債権の処理が始まったわけだ。
それに伴ない、消費は増えなくなり、設備投資が減少して、経済が完全に停滞した。

バブルが崩壊しても、人々は簡単に行動を変えない。
いずれ、景気は回復し、資産価格も戻ると見ている。
日本のバブルは、企業が持っている土地の価格の上昇が最大の原因だった。
だから、その含み益を当てにして、設備投資を大幅に増やしていった。
その含み益が当てにならないと考えた時点で、身の丈に合わせて投資を減少させねばならないのが、経済を停滞させた。

アメリカについて考えてみると、バブルの最大の原因は住宅価格の上昇にあった。
住宅価格の上昇による含み益によって、アメリカ国民は消費を増やし、それが経済の拡大に結びついていった。
また、住宅を担保にしたローンによって、金融機関は多くの利益を挙げた。

では、住宅価格が下落することで生まれる損はきちんと清算されているのだろうか。
住宅の購入者は相変わらず破綻しまくっているように見える。
借金の金利が払えなくなったところで踏み倒すわけだ。
金利を払っているうちは、所有者が消費を減らすことで需要に効いてくる。
それに対して、破綻した場合はその時点で金融機関に損として現れ、利益の減少として需要に響いていく。

ファニーメイとフレディマックは相変わらず赤字を垂れ流している。

米フレディマック:7−9月は赤字−財務省に60億ドル支援要請

米ファニーメイ:78億ドルの支援、財務省に要請−7〜9月赤字で

一時的に黒字を出すこともあるが、全然回復していない。
毎期ごと、きちんと時価評価をしているのならば、なぜ赤字が止まらないのか。
どちらの会社も不動産担保ローンを購入して、自分で出した債券との間の金利の利鞘を稼ぐのが基本の商売だ。
個々の債券の価格の変動はあるだろうけれど、償還されれば黒字にならないとおかしい。
結局は、不動産担保ローンが破綻し続けているから、いつまで経っても赤字のままなのだ。

二つの会社は政府が保証しているので、垂れ流された赤字は政府がその尻拭いをしている。
つまり、住宅価格の下落による損失は最終的に政府が持っているということだ。
さらに、FRBが不動産担保証券を大量に購入している。
大元が踏み倒されていると、ちゃんと償還されているか心配になるのだが、形だけは価値を維持しているように見せている。

日本のバブル崩壊において、不動産価格も不動産会社の株価も、なんとか価格を維持していた。
金融機関が問題ないふりをしていたからだ。
だがこれをいつまでも続けることはできなかった。

アメリカは1兆ドル以上の財政赤字を続けている。
10年物のアメリカ国債の利回りが2%近辺を維持しているように、回りの環境はそれを許しているようだ。
それでは、これを続けられるだろうか。
それは難しい。
アメリカ政府の赤字をそのまま認めていくことは、結局アメリカの裕福な国民が貧乏な国民を支えているだけだ。
アメリカ国民の大嫌いな社会主義である以上、どうしても財政赤字削減政策は支持を得る。
最終的にはアメリカにとってもその方がいいと私も思うが、当面の経済成長では悪影響を及ぼすだろう。
日本もバブル崩壊後の政府の財政政策は景気が悪くなれば支出を拡大し、良くなれば支出を減らそうとしていた。
それと同じ行動をアメリカも取ろうとしている。

現在のアメリカ経済の復調の理由を四点挙げたが、シェールガスの増産以外は結局政府の支出拡大につながっている。
金融政策はまた微妙なのだが、国債を買っていることで、政府の支出拡大に貢献していることは疑いない。
純粋な金融政策の評価については、また別に書きたい。

2013年は4000億ドル以上財政赤字を削減する、と言っているが、そんなことをすれば間違いなく景気を冷すだろう。
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貿易赤字を嘆く人が不思議で仕方がない

2012.03.02 Fri

20:35:06

私には情熱がない。
それが文章に力を持たせることができない理由だ。
怒りというか、ある程度言いたいことはあるのだけれど、どうでもいいやというニヒリズム的な見解にすぐ逃げてしまう。
そこをどう克服して、文章を継続して書けるか悩んでいる。

そもそも、なぜ文章を書きたいかというと、どうしてもおかしいとしか思えない主張が出まわっているからだ。
見解の相違ではおおいきれない、おかしさを感じる文章に出会うと、一言言いたくなる。
そう考えてくると、やはりおかしい文章に対する怒りをぶつけるのが一番正しい記事の書き方なのかもしれない。

そこで気になった記事である。

もし日本が経常赤字になったら経済はどうなる?ドイツに学ぶビジネス振興策のススメ

その中の3ページ目に次のような文章がある。

引用開始

 事実、四半期ベースの経常収支(季節調整値)によれば、?1%低下すると、同時に長期金利が+0.19%pt(ポイント)上昇する関係がある(図表3)。赤字が拡大しても成長率の高い国もあるので、経常収支の黒字・赤字と成長率、金利には一義的な関係はないという議論もある。しかし、日本の場合は図表で分かるように、経験的に黒字が縮小すると、金利が高くなり成長率が低下するといえる。
引用終了

日本の経常収支黒字が縮小したら最終的には成長率が低下する、と主張している。
いや、それはおかしい。

まず、経常収支/GDPと金利の間に逆相関関係があるのは図から認められるし、たぶん正しい理屈だ。
逆相関というのは、経常収支/GDPが高ければ金利は低く、逆に経常収支/GDPが低ければ金利は高いことだ。
理屈としても、経常収支/GDPが高いということは、国内に資金が余っていることを示すのだから、当然金利は低くなる。
逆に経常収支/GDPが低いというのは、国内で余っている資金が少なくなることを示すのだから、金利は高くなる。
さらに経常収支が赤字になれば、国外から資金をあおがねばならないのだから、為替リスクを取った資金の金利は高くなることは予想できる。

しかし、金利が高くなると成長率が低下するというのはどうだろう。
相関図を出すことなく、いきなりマクロ計量モデルを持ち出してくるのは、いんちきぽっい。
去年2011年を除くと、経常収支が少なかった年は、むしろ景気が良かった印象がある。

日本の成長率と経常収支の関係は次のようになっている。

年度 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989
成長率 3.18 4.18 3.38 3.06 4.46 6.33 2.83 4.11 7.15 5.37
収支 -10.75 4.76 6.85 20.80 35.01 51.15 86.12 84.55 79.27 63.24

年度 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999
成長率 5.57 3.32 0.82 0.17 0.86 1.88 2.64 1.56 -2.05 -0.14
収支 43.94 68.38 112.33 131.98 130.55 111.40 65.74 96.55 119.07 114.53

年度 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
成長率 2.86 0.18 0.26 1.41 2.74 1.93 2.04 2.36 -1.17 -6.28
収支 119.61 87.79 112.61 136.24 172.07 165.69 170.44 210.97 157.08 141.75

年度 2010 2011
成長率 3.96 -0.47
収支 195.86 147.03

成長率の単位: %
収支単位:10億 USドル

たとえば1993年から1996年は成長率が上昇すると同時に経常収支の黒字が減少している。
逆に1996年から1998年は成長率が悪化するのに合わせて、経常収支が増加している。
2000年代は成長率が増加するのに合わせて、経常収支も増加している感じだが、これは外需の成長への寄与度が極めて高くなっているからだ。

成長率が上昇するのに合わせて経常収支の黒字が減少するのは不思議なことではない。
景気が良くなって消費が刺激されれば輸入が増えるし、国内の需要に答えるために輸出は減るだろう。
つまり、経常収支/GDPは低くなるはずだ。
そして景気がいいということは、消費を増やすことであり、企業はそれに対応して投資も増やす。
これも経常収支が減少するのと同じことだし、貯蓄が減って、投資が増えるのだから、金利も上昇する。

結局景気が良くなって、経済成長率が上昇すれば、経常収支は減って、金利は高くなる。
これはほとんど当然のことだ。

経常収支が減ると、その後成長率が減少するかは簡単には答えが出せない問題だと思う。
自国通貨安の消費の減退効果や、逆に自国通貨安の輸出の促進効果がある。
複雑すぎる。

経常収支/GDPと成長率の間にも逆相関関係が成り立つだろうから、経常収支/GDPが減少すれば数年後成長率が下がるというのは、景気が良くなって成長率が上昇したら、数年後にはまた景気が悪くなりますよと言っているだけだ。
上がれば落ちやすくなるけれど、上げること自体を目的としているのにそのことを見ないで批判するのは、おかしい話だ。

経常収支の減少や貿易赤字になったことを嘆く人が目につく。
1980年に貿易赤字を出してから、日本経済は常に貿易黒字を計上するようになった。
高度成長が終わり、成長力が鈍るようになったからだ。
旺盛な供給能力の増大はあったけれど、需要はそれにつれて伸びていかなかった。
そのため余った供給能力が押し出されるように、輸出に回り、貿易黒字が定着した。
だから、貿易黒字がなくなったというのは、供給に対して、需要が追いついたということで、望ましいことなのだ。

もちろん問題点はいくつかある。
まず今回の貿易赤字は、東日本大震災の影響が大きい。
震災被害により需要が急増した。
韓国からは緊急事態に対応するために、いろいろと物品を輸入せねばならなかった。
また、原発が停止したことにより、電力用の天然ガスの輸入量が急増した。
価格は原油を参考にしているので、やはり上昇し、その積は当然高くなっている。
輸出は主として、自動車生産が震災の影響で停滞したことで、輸出に影響が出た。
2011年は、これらの特殊事情により大幅に貿易収支が悪化した。

2012年、上記の問題が解決すると貿易収支は黒字に戻ってしまうかもしれない。
そうすると待望のニュースである貿易赤字もぬか喜びとなるだろう。

当然のことながら、貿易収支の赤字を歓迎するのは、供給が維持されていて、需要が自然に増加したときだ。
去年のように自動車の供給が維持できなかったり、震災の影響で壊れた物に対応する分輸入するのは、前よりは損をしているだけなので経済的にはつらいだけだ。

ただ、貿易赤字については今後定着するという話もある。
金融危機後、顕著になっているが貿易収支は赤字方向に変化しつつある。

これは日本経済が回復し、段々と消費が増えていることを示している。
金融危機後も個人消費は確実に増えているのだ。

悲観する必要のないGDP成長率

この記事の中では、金融危機以後も個人消費(民間最終消費)が着実に増えていることを示している。

昨年10-12月期GDP速報のマイナス成長は憂慮すべきか?

この記事の中では、民間消費デフレータと国内需要デフレータが上昇しプラス圏に戻ろうとしていることが目に取れる。
消費が堅調なので、デフレからの脱却が標的に入りつつあるのだ。

バブル崩壊以後の需要の縮小によって、貿易収支も経常収支もずっと大幅な黒字基調だった。
それが個人消費の拡大によって、ようやく赤字とはいえないかもしれないが、0に近づきつつある。
この状況を悲しむ人が多いのは不思議に思えて仕方がない。

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