異をとなえん |

バーナンキの背理法は正しくない

2009.10.02 Fri

05:08:45

リフレ政策の帰結について考えていたら、
流動性が拡大すればインフレになるのか疑問に思えてきた。
リフレ政策を取るとインフレになるという結論自体が怪しい。
私は財政政策の助けを借りずに、金融政策だけでインフレを起こすことはできないと思う。

リフレ政策でインフレが起こるという証明にはバーナンキの背理法が挙げられる。
wikipediaを見ると次のように書かれている。

引用開始

「もし、日銀が国債をいくら購入したとしてもインフレにはならない」と仮定する。すると、市中の国債や政府発行の新規発行国債を日銀がすべて買い取ったとしてもインフレが起きないことになる。そうなれば、政府は物価・金利の上昇を全く気にすることなく無限に国債発行を続けることが可能となり、財政支出をすべて国債発行でまかなうことができるようになる。つまり、これは無税国家の誕生である。しかし、現実にはそのような無税国家の存在はありえない。ということは背理法により最初の仮定が間違っていたことになり、日銀が国債を購入し続ければいつかは必ずインフレを招来できるはずである。
引用終了

この証明がおかしいのは、インフレの発生時点が示されていないことである。
当たり前だけど、我々が問題にしている期間は1、2年であり、長くても5年ぐらいだろう。
この期間にインフレが発生するかどうかが問われているのだから、
長年の経験からくる無税国家がありえないという理屈は使えないはずだ。
つまり、短期間だけ無税国家が成立するならば、この証明は意味を持たない。
バーナンキの背理法は、不況によって需給ギャップが発生しても、
それはいつかは解消されると言っているだけに過ぎない。

実際、日本のバブル崩壊の対策にしても、アメリカの今回の不況の対策にしても、
中央銀行は大量に国債を買っている。
それでも日本はデフレを食い止めることはできなかった。
アメリカはまだデフレにはなっていないが、今にも落ち込みそうである。
FRBは不動産担保債券を大量に買って、資産を膨張させているが、
それでもインフレの気配は薄い。
結局、需給ギャップを解消して始めてインフレが発生するのであって、
資産と貨幣を交換するだけではインフレは発生しないのではないだろうか。
消費をすることによってのみ、インフレを起こすことができるのだ。

インフレになるには需給ギャップを解消する必要があるはずだ。
政府が財政政策の発動によって、需給ギャップを埋めるだけの財政支出をし、
それを国債で賄うならば、インフレになることは確実だろう。
ただ、この場合には財政政策の助けがいる。
なお、国債を発行しないで税金によって支出を賄うと、
税金分民間の需要が減るのでインフレは発生しない。
よって、財政政策と金融政策の両方の助けを借りれば、
インフレを発生させることはできる。

問題なのは、財政政策によって支出を拡大しようとしても、それには限界があることだ。
いつかは返却しなくてはいけないことを考えると、
なんらかの効用がなければ納税者は納得しない。
需給ギャップを埋めるほどで、きちんと効用のある支出などない。
結局インフレを起こせない。

話がずれてしまったが、
そもそもの私の問題意識は流動性の拡大がインフレをもたらすかどうかだった。
疑問だということで、とりあえず今日は終わっておく。

参考記事
「バーナンキの背理法」のweak form
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リフレ政策に反対する(その2)

2008.06.11 Wed

02:28:37

2.リフレ政策は不具合を生む

人口が一定で需要が変わらないなら、
価格は絶対に上がらないかと言うとそうではない。
通貨供給量を拡大していけば、必ず物価は上がるはずである。
しかし、このような市場は健全だろうか。
私にはそうは思えない。

たとえば、通貨供給量を拡大してインフレになったとしよう。
具体的には公共工事のために国債を大量に発行して日銀が引き受けることにする。

どんな風にインフレが発生するかは難しいが、
資材価格が高騰して諸物価が上がっていくことにする。
現在の輸入原材料の価格が上昇しているのに似ている。
この状況が好ましいだろうか。
供給側の費用が上昇して価格が上昇すると言うことは、
需要が減少することになる。
普通の消費者にとってはあまり好ましいことではない。

それでは、インフレ期待が発生して、消費者の需要が増大したとしよう。
もうすぐ価格が上がるからということで、商品に飛びつくことになる。
どっちが鷄が卵かというような議論になってしまうが、
価格は上がる。
しかし、これはガソリン税騒動のような話で、
価格が上がってしまった後はがくっと需要が減少する。
ガソリンはほとんど買いだめができないが、買いだめができる商品ならば、
さらに需要が減少するだろう。
結局、インフレ期待による需要の増大は、
恒常的なものでない限り、それが剥落した後は悲惨な事になる。

通貨供給量を増やして無理矢理インフレにしたとしても、あまりいい事とは思えない。

上記は理論的に考えた一つの結末だが実際の経済では起こらない可能性が強い。
実際の経済では、通貨供給量を増やす政策は資産インフレを生むだろう。
日本も今回の景気回復期に不動産のプチバブル現象が起きていた。

その資産効果によって需要が増大し、つまり財布が厚くなったのでムダ使いをして、
インフレになることもありえる。
けれども、バブルがはじけた後、それを後悔しない人はいないだろう。

つまり、人口減少社会で発生するインフレは、体感での景気がどうであろうとも、
景気過熱状態の可能性が強い。
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リフレ政策に反対する(その1)

2008.06.10 Tue

02:07:37

リフレ政策に反対する。
ここでいうリフレ政策とは、1%から2%ぐらいの物価上昇率の目標を決めて、
それを下回っている場合、金融緩和政策を続けることを言う。
人口の減少が起こっている日本は基本的にデフレが続いていく。
その状況でリフレ政策を取る事は不具合を生む可能性が大きい。
よって、リフレ政策に反対する。
日本はデフレが続く事を前提として、政策を立てる必要がある。

1.人口が減少している経済はデフレになる

BI@K:writings:余は如何にして利富禮主義者となりし乎(参考:頻出問對)

リフレ政策については、上記を参照したが、
人口が減少しつつある、あるいは一定の社会ではデフレが続くという論点は
取り上げていない。
経済成長が続くかぎり抽象的な総需要が総供給を上回り、
必ずインフレになるはずだという理屈はあると思うが、
私の主張したいのは、
現実の物価上昇率は抽象的な総需要とは関係なく決まるということだ。

現実の物価上昇率は、
統計局ホームページ/平成17年基準消費者物価指数の概要
などを見るとわかるが、極めて普通の商品によって決定されている。

人口が減少しつつある日本では、普通の商品の需要は基本的に減少し続ける。
もちろん、景気の変動によって需要は上下に振れるが、
ある程度の期間で見れば下がっていくことになる。
では、なぜ経済成長ができるかと言うと、
新商品や新サービスを生み出しているからだ。
しかし、これは消費者物価指数には反映されにくい。

1998年から始まる日本のデフレは、
人口の増加率が2%を切り、人口増加がほぼ一定であることから生まれた。

需要が増えている商品もあるが、これはデジタル製品が多い。
デジタル製品はムーアの法則が続く限り、価格は低下していく。
需要の増加が価格の上昇につながらない。

通常の商品の場合、需要はほぼ一定だと思われる。
だからと言って、価格が動かないかと言うとそうではない。
通常の商品も、技術進歩によって生産性は改善していく。
そして、生産性の改善は規模の増加によって生じる事が多いので、
生産性の上昇した企業は価格を下げ、
販売量を増やす事によって利益を増やそうとする。
結果、市場は需要過剰になり価格は低下する。

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コストプッシュ型インフレに対して金融緩和政策を取る?(その2)

2008.02.07 Thu

03:25:03

コストプッシュ型インフレに対して金融緩和政策を取るのコメントから、原油価格が上昇していて、金融緩和政策が無効な場合として、次のようなモデルを考えてみた。

A国とB国があって人口は各々100人ずつとする。A国は50人が小麦を作っていて、残りの50人はその他の産業で働いている。小麦の生産量は200人分で、この世界では食べられる物はこれしかなく、これ以上の量もこれ以下の量も消費しない。小麦の生産にはB国で生産される石油が必要で、それ以外は必要としない。B国では、50人が石油を生産していて、残りの50人はその他の産業で働いている。石油の生産には人力だけが必要とする。B国は石油、その他の物品をA国に輸出し、A国は小麦、その他の物品を輸出していた。

ある時、B国での石油の生産性が悪化し、一人当たりの生産量が3分の1になった。この場合、この世界での産業構造が最終的に以下のようになるのは自明だろう。A国からB国に50人が移動し、150人で石油を生産し、A国では50人が小麦を作り続けることになる。移民制限があって、B国が100人で石油を生産し、A国が約33人で小麦を生産して、66人が餓死するケースもあるが、それはまあなしとする。石油の生産性が低下した事によって、全員が奢侈品を一切手に入れられない生活になったことになる。

この過程がどう進むかと言うと、石油の生産性が低下した事によって石油の生産量が減少し、価格が暴騰する。A国では石油の価格が暴騰し、結果小麦の価格も暴騰し、その他の製品の価格は相対的に安くなる。この過程はその他の製品の価格が0に近づき、誰一人として生活できなくなるまで続く。そして、食べるために、B国に移民をすることになる。

さて、問題はこのような世界でA国が金融緩和政策を取った場合である。最終的にその他製品の価格が0に近づく事は自明だから、小麦の価格がどんどん上がり続けるだけになる。この場合金融緩和政策はA国の中で一時的な錯覚を起こすだけで意味がないことになる。

極端な事例を取ったが、B国での石油の生産性が2分の1になったとしても、A国とB国のその他製品を作っている中から50人が生活できなくなり、B国の石油産業に移動するはずである。そして、その分の生産物が少なくなっただけ、人々は貧乏になっている。この場合の金融緩和政策も、A国で移民しなければならないほどの状況になるならば、小麦の価格が上がり続けるだけの結果を起こすだろう。

これらの事から類推するに、リフレ政策が意味を持つのは経済成長している場合だけである。長期的に見れば経済は成長するという信念は私も持っているけれど、短期的には経済が縮小している状態はありえる。その場合、バブル崩壊後の日本経済のように金融緩和政策は意味を持たないのではないだろうか。
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コストプッシュ型インフレに対して金融緩和政策を取る?

2008.02.03 Sun

02:18:33

が〜ん経由で、

原油価格高騰(コストプッシュ型インフレ)についてヘリコプター・ベンが一言を読んだ。

リフレ派はコストプッシュ型インフレに対して、金融緩和政策を取るらしい。納得できない。

理由は非常に簡単で、家計の収入が一定(つまり給料が上昇しない状態)の時に、コストプッシュ型インフレ*1が発生すると、家計が圧迫され(なぜなら給料が上昇しないので)、その他の商品の買い控えが起こり、それは最終的にはデフレ要因になるからですね。


直感的にこのデフレ傾向は正しいと思うのだが。原油の値上りによって、原油関連の物資の価格は非原油関連の物資より相対的に高くならなければならない。そうする事で、需給の調整された正しい市場均衡に移動するはずである。インフレの発生によって、原油が値上りしている事実をわからなくしてはいけない。

もう一つの考えとして、次も考えた。石油代金の増加によって、経済規模は小さくなるはずだから、石油代金の増加が経済成長より大きいと仮定して、その場合通貨流通量は普通より過大になるはずである。つまり、インフレ傾向になる。だから、金融引締め政策を取る。

「原油価格上昇を受けた物価上昇に対して、FRBは利上げをすべきだ」というような話を最近耳にしますが、少なくともリフレ派はそういう意見には反対する人が多いと思います(リフレ派のblogでこの話題はすでに扱われているので、時間があったらリストを作りたいと思いますが・・・)。


最近、ようやくリフレ派の理論がわかってきたような気がしたのだが、ここで緩和政策を取るのだったら私はまだ全然わかっていない事になる。
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