異をとなえん |

地域通貨に未来はあるか - ギリシャのユーロ圏離脱は不可能だ(その14)

2012.06.16 Sat

20:38:26

明日6月17日日曜日、ギリシャで再度総選挙が行われる。
世界中がユーロの行く末、ひいては世界経済の行く末がどうなるかを心配して待っている。
ギリシャの株式市場は値上がりしていて、新民主主義党が勝つ予測の現れらしい。
反緊縮政策を訴える急進左派連合が勝つとEUからの支援が停止して、デフォルトが必死となる。
それは連鎖的に他の国に波及して、世界を不況に叩き込むかもしれない。
そうでない世論調査が出たからこそ、株式市場が上がっているというわけだ。

そんな中でワールドビジネスサテライトでちょっと面白い特集があった。
ギリシャの地域通貨テムの紹介だ。

人とマネー ギリシャ離れ加速

引用開始

ユーロを一切使わず、物やサービスを「テム」でやりとりする取引形態
引用終了

ほんの少ししかなく番組を見ただけではわかりにくいのだが、下記の記事ではもう少しわかりやすいか。

危機下のギリシャの連帯経済−地域通貨とバーター取引

要はユーロが手に入りにくくなっているので、地域通貨を作ってそれを流通させようということだろう。
狭い限られた範囲だけで流通させることで、困っている人を互いに支えようとしているわけだ。
発想はわからないでもないが、地域通貨をユーロの替わりに使うことができるのだろうか。

地域通貨の第一の問題は通貨の価値を高く設定し過ぎることだろう。
番組の中では1ユーロ1テムであり、個人が発行できるものとして扱っていた。
そうすると、使う人は前の自分の賃金を基準にして、発行することだろう。
月給2000ユーロだったら、それぐらいは返せると思って発行するわけだ。
しかし地域通貨はそれではなかなかうまくいかない。

地域通貨は普通に取引していると地域の金がほとんど別の地域に吸い上げられて貧乏になってしまうので、強制的に自分の地域で資金を流通させようという発想だ。
実際にその地域内だけで経済活動ができるならば、地域通貨でも問題はない。
けれども、外との貿易がどうしても必要になってしまう。
そして通貨が出て行く。
それをなんとかするには外からの品物は高くして、内の品物は安くするしかない。
ユーロの価値は内も外も一定だから外からの品物を高くすることはできない。
そうすると内の品物をさらに安くするしかない。
それには賃金を下げる必要がある。
だから、地域通貨を発行する人は自分の賃金を基準にして考えると、とにかく自分の賃金を大幅に下げ収入が減ることを前提にしていくしかない。
それをしなければ結局は発行金額が大きくなりすぎて、最終的な帳尻が合わなくなり破綻してしまう。
アルゼンチンの地域通貨が一時は盛んだったのに破綻したのは、それが理由だろう。

第二の問題は不況だ。
不況というのは景気が悪いことであり、投資してもなかなか稼げなくなるということだ。
通貨の発行は本質的に通貨を受け取った人が発行者に対して金を貸したのと同じだ。
だから通貨の発行者には高い信用がいる。
不況だと新規の発行者に対する信用は低くなるので、受け取る人はなかなか増えていかない。
どうしても普及しづらくなる。
これらの問題を考えると結局地域通貨は役に立たない。

地域通貨のようなイメージでドラクマを復活させる考えもうまくいかない。
ドラクマをどうしても復活させたいのならば、帳尻を合わせなくてはいけない。
政府の支出をドラクマで支払いたいのならば、税収をドラクマで受け取る必要がある。
出て行く金額と入ってくる金額が一致しなければうまく運営できないのだ。
年金と公務員の賃金の総額が税金による収入を下回らなければ、ドラクマは駄々漏れになり価値は下がり信用を得られなくなる。
でも収支が一致するということは結局財政赤字をなくすことだ。
つまり緊縮政策は必須となる。
そして出入りが合ってしまうならば、わざわざドラクマを復活させる必要はなくなる。
ユーロをそのまま使っても問題はない。

結局地域通貨というのは自分の給料が下がることを、なんとかごまかしたくてやっている話だ。
独自通貨を作ると、給料が下がっていることを意識しなくてすむ。
でも適正水準まで給料が下がることを受け入れなければ、経済はうまくいかない。
ユーロはギリシャ国民の意識に浸透している。
その価値は変わらないのだから、ユーロレベルでの賃金の下落を国民が認めなければいけない。
新民主主義党が選挙で勝つとしたら、それはギリシャ国民が自分たちの所得が減少しなければならないこと、減少するのを認めたことに他ならないだろう。
それは経済復活への第一歩だ。

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コメント

293 モーニングサテライトのtwitterを今日見ました

独自通貨テムを検索してやってきました。

 わかりやすくてよかったです。
 「ギリシア情勢に思う」という記事を読み、「貧すれば鈍す」という言葉を思い浮かべました。


 今の日本も生活するだけで手一杯でより良くするという考えに頭がまわらなくなってしまったような気がします。

 
 

294 Re: モーニングサテライトのtwitterを今日見ました

白井さんコメントありがとうございます。

「わかりやすい」と言われるとはげみになります。

「貧すれば鈍す」とはよく言われますが、実際の人間は貧して始めてどうにかしようと考えるような気がします。
尻に火がついて走り出すのが普通の人間です。
地域通貨に対して私は批判的ですが、実際に実行すればそれなりに違うのかもしれません。
共同体的なものを再構築すれば、少なくとも生きやすくはなるでしょう。
評論家のどうこうよりも、あがき続ける実際の生活者の行動こそが世界を変えるはずです。

「今の日本も生活するだけで手一杯でより良くするという考えに頭がまわらなくなってしまっ」ているかもしれませんが、その手一杯の中にしか日本を良くする道はないと考えています。

後記事にしたブログについてのリンクがありませんでしたが、これはコメントに対してリンクを禁止していたからでしょうか。
わけのわからないコメントがたくさんきていたときに禁止していたのですが、パスワード方式に変化したのだからリンクの禁止をやめてみました。
これでurlを記述できるようになったはずです。
一応テストをかねてブログの記事のurlを記述してみました。

ギリシアの人々はいま、どんな生活をしているのか
http://ameblo.jp/kenjinworld/entry-11352656078.html

それでは。

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