異をとなえん |

続:ギリシャ危機の本質

2012.06.14 Thu

20:32:27

「ギリシャ危機の本質」の記事では経常収支を原因とした国家の問題としてギリシャ危機を扱った。
もちろんそれはそうなんだが、また別の側面から見てみたい。

ギリシャというのは、つまり宮崎シーガイアなのだ。
宮崎シーガイアというのはバブルによって作られた観光施設だが、2000億円で作られて、毎年200億ずつ赤字を出して倒産した。
キャッシュフローが赤字のどうしようもない不良債権だったわけだ。

バブル崩壊によって資産価格の崩落が起こった場合には、キャッシュフローが根本的に変わってしまう。
そもそも資産価格というものは将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いたものだ。
未来の予測が変わったからこそ現在の資産価格が変化したのだ。

ロビンソンクルーソーの話で説明したように、未来の予測が変化したら、現在の行動を変更する必要が出てくる。
将来の収入が減少したならば、将来の支出を減らさなくてはいけない。
そしてつりあいを取る必要がある。
宮崎シーガイアはバブルの過大な消費を前提にして商売を計画し、バブルが破裂したことで全然採算が合わなくなった。
その場合精算をして強制的に収支を合わすわけだ。
破産法を申請して、借金をチャラにして、利息の支払いをなくす。
それでなんとか収支が均衡すれば、商売を続けていけるわけだ。

ギリシャも同じだ。
バブルに浮かされて、過大な資金がギリシャに投資された。
ところがその酔いから醒めてみると、ギリシャは返せるわけがないことに貸し手は気づいた。
そこで利子の分だけ供給して、形だけ収支を均衡させようとしているのが今の状況なわけだ。
はっきりと精算しないのは、連鎖反応を起こす危険性があるからだ。

バブル崩壊後の日本で銀行の不良債権処理を急がす声は高かったがなかなか進まなかった。
一つの要因は連鎖反応を引き起こす可能性があることだ。
資産価格の崩落によって損失を出したところが倒産すれば、そこに資金を出したところが連鎖的に倒産する可能性がある。
それを防ぐためには処分するところと影響を受ける所を分別して、助ける所には当面の資金繰りができるようにしておかなければならない。
そのための資金が工面できない場合には不良債権処理を延ばして、資金を蓄積する必要がある。
日本の不良債権処理の引き伸ばしが続いたのは、その側面が大きい。

日本のバブル崩壊では地価の崩落によって、多くの企業が危機に陥った。
きちんと時価評価していれば債務超過になっている企業の方が多かったのではないか。
それを不良債権処理したらみんな倒産してしまう。
けれどもキャッシュフローとしては、なんとかなっている企業が多かった。
だから資金を蓄積する時間を稼げば、経済活動は続けていくことができた。
銀行は不動産会社に利息分だけ融資して、形だけでも生かしておいた。

1998年には山一證券や北海道拓殖銀行の倒産など、キャッシュフローが行き詰った企業が倒れていった。
それでもまだ完全な不良債権処理は実施できなかった。
連鎖して倒れる企業が多かったからだろう。
日本の不良債権処理が実施されたのは、2002年ぐらいだ。
どうしても収支が均衡できないダメな企業は淘汰され、処分された。

最終的な不良債権処理は未来の予測を納得して、資産価格を完全に調整することだ。
しかし、その前に現在のキャッシュフローの黒字化を図る必要がある。
ギリシャの国民は納得しつつあり、所得が大幅に減って、支出が減少している。

【書評】ドラクマはギリシャの既成事実、政府部門だけが例外

引用開始

マノロプロス氏は「ギリシャは既に部分的に旧通貨ドラクマに戻りつつある」と指摘。民間セクターでは「通貨価値の切り下げがある程度実現している。賃金が35%前後下がり、税金が上がった結果、可処分所得は半分以下に減った。家賃も35−40%下落した」と分析する。

ドロメウス・キャピタル・グループで新興市場投資を手掛けるマノロプロス氏は、ギリシャがユーロ圏に加わるのはどだい無理な話だったと主張する。同氏は電話取材で、「民間セクターは既にドラクマの領域で動いているが、政府部門はそうではない。総支出は増え続けている。賃金と年金の勘定がなお増加しているとすれば、どこが緊縮策なのだろう」と批判した。
引用終了

しかし、まだ足りない。
公務員が多いから民間の努力だけでは帳尻が合わない。
もしかしたら、借金をゼロにするだけではすまなくて、商売自体、つまりギリシャという国をやめた方がいいのかもしれない。
具体的には多数のギリシャ国民が国を出て出稼ぎにいくということだ。
そこまでいくかどうかはわからないけれど、キャッシュフローだけでも赤字をなくさなければ、他のところから援助はありえない。
需要が縮小している時代に赤字を垂れ流すところの面倒を見ることはできないからだ。

ギリシャの最終的な不良債権処理の終了はまだ遠い。
連鎖的な倒産が怖くて、借金をちゃらにすることもできない。
赤字分を他のEU諸国は援助しているが、それもつらくなっている。
ギリシャに援助を続けるのは、不動産会社に借金の利息分だけでなく、社員の給料も援助するようなものだ。
とにかく、キャッシュフローの黒字化だけは実行する必要がある。

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