異をとなえん |

ボンクラーズ米長戦感想

2012.01.26 Thu

20:06:09

なんかえらく遅れてしまったが、ボンクラーズ米長戦の感想を書いておく。
1月14日ボンクラーズ米長戦の本戦があり、私の予想通りボンクラーズが勝った。

米長氏の初手6二玉には驚いた。
プレマッチの時失敗していたこともあるし、負けた後初手は飛車先の歩を突くか、角道を開けるかのどちらかと言っていたので、覆してくるとは予想外だった。
ボンクラーズとの自宅での対局が進むにつれて、力競べでは勝てないとあきらめ、抑え込みから入玉を目指すしか勝機がないと判断したのだろう。
将棋自体は序盤抑え込みが成功したかに見えたが、一瞬の隙をつかれてボンクラーズの完勝となった。
玉飛接近の悪形である以上、抑え込みができなければ無惨に敗れるのもいたしかたない。
人間同士の争いでは少し悪くなっても粘っていればチャンスがある。
しかし、ボンクラーズの力を信用し少し悪くなっただけで逆転できないと判断すれば、粘れる形にしても意味がない。
とにかく、コンピューターの読みの範囲を越えること、それを重視したのだろう。
勝つための唯一の可能性だったかもしれない。

清水あから戦とは対照的とも言える。
清水さんは普通に戦っては勝ち目がない相手に対して、自分の戦いをするしかないと覚悟を決め、自分らしく指してそのまま負けた。
自分の力を100%出せば負けても悔いはないという考え方は日本人らしく感じるけれど、勝機がほとんどないというのも事実である。
自分の力は出せないけれども、相手の力をより大きくそいだ方がチャンスの可能性は高いというのは、勝負にこだわった指し方であり、米長氏の勝負根性を感じる。

将棋自体はボンクラーズが戦機をつかめず、飛車が右往左往していた。
困っていたかにも見えたが、実際のところはどうだったのか。
何もしなくとも、相手は手詰まりになるのを予測しての待ち手順であったとすれば凄い。
水平線効果で無意味な手を繰り返しているのだとすれば、価値は半減といったところだろうか。
米長氏の方からすれば、どこかで千日手を目指すしかなかったように感じる。
具体的な手はよくわからないが、4二金と寄った手がどうだったのだろうか。
あそこで7二玉と戻るのはダメだったのだろうか。
飛車の効きが玉に直射するから悪いのかもしれないけど、それはボンクラーズが最終的にはなんとかなると判断して、一人千日手をしていた戦術の有効性を示すものだろう。

ボンクラーズ米長戦は、まんが「あしたのジョー」の矢吹力石戦に似ていた。
アッパーによる大振りで一発KOを目指す力石がボンクラーズで、威力はたいしたことなくてもジャブ主体に少しずつ相手にダメージを与える戦略を取る矢吹が米長だ。
矢吹は相手をかわし続けることで判定では有利ではあっても、一発強力なパンチが当れば一瞬の内に勝負がついてしまう。
米長氏の作戦も同じであって、戦いを避けているうちはまあまあ戦えたとしても、駒がぶつかり会えば勝ち目がない。
そういう勝負だった。

後、勝ちになった後のボンクラーズの切れ味が凄かった。
解説の渡辺竜王と読み筋が完全に一致していて、人間の最高レベルとコンピューターの最高レベルとでは終盤の勝ちが見えた局面での指し方が両方ともわかっているという点で興味深い。
昔コンピューターの指し手は人間の感覚と異っていた。
それが一致するようになったのは、両者が最高レベルにある証拠なのだと思う。
また、渡辺竜王の力がコンピューターと五分の証拠かもしれない。

今後のいつかあるであろうコンピューターと渡辺竜王の戦いが楽しみである。
私の予想では、渡辺竜王は後手番では入玉含みで千日手を狙い、相手が無理攻めをしてきたらそこをカウンターで叩く。
先手番に変わったら定跡をよく研究しておいて、先手有利な定跡を指して僅差の優勢を維持して最終的な勝利を目指す。
人間相手と違うのは自分が少し有利で納得するのではなくて、最終的な詰みを発見するぐらいまで煮詰めておくことだろう。

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442 クローズアップ現代「将棋コンピューター こうして元名人に勝利する」感想

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