異をとなえん |

ギリシャ危機の本質

2012.06.12 Tue

20:01:31

ギリシャ、スペインでまた金融危機の再来を懸念する声が強くなっている。
この危機の本質は何であろうか。

全世界的な資産価格の崩壊によって世界の総需要が減少した。
需要を下支えするために各国政府は財政支出を拡大し、消失した需要をおぎなうことでなんとか供給を維持して、経済活動を保った。
しかし金融危機も5年目に突入し、財政危機が問題化しつつある。
経常収支の黒字国では、供給が需要を上回っているので、消失した需要分を政府が支出しても供給すること自体に問題はない。
あまった余剰労働力を活用するのだから、経済が動くといっていい。

それに対して、経常赤字国では余剰労働力がない。
資産価格の崩落によって金がなくなったため、需要がなくなり輸入ができなくなる。
政府支出の増加を図ろうにも、国内に貯蓄がないので国債の発行で資金を吸収できない。
失業は大量に発生しているのだから、この余剰労働力を活用できないのかと思う。
国内の失業者をやりくりしても、輸入代金はまかなえない。
輸出を増やすことが絶対必要なのだが、それは簡単にはできないので手詰まりになっている。

全世界的な資産価格の崩落が経済危機の本質だ。
国のような単位で、輸出入が均衡しているならば発生した失業は国が公共事業や富の再分配で均衡させることが可能になる。
もちろん、新たな公共事業では輸入を増やすから、その分輸出黒字を持っている国だけが可能な事業だ。
それに対して、赤字国では公共事業を行うことができず、最終的には賃金の低下による輸出の拡大を持って対応しなければならない。
しかし、赤字国が輸入を減らし輸出を増やすことで、経済の回復を図ろうとするのは、黒字国の輸出を減らし輸入を増やそうとするのと同義だ。
不況が伝染していくことになる。
第二次世界大戦前の大恐慌では、世界各国が輸出を増やし輸入を減らそうとして、近隣窮乏化政策に走りブロック経済化を招いた。

今のギリシャは近隣窮乏化政策はしたくない。
金を貸してくれれば、借りたい。
でも返す気がない国に貸す国はない。
だから、貸すのではなくて、くれと言い出している。
ケインズの財政政策の本質は金を持っている者から、持っていない者への援助だ。
国という単位の中で実行するならば、その本質を国債という形の全体への債務に変換することでごまかせる。
けれども、国という単位より大きな形で不均衡が発生しているならば、そのごまかしはきかない。
EUは国なのか、そうでないのかがはっきりしないこともあって、矛盾が強くでている。

各国が近隣窮乏化政策を取ると均衡状態に近づいていく。
そうすると、政府支出で雇用を守ろうとしている国にとって、輸入は国民の援助が外部に盗られていくことに近い。
必然的に輸入を禁止したくなり、ブロック経済を目指す。
ただ戦前と違い、一国内部で経済活動を完結している国は少なくなった。
どうしても必要な輸入のために貿易活動は続けざるを得ない。
そのため戦前のような、貿易がなくなってGDPが急減するような最悪の事態は免れるだろう。

ケインズ政策は富める者から貧しき者への援助が本質だと言った。
そして、資産価格が下げ止まらない限り、その援助を続けるしか経済活動を維持する方法がない。
けれども、富める者は援助するのにだんだんと疲れてくる。
それが今回のギリシャ危機だ。
それは当然広がっていき、援助がなくてもなんとかなるように経済を縮小させていく。

日本のバブル崩壊は1990年にはじまった。
しかし、財政支出の拡大によってGDPは成長を続けた。
はっきりとマイナス成長になったのは1998年のころだ。
2008年が今回の不況の発端だが、世界経済全体で見れば新興国中心に成長を続けている。
その財政支出による成長に疲れが見え始めたのが今だ。
日本と同じタイムスケールで動くとすれば世界経済全体の成長が止まるのは、2016年ごろかもしれない。

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