異をとなえん |

なぜバブル崩壊後ケインズ政策は効かないのか?

2012.02.07 Tue

20:50:08

日本はバブル崩壊後、公共事業の支出計画を何度も発動して、経済成長を図ろうとした。
しかし、恐慌といった最悪の事態を防ぐことはできたが、名目GDPは成長しないままだった。
なぜ、公共事業の支出政策、つまりケインズ政策は名目GDPを成長させられなかったのだろうか。

日本はバブル崩壊後、何度も需要拡大のために公共事業支出を拡大した。
最大で年15兆円ぐらいになる。
金融危機前の話だ。
これはGDPの3%ぐらいだ。
財政赤字としてはGDPの6%ぐらいになった。
GDPの6%にも及ぶ景気刺激政策を取っているのだから、経済が復調を示してもおかしくはないはずだが、そうなっていない。
実質GDPはそれなりに成長しているが、名目GDPは成長しないままだった。

ケインズ政策を実行すれば、GDPをバブル崩壊前に戻すことは不可能ではない。
生産能力はもともとあるのだから、需要さえあれば元のGDPは出せる。
重要なのは、それ以上の成長が可能かだ。

前のGDPまで政府が需要を拡大すれば生産はついてくる。
しかし、それ以上の成長を目指そうとしても、需要は増えていかない。
企業は設備投資を抑え、労働者は失業したままだから消費が増えないからだ。
企業が生産の拡大に走らないのは、需要の継続的な拡大に自信が持てないからだ。
よって成長は止まることになる。

もっとも、これは堂々巡りだ。
企業は消費が増えないから、投資をせず、雇用を増やさない。
雇用が増えなければ賃金は上がりづらい。
消費者は労働者であり、賃金が増えなければ、消費も増えないだろう。
この堂々巡りは、新製品の発売によって、消費者が購入したいと思い、企業が爆発的に売れると信じて投資を拡大するまで続く。

政府による需要の創出をさらに拡大すれば、この堂々巡りを突破できないだろうか。
これは難しい。

たとえば、バブル崩壊前、100を生産し、100を消費していたとしよう。
バブル崩壊によって、100を生産しても、90しか消費しなくなった。
10はバブルによる資産効果によって生まれた消費というわけだ。
この場合、政府が何もしないと、90の生産しか必要なくなり、その分労働者が切られていく。
そうすると、デフレスパイラルが発生し、どこまで経済が縮小するかわからない状況になるわけだ。
ここで政府が10の分の需要を作りだすならば、需給は一致する。

それでは、政府が15の分の需要を作り出したらどうだろう。
問題になるのは、資金の捻出だ。
さっきの話を逆に見よう。
100作って90消費なら、労働者の側からみると、100賃金に貰って、その内90の分を消費に回したことになる。
資本の分け前も考えなくてはいけないけれど、ここでは簡略のため資本の分け前を0にしている。
だから、労働者は10の分を貯蓄に回している勘定だ。
資金市場には10の分の余剰が生じ、政府はその10を借りて、財政支出の赤字をまかなった。
ここで、政府が15の分を支出しようとしたら、どうなるかが論点のわけだった。
この場合、10しか貯蓄されていないのに、15借りようとすれば、金利は跳ね上がる。
消費に回っている分を貯蓄に回させようとするのだから、余程金利を高くしなければ、消費者はついてこない。
金利が上昇すれば、政府がやみくもに財政支出を拡大しようとしていることに疑義が生じる。
利子の支払いが大きくなれば、財政赤字に対して不寛容になり、支出を止めようとするだろう。

商品・サービス市場の面からもみてみよう。
100しか生産物が出ていないのに、105の需要があれば、物価は上昇する。
消費者にとっても、政府にとっても、うれしくない事態だ。
消費者は消費を抑える。
つまり生産の過大がとまる。

この二つを考え合わせると、ケインズ政策ではバブル崩壊前の生産を維持するのがせいいっぱいで、成長路線への変換はできない。
日本経済がバブル崩壊後のデフレ局面において、名目GDPがいつまでも増えないでずっとマイナス成長なのもこれが理由だ。

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