異をとなえん |

二段階目の恐慌はあるか?

2012.01.28 Sat

20:28:59

「エコノミスト」2012年1月24日号を読んで、現在の恐慌状態について考えた。
大恐慌の場合は、1929年の暗黒の金曜日の株価暴落で不況に突入していった。
その後ある程度立ち直り小康状態になったが、オーストリアの銀行の破綻で崩れ、世界中が不況に突入していった。
つまり、二段階で恐慌が来たわけだ。

今回もサブプライムローンに端を発して、リーマン破綻により世界中が恐慌状態に突入した。
世界のほとんどの国がマイナス成長に陥るほどだったが、世界各国の金融財政面での下支えにより、なんとか立ち直ってきた。
GDPもリーマン危機の前の状態の戻ったぐらいだ。
けれども、ギリシャの財政危機によって、また先行きが不透明になっている。
大恐慌のときと同じく、また2段階目の不況に突入するかというのが、「エコノミスト」の問いであった。

私は突入するという答えを持っている。
バブル崩壊による景気停滞は簡単には戻れない。
バブルの崩壊の意味は資産価格の低下だが、資産価格が低下するというのは未来に入ってくる収入が減ってくることだ。
人間はバブルが崩壊しても、それを簡単に納得できない。
だからいつかそれが戻るのではないか期待して、今まで通りの生活を続けようとする。
たとえば、日本のバブル崩壊後銀行は不動産会社に対して融資を続行し、不良債権じゃないかのように見せかけた。
このまま続いていけば、当面は状況を糊塗することができる。
全員が全員そのままの形を続ければ、経済はそのままの形で動いていく。

けれども永久にそれを続けることはできない。
時間が経てば入ってくる収入が減っている以上、キャッシュフローが持たなくなる。
銀行もいつしが資金繰りが苦しくなり、最終的には実態を明らかにして、現状に対処せざるを得なくなる。
その結果が最終的な不良債権処理であり、銀行は大幅な損失を計上する。
誰かが損失をはっきりと負担せざるを得なくなるわけだ。
それがバブルの最終的な処理となる。

今回のアメリカによるバブルは世界全体に広がっていった。
経済は社会全体に広がっているものである以上、アメリカの資産増大はアメリカの消費拡大を生み、それはアメリカの輸入を拡大し、そして世界全体の生産増加につながっていった。
世界全体の生産増加はその投資金額を融資している金融機関に富を生みだしていく。
そうやって世界全体に富があふれっていった。

しかし、アメリカでは資産増加の根源となっていた不動産の価格上昇が逆回転していった。
アメリカのバブルこそが世界経済のバブルの根源であった以上、それは必然的に世界全体での連鎖的なバブル崩壊を促す。
けれども、それは一時的に食い止められた。
各国政府が減った需要を緊急におぎなったからだ。
バブルの崩壊の本質は未来への成長期待がなくなったことなので、現状自体を維持するのは政府が嘘の需要を生み出すことで、生産を維持することができ、一時的には経済を平穏に保てる。
ケインズ政策の効力といっていい。
世界全体が一つの政府であり、政府の生みだした嘘の需要を後世の世代全てで支払うことを納得できるなら、それも保てるだろう。
日本の場合のバブル崩壊はまさにそのような状況だった。

しかし、各国で政府が分かれている場合は違う。
各国の負債は各国ごとの国民が支払うしかない。
日本のように夕張の負債を国が面倒みるわけにはいかないのだ。
政府の生み出した負債は、国で一括にまとめられることで、誰が最終的に払うかわからなくなっている。
自分は負担からまぬがれるのではないかという期待が、借金を肥大化させるのだ。

EUの場合、そうはいかない。
ギリシャの負債の尻拭いをEUが全体として実行すれば、ドイツであることは明白になっている。
ドイツがギリシャに対して資金援助をする義務ないと思っている以上、ギリシャの負債は貸し手が負担するしかない。
現在の債務交渉ではデフォルトするかどうかもめているみたいだが、金額の50%とか80%の債務を帳消しにするという話がある以上、実質債務の棒引きなのだ。
金融危機で生じた資産価格の崩壊が、もっとも弱い輪の部分で砕けたことになる。

政府が嘘の需要をつくりだせれば、規模は維持できるけれど、それは国際収支が赤字にならない場合だけだ。
国際収支が赤字だと最終的に外国の借金がたまっていくから、いつかは借金とりが騒ぎだしてどうにもならなくなる。
ギリシャがまさにその例であり、その他にも経常収支の赤字が非常に大きい国は、資産価格が下落して払えなくなっている以上、経済規模を縮小して赤字を減らすしかない。

大恐慌のときは、国が需要を作りだすということをしなかった。
だから、不良債権処理の最終的な処分を長引かせられず、すぐ二段階目の不況が起きた。
今回は国が積極的に需要を作り出したので、時間を長引かすことができた。
けれども、国が単位でもいつかは資金繰りが行き詰まる。
つまり偽りの経済の回復は限界にきて、二段階目の不況が発生するということだ。

もう少し理論的に考えてみる。
資産の価格が最終的に引き下げられ、不良債権処理が終了すれば、資金が流れてこなくなる所は、それに見合って消費を減らすしかない。
つまり、資産価格の崩壊は経済が縮小すると同義なのだ。
逆に言うと経済の規模が前と同じなのに、資産価格が低下している状況はおかしい。
どこかで誰かが、資産価格が下落しているのに、前と同じように行動している。
それはいつか破綻する。

恐慌が二段階になるのは、資産価格の下落を簡単には納得できないからだ。
資産価格が戻るだろうと予測して、投資や消費が変わらなければ経済は表面的に元に戻る。
しかし、資産価格が戻らなければ、いつかは資金繰りが悪化して、破綻せざるを得ない。
それが二段階目の不況として現れるわけだ。

最初のショックの後一時的に経済が回復するのは、資産価格の下落を一時的なものと誰もが考えるからだ。
大きく値を下げたことによって、値頃感から買いが入り、資産価格はリバウンドする。
これによって、構造的な不況を循環的な不況と勘違いすることによって、経済は回復する。
しかし、資産価格が戻らなければ、結局は経済規模の縮小が必要であり、二段階目の不況が必然となる。

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