異をとなえん |

緊縮政策を緩和しても救いにはならない - ギリシャのユーロ圏離脱は不可能だ(その7)

2012.05.18 Fri

20:38:29

ギリシャねたはなかなかつきない。
今回はギリシャの努力を認めて緊縮政策を緩和しろという意見に反論したみた。

【コラム】認められていいギリシャの緊縮努力−残存債務が問題

ギリシャは財政赤字を2年間で8.6%も削減した。
引用開始

政府は過去2年間でプライマリー財政赤字、つまり利払い分を除いた財政赤字をGDPの10.6%(2009年)から2.2%(11年)に圧縮した
引用終了
その努力を認め、EUはギリシャとの合意を絶対視するのではなく、ギリシャの残存債務をさらに削減すべきという意見だ。

日本の財政赤字が全然減らない状況と比較すると、ギリシャは極めて努力しているように見える。
実際努力しているとは思うのだが、たぶんこれでは足らない。

ギリシャの財政赤字が大きく減っているのは、財政支出を大幅に減らしているからだ。
年金と公務員の賃金の削減の影響が大きいのだろう。
でも財政目標は達成していない。
収入が減っているからだ。
GDPが減少すれば税収も減る。
政府支出を減らせばGDPも減り、GDPが減れば政府収入も減るというループにはまっている。

ではここで我慢していれば、GDPが成長して財政赤字がなくなることはあるだろうか。
無理だ。
理由はGDPはもっと落ち込むからだ。

ギリシャの産業構造は2007年時点で製造業が10.5%、建設業が7.3%、流通・観光・交通等が37.4%、金融業・不動産・ビジネス関連サービス業が17.3%、公的管理・その他が21.1%となっている。

参照:スペイン・ギリシャの経済構造の特徴について

製造業の比率が極めて低く、輸出する力が弱い。
そして経常収支の赤字が10%以上という経済だ。
ユーロ圏に加入する前は赤字続きだったとはいえ、GDP比の3%ぐらいですんでいた。
それがユーロ圏に加入することで赤字が急増し10%を超えてきた。

参照:ギリシャの国際収支の推移

ギリシャの赤字が急増したのは、国債の金利が下がったことで国債の発行を増やし、それが消費に回ったからだ。
ギリシャ政府が借金をし、その金が各国から物資を輸入する代金として出て行く。
輸入した商品を売ることで原価と小売の差としてのGDPが生まれる。
原価を50%だとすれば輸入した商品を小売したときに輸入商品と同等分の付加価値が生じたことになるわけだ。
その他にも内需産業や公務員に金が回ることで、GDPは増幅しギリシャという国のGDPができている。
もちろん、これは他の国でも普通のことなのだが、輸出が何もなければギリシャとしての付加価値は何かという話になる。

極言すればギリシャは国が借金をし、それを国民が山分けをして暮らしていただけだ。
政府が外国から借金できなくなれば、国民は生活できずGDPは0に近づいてしまう。

2009年の財政赤字が10%を超えていることは、ギリシャ政府が支出をまだ減らしていないことを示している。
EUの監視の目が厳しくなって2010、2011年と減らし始めたのだろうが、国民はまだ消費をしている。
だから経常収支の赤字は10%近辺のままであり、GDP自身も大きく減っていない。

ギリシャの経済成長率の推移

消費には慣性がある。
またユーロに加入して経済が好調だったということでギリシャ国民はかなりの貯蓄をしているはずだ。
その貯蓄を吐き出しているから、消費は大きく減らず、GDPも大きく減ってはいない。
けれども、財政支出を大きく減らせば、他に収入のあてがほとんどない以上、消費は減るしかない。
つまりGDPはさらに大きく減るのだ。
税収はGDPと比例するから、財政赤字のGDP比は拡大し始める。
結局ギリシャの緊縮政策の努力は徒労に終わるかもしれない。

ギリシャはどうしたらいいのだろうか。
輸出が増大して経常収支の赤字が消すしかない。
そうならなければEU全体にとってギリシャは永久にお荷物ということになる。
輸出を増やすためには、賃金が大幅に低下させ外国から投資をしてもらえるようにするしかない。
それと輸出を伸ばすために害となる規制を撤廃することだ。

ではどのくらい賃金は下がるべきなのか。
ユーロ圏に入ってから生産性の上昇がほとんどないとしたら、賃金はそこまで下がるべきだろう。
1998年から2008年でGDPは大体倍になっているので、元に戻るとしたら賃金は半分に下がるしかない。

急激に下げるのはきついから、緊縮政策を緩めるという妥協もありえる。
しかし、それでは経済が反転する底が全然見えないだろう。
そしてEUとの合意はまだまだ甘い。
GDPの縮小を十分見込んでいなければ、財政収支がバランスするのはさらに先になる。
緊縮政策はさらに続くことを考えれば、ギリシャ嫌でも合意したことを守っていくしかない。

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