異をとなえん |

ユーロ崩壊の心配をする前にデフォルトの心配をしろ

2012.01.30 Mon

20:00:55

ユーロ崩壊の話について書きたい。
前にも書いている気もするが、なんか同じことでも繰り返して言いたくてしかたがない。
そこで重複を気にせず書く。
でも、実際に書いて見直してみたら、なんかほとんど同じことしか書いてない。
ちょっとがっかりだけど、文章自体は少しこなれたのではないかと思う。

Finantial Timesが、アメリカの銀行はデフォルトを想定した訓練をしたように、その教訓に習って、欧州も準備をしておけ、という記事を書いている。
「わけわかんないよ」というか、いったいどうせよと言いたいのだろうか。
具体的には、ギリシャのユーロ離脱を想定しておけ、と言うのだろうが、こんなもんどう対応できるかと思うのだ。
もちろん、ショックが発生したとき現金を引き出される準備はしておかなくてはならない。
そして、各国の銀行もそれだけはしていると思う。
中央銀行と話をつけてあれば、通貨は供給されるだろう。
それ以外になにができるのか。

Finantial TimesやEconomistでは、ユーロ崩壊の可能性を取り沙汰している。
しかし、根本的にユーロ崩壊のイメージがわかない。
ギリシャがデフォルトしたらユーロ離脱しなくてはいけない法律でもあるのだろうか。
私の理解している限りでは、ユーロからの離脱は想定していないので、そもそも離脱する方法がわからないと聞いている。
だからユーロ離脱しないと考えた方が自然ではないか。

ギリシャがユーロ離脱を決めたとしよう。
何が起こるか。
よくわからんけど、ユーロの国内使用を止めて、強制的にドラクマを使わせるとする。
瞬間的に思うのは、銀行の預金封鎖とユーロの使用禁止令だ。

まず、こんなことがギリシャの法律で簡単にできるのか。
銀行の預金封鎖というのは、たぶん銀行に命令すればなんとかなるように感じる。
しかし、ユーロの使用を禁止などできるのだろうか。
どうみても法律が必要だと思うのだが、ギリシャ議会が簡単に納得するのか。
実務的にも問題点は山積だ。
当たり前だけど現時点では、ドラクマの通貨などないのだ。
この事前準備が世界にもれずにできるのか。
紙幣自体は事前に秘密裏に準備できたとしておこう。
でも、この紙幣をどうやって国民に渡すのだ。

銀行から預金を降ろすときに、自動的にドラクマに変換する。
これは一理ありそうだが、本当に可能なのか。
とりあえず1ユーロは1ドラクマと設定して、預金を降ろそうとするとき自動にドラクマを返すという手法はある。
預金者は預金を降ろすとユーロ紙幣ではなく、ドラクマ紙幣をもらうわけだ。

でも、この紙幣は使えるのか。
私が小売店の店主だったら絶対に拒否する。
政府がなんと言おうと、ユーロ通貨以外認めない。
何の裏打ちもないドラクマなど、いったい誰が認めるというのだ。

ギリシャは産業がほとんどないと聞く。
つまり生活必需品も輸入しているのだろう。
輸入業者は当然ユーロで支払っているはずだ。
ドラクマなど渡されても、それで輸入できるはずがない。
商品自体を借金して購入し、売った代金で借金を返す形で営業しているならば、ドラクマで売るわけがない。
そのくらいだったら、ギリシャから他の所へ持っていって売ったほうがまだましだ。

信用のおけない通貨を信用のおける通貨に変換するわけではない。
信用のおける通貨を信用のおけない通貨に変換することを、簡単に納得できるわけがない。
ジンバブエではハイパーインフレが発生して、誰も使いたくない通貨だったから、ドルが流通したら喜んでそれを認めただろう。
そうじゃないのだ。

かって通貨の信用できない国で闇ドルが自然に流通したように、違法であっても闇ユーロが流通するに決まってる。
しかも、いきなり違法になったとしても、ユーロ自体はギリシャ国内に山ほどある。
だから普通にユーロが流通するしかない。

それでも銀行がむりやりユーロをドラクマに変換したらどうするか。
銀行員を締め上げてでも、ユーロに変換しろと文句を言うしかない。
いまさら言ってもせんないことだろうけど。

ただ、現在の状況ではたいていの市民はそのことを理解していると思う。
ギリシャの銀行に預金などしていないだろう。
でもしているのか。
ちょっと心配だな。
商売のために最低限の預金が必要な人はいるだろうけど、とにかくこまめに降ろしているとは思う。
ギリシャの銀行はギリシャのユーロ離脱が本当に起こるならば、全て潰れる可能性がある。
だから、少くともギリシャ以外のユーロの銀行に預金しているのではないだろうか。
そうすれば、ギリシャ政府が強制的にドラクマで支払うよう命令したとしても、ギリシャ以外の地ではユーロで降ろせる可能性がある。
それに期待するしかないかもしれない。
ギリシャ国民もアホではないだろうから、銀行への預金は少なくなっていることだろう。

しかし、預金システムが正常に動かなくなれば経済活動は麻痺してしまう。
大きなお金の動きは銀行を通じて振り込んだりすることが普通だ。
それができない。
つまり、物は全然売れないし、買えない。
結局、経済が崩壊する、それしかありえない。

前に行なわれたユーロの変換は違ったはずだ。
事前にユーロの変換レートは決定され、各国通貨とユーロの交換は保障されていた。
いや、ユーロから各国通貨に戻すことはできないのかな。
ただユーロの信頼性は保障されていたと言えるし、各国通貨は使えなくなるのがはっきりしていた。
だから自然に交換されていった。
もっとも、その前に交換準備を何年にもかけて実行していたはずだ。
各国通貨とユーロとの交換レートを事前に決めて、何年にもわたって固定していた。
それらの努力が実を結んで、ユーロへの統合はスムーズにいったわけだ。

ユーロからドラクマへの変換は、その逆だ。
事前準備を何もせずに、不意打ちでの交換になる。
こんなのうまくいくわけがない。

北朝鮮での旧ウォンから新ウォンへの変換も不意打ちだった。
インフレ抑止が目的だったらしいが、単に変換しても達成できるわけがない。
非合法というか、はっきりと説明できない大量の旧ウォンの所有者をあぶり出し、彼らから金をまき上げるのが目的だったわけだ。
実際に成功したかどうかはよくわからない。
必死になって貯めた金をいきなりまき上げられたら、怒らないわけがない。
反発が猛烈に吹き出したはず。
反発があまりにも強すぎたせいか、旧ウォンから新ウォンへの交換の制限もなし崩しにゆるくなっていったし、この制度を実行した人間は粛清されたと聞く。
トカゲの尻尾切りのようなものだ。

こんな風に考えてくると、ギリシャのユーロ離脱というのは経済活動崩壊と同義としか思えない。
強制的に実行しなければ話は別だが、強制的でなければ誰も従いはしないだろう。

それでは、根本的にギリシャ政府はなぜユーロ離脱をしなければいけないのだろうか。
一つの理由は、支払いができなくなったので、それをごまかすためだ。
でもドラクマで支払うというのは、本当のお札がないので子供銀行のお札で支払おうとするようなものだ。
実際に受け取られるわけがない。
だったら素直に「金がないので支払えません」と言ったほうがまだましなはずだ。
年金だったら「お金がないので10分の1だけ支払います」と言ったほうがいい。

あるいは、別通貨だったら為替レートが変化することで自然に競争力が回復するという話にすがるつもりなのかもしれない。
けれども、為替レートが変動することで自然に競争力が回復するというのは神話だ。
実際には賃金が下がっていることを、国民は気づきにくいというだけだ。
ギリシャの場合は産業がほとんどない。
ということは、為替レートが低下すれば商品の金額が上昇するということだ。
賃金は低下しなくとも、インフレによって自分の生活が苦しくなることはすぐにわかる。
だとしたら、為替レートの変動などという技を駆使しなくとも、単に賃金を下げればいいだけだ。
経済活動が根本的に停止する危険性を犯してまで、自国通貨を復活させる意味はない。

ギリシャ国民はEUの政策に対して反発していると聞く。
EUの言うことをそのまま実行していても、生活が苦しくなるだけだと。
しかし、EUの言うことを聞かなければ、うまくいくかと言うとそんなことはなかろう。
政府の支払いが全然回らなくて、すぐに潰れるだけだ。
今EUからの支援があるから、当面の資金繰りはついている。
かなり減ったとはいえ年金も出ている。
ユーロから離脱したら年金が一銭も出なくなるのが落ちだ。
日本から見たらギリシャ国民が文句を言っているのがおかしい。

当事者たるギリシャ国民にしてみれば、約束されていたはずの年金が大幅に減額されているとか、給与とかどんどん減額されて納得がいかないだろう。
でも金がないから仕方がない、というのはもう物理的必然なのだ。
納得しようが、しまいが、受け入れるしかない。

一番最初の話に戻るとギリシャのユーロ離脱を想定して、準備をしておけと、Economistは言っているわけだ。
でも具体的にどうすればいいのか。
ユーロ建ての債権がドラクマに変わらないように、契約に明記するとかいう話か。
ギリシャの法律が改正されたら契約に明記してあっても有効かどうか疑わしい。
結局は裁判ざたになる話だ。
EUとかの裁判所で勝てても実効性があるかは疑わしい。
それでも勝つのが重要かもしれないけど、それだったら特別にユーロ建てと明記しなくとも、普通にユーロ建てで商売していても勝てるだろう。

あるいはギリシャの債権は信用がおけないから、かけで売るなどはせず、現金払いにしろという話か。
これはやってない方がおかしい、当然実行しているだろう。
いまさらという話だ。

まとめると、非常時に備えろとぎょうぎょうしく書いてあっても、普通の商売人はそんなこと自然に対応している。
むしろ、ギリシャがデフォルトしたときのCDSを誰が支払うかの方がずっと心配だ。
欧州の銀行がCDSを英米から買っているとしたら、むしろ危機は英米で起こるはずだ。
英国の経済誌もユーロ崩壊の心配をするぐらいなら、ギリシャがデフォルトした場合のCDSの支払いの心配でもしていろ。

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441 最適通貨圏の意味がわからない

ギリシャが相変わらず、デフォルトするとかユーロ離脱するとかでごたごたしている。 前に書いた通り、私にはギリシャがデフォルトしたらユーロ離脱する、という理屈がわからない。 ギリシャがデフォルトしても、ユーロを離脱しない。 それで何がまずいのだろう。 つまり最適通貨圏の話がよくわからないのだな。 通貨を統一した国々は財政を統合する必要があるという話だ。 なぜそんなことをする必

453 続々:ギリシャのユーロ圏離脱は不可能だ

続:ギリシャのユーロ圏離脱は不可能だについてコメントをいただいたので、その回答です。 引用開始 経済危機にあって、独自通貨でダメなところもあれば韓国のように速やかに回復し、それどころか財務基盤を大幅に強化した国もありますね。 最近の例ではアイスランドは独自通貨のおかげで急回復です。 引用終了 経済危機が発生した時に回復しない国の方が少数派ではないかと思います。 たいて