異をとなえん |

再び大恐慌はありうるか? - ギリシャ危機の本質(その4)

2012.06.19 Tue

21:07:33

スペインの国債利回りが上がり続けている。
スペインのEUに対する援助要請も時間の問題だろう。
このまま世界は再び大恐慌に突入してしまうのだろうか。

リーマンショックによって世界経済は一つの限界に達し、資産価格の下落を止められなくなった。
発端はアメリカのサブプライムローンだったが、成長の限界を意識することによって、将来の期待が剥げ落ち、資産価格は暴落していった。
いったんは各国政府の財政支出の拡大によって、経済活動の崩壊は妨げられたが、経常収支の赤字国では長期間持たない。
その結果弱い部分である、アイルランド、ギリシャ、ポルトガル等が破綻し、今スペインにたどりついている。
このまま世界恐慌が再来するのだろうか。

大恐慌が世界全体に波及していった理由を考えると、世界全体の需要が急落することによって、供給が大幅に余剰になったのに、ついにそれをカバーする国が生まれなかったのが最大の原因だ。
世界全体で不足した需要をカバーできる国はたぶんアメリカ以外いなかったにもかかわらず、アメリカは資本の供給をやめ、保護貿易に走り、世界の経済活動のシステムを致命的に破壊した。
それがどうしようもなく弱小国を追い詰めていった。
もっともアメリカが救済に走るというのは、アメリカ政府が借金をして弱小国の商品を買い取ることを意味する。
国内の労働者の救済のことを考えるとそれは容易なことではなかったのは確かだ。

現在世界経済は同じように世界恐慌のがけっぷちに立たされている。
需要の剥落分を政府支出によってカバーできなければ、ある意味世界恐慌は必死だ。
それだけの支出ができる国はアメリカ、ドイツ、中国、日本の四カ国しかないが、ドイツ、中国、日本が財政支出を拡大するのは難しい。
消失した需要を補うことはできても、それ以上に需要を作り出そうとするのは、困難を極める。
借金の拡大に本能的に恐怖心を抱いてしまうからだ。
そうすると、一番大事なのは世界に需要を提供してきたアメリカがその需要を維持し続けることだ。

アメリカはリーマンショック後の混乱によって大幅な経済活動の後退を起こしたが、財政支出の拡大、金利の引き下げによって、経済は立て直されている。
その結果GDPは成長し、急減していた経常収支の赤字もだいぶ戻してきている。
アメリカはこのまま前の状態に復帰して、世界経済を支えていけるのだろうか。

しかし、それは簡単ではない。
まず金利の引き下げによる経済成長促進の効果は既につきている。
借金を低金利のものに振り替えた企業の利益増大はもう期待できない。
金利低下での投資の拡大も、投資先がなくなりつつある。
ドル圏は世界全体を覆っているので、世界が成長していれば投資先はある。
ドルにヘッジしている国には、低金利でドルを調達して、そこに投資すればそれだけで儲かる。
実際アメリカが低金利政策を開始したときは、世界に資金が投資され、ドル安になることも含めて、アメリカは利益を上げることができた。
けれども世界はアメリカの資金を受け入れることができなくなりつつある。
大量に投下されたドル資金は資産価格を上昇させ一時の好況を招いたが、たちまちのうちに限界に陥った。
アメリカの持つドル資金は大きく、世界の受け入れる能力に限度があるのだ。
ユーロ圏の危機や中国のバブル崩壊も含めて、今やアメリカに資金が戻りつつある。
それはドル高を意味して、海外への投資もままならない状況だ。

そこでアメリカ経済を支えるのは財政支出となる。
しかしこれも難しい問題を抱えようとしている。
通貨がドル高に向かいつつあることで、財政支出の拡大自体に困難はない。
デフレ、低金利はアメリカ政府に国債を自由に発行できる力を与えている。
でも世界が不景気に陥り、ドル高の状況で政府支出を維持することは、アメリカの輸入金額を拡大させる。
なんとしてでもアメリカ市場を確保しようと、世界各国はアメリカに輸出攻勢をかけるだろうし、不況やドル高は各国の輸出競争力を拡大させる。
そうなると、アメリカは輸入がどんどん増えるのに、輸出は増えない。
雇用は全然拡大しなくなる。
今でも失業率は8%を超えているのに、減るどころか、逆に拡大する危険性がある。
財政赤字は増えているのに、失業率は下がらない。
これはつらい。

保護貿易主義の誘惑は強まっていく。
保守派にとって、財政赤字を維持し続けることは、アメリカの犠牲によって世界を支える行為と移ることだろう。
いや実際そうなのだ。
将来ドルが逆流したときのことを考えると、財政赤字を維持し続けることはアメリカにとって自傷行為に近い。

結局アメリカの行動が大恐慌になるかどうかを決める気がする。
保護貿易に走れば大恐慌だ。
保護貿易はせず、財政赤字の縮小も急がなければ、世界の経済活動は維持できると思う。
私の予想はこれなのだが、本当にどうなるかは難しい。

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