異をとなえん |

「通貨燃ゆ」感想

2011.10.29 Sat

21:08:00

谷口氏の「通貨燃ゆ」を読んだ。

中身自体は下記のネット上にあり読んでいたのだが、紙で読み直してみると勘違いしていた部分もあって、別の感想を覚えた。

BP's Eye - 円・元・ドルの同時代史

勘違いしていたのは、基軸通貨がドルである制度的根拠が既になくなっていると谷口氏が主張していたと思ったけれど、どうも別の人らしいということだ。
本を読み直してみると、ドルを基軸通貨たらしめているものは第7回〜スーザン・ストレンジの新しさに述べてあるような構造的権力という主張らしい。
構造的権力は必ずしも制度と結びついているのではなく、慣習みたいなものも含めているようだから、必ずしも矛盾しているわけではないのだろうけれど、ちょっとイメージと違った。

構造的権力、制度的枠組みを私はどうも軽視しがちである。
自由な市場の中で自然に形成された、デフォルトの標準の方を重視してしまう。
もっとも制度も慣習も密接に結びついているのだから、どちらも軽視してはいけないことは明白である。
そういう意味で基軸通貨の制度的意味を重視している、この本が印象に残る。

とはいっても、制度うんぬんではなく、基軸通貨というシステムは基軸通貨国が富を持っているのでなければ成立しえないのは明らかだ。
イギリスが基軸通貨国を降りざるをえなくなった最大の理由は、制度よりもアメリカに借金せざるを得ない状況に追いこまれたからである。
下記に引用するように、第二次大戦の戦費をまかなうために、膨大な借金をせざるを得ず、結果どうしてもアメリカからドルを借りるしかなかったからだ。

第27回〜熾烈だった米英貿易戦争

引用開始

そこで基金は英国とインドの間に介入し、インドからポンド建て・英国向け債権を買い上げ、代価をドルで支払う。英国はインドに対する債務(短期)から解放され、代わりに、基金向け債務(長期)を負うことになる。

このように見た場合、関係者は「三方一両得」であるかのようだ。ケインズもそう思って喜んだらしい*21 。ところが既に気づかれたとおり、この仕組みにはポンドの膨大な流通量をそっくりドルに入れ替えてしまうマジックが隠されていた。
引用終了

谷口氏の書き方では外交交渉によってイギリスがアメリカに敗北、あるいは騙されたという印象を受ける。
けれども、借金をせざるを得ない状況こそ、イギリスがアメリカに基軸通貨国を譲らざるを得なくなった決定的理由だ。
とにかくイギリスは借金を返さなければいけないのだから、どこかから借りるしかない。
金本位制に復帰することを考えていた以上、ポンドを刷って債務を返済することなど論外だし、実際にそんなことを実行したらインフレによって、イギリス経済は致命的打撃を受ける可能性が強い。
そんなわけで、イギリスが基軸通貨国を譲ったのは外交交渉というよりも、資金の問題だったはずだ。

基軸通貨の決定は制度的枠組みよりも、資金を供給できるかどうかに依存するというのが私の主張だ。
その主張に対する反論として、意味がある本だった。

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