異をとなえん |

ユーロ相場はどうなるか - ギリシャのユーロ圏離脱は不可能だ(その5)

2012.05.16 Wed

20:23:38

ギリシャのユーロ圏離脱はないが、ギリシャ政府がユーロ圏離脱を言い出す可能性はある。
その場合、ユーロ相場はどうなるだろうか。

普通に考えれば当然ユーロ安のはずである。
けれどもユーロ高になると予想する人もいて、考えてしまった。

取り付け騒ぎが起こった ギリシャのユーロ脱退の噂で

本文の方は大部分同意できるのだが、最後の方で少し理解できなくなってくる。
前にも書いている通り、政治情勢の本命はギリシャ左派連合が勝利するけれども、緊縮政策回避だ。
ギリシャ左派連合はユーロ維持、緊縮政策破棄を主張しているが、この二つの政策は両立しない。
EUの各国はギリシャのわがままを認める可能性は少ない。
もっともフランスの選挙で非緊縮政策派が勝っていることもあるので、部分的な妥協が図れる可能性はある。
ドイツがEU各国の反感を抑えようと、援助を幾らか増やす可能性だ。
しかし、選挙情勢のことを考えるとメルケル首相もそんなに妥協はできない。
前の合意とほとんど変わらない条件であることは間違いないだろう。
前の条件の変更ではなくて、新しい取り決めを追加する形でだ。

でも大きな条件は前の交渉が相当な難交渉だった以上変更はできない。
緊縮政策は継続しかない。

だから、ギリシャ国民が支持する政党を翻意して、緊縮派の政党に投票する可能性は少ないけれど、非緊縮派が緊縮派に変われば全然問題はない。

さて一番わからない部分は次である。

引用開始

最後に、若しギリシャがユーロを脱退し、新ドラクマを採用した場合、たぶんユーロは大暴騰します。それは一瞬にしてドイツを大不況に陥れるでしょう。
引用終了

一時的にであれ、ギリシャがユーロ離脱を宣言すれば事実上ギリシャ企業のほとんどがEUの取引で破綻に追い込まれる。
ギリシャのユーロ建ての借金が大幅にこげつくのと同意のはずだ。
それは他の周辺国、アイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアへの不信感を強める。
そこへの資金は当然引き上げようと考えるのが普通のはずだ。
周辺国の国債を売る所も多くなる。
換金したユーロ資金をどうするか。

考え方は二つ。
ユーロ自身が信用できないから他の信用できる通貨、ドル、円、ポンド、スイスフランに換金する。
この場合ユーロを買った方はその資金の運用先をどうするかという問題が出てくる。
もう一つはユーロでもっとも信用できそうな資産、ドイツ国債に変換することだ。

実際ドイツ国債の価格は上昇し、周辺国の国債の価格は下落している。
ドイツ国債の需要はすさまじく、金利はマイナスに突入しているのだ。
とにかく安全な所に預けられるならば、その分の損を甘受する向きが多くなっている。

ユーロから逃げ出す資金が多くなればユーロ安になる。
裁定取引に使われているだろうドイツ国債の金利が下がっているということもユーロ安を導く。

それでは、この流れはギリシャがユーロを脱退し、新ドラクマを採用すると変わるのだろうか。
短期的にはデフォルトを嫌って、逃げ出す資金が多くなるとしか思えない。
それはユーロ安だ。
中期的にはギリシャが悲惨な状態になることでユーロ圏の脱退が不可能だと各国が確信し、その結果のユーロ安はなくなりそうだ。
もっとも緊縮財政を求められている各国の国債が安定するかは別問題だろう。

そういうわけで考えてみたけど、ユーロ高になる理屈がよく見えない。
EUが成長政策に切り替わる可能性もある。
ただ財政政策の発動は難しい。
実行するとしたらECBの金利の切り下げだろう。
これは緊縮政策によって経済圏が縮小している国の景気にはたいした影響があるとは思えない。
スペインやイタリアの株式市場が良くなるとは思えないという意味だ。
意味があるとしたらユーロ安によって景気がまあまあのドイツだ。
金利を下げればユーロ安の可能性は高まる。
ドイツは輸出も増えるし、利益も増える。
金利が安くなればそれらと相まって設備投資も増えることだろう。
ドイツ一国の景気が良くなることでユーロ圏全体の景気が良くなれば、ユーロ高の可能性はある。
でもそれはずっと長期の話だ。
ユーロ高は先になると思う。

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