異をとなえん |

なぜ中国のバブル崩壊は今なのか?

2011.09.20 Tue

21:29:11

中国のバブル崩壊論は無数に出ている。
狼少年のごとく繰り返されているので、今度こそバブル崩壊と言っても信用するのは難しい。
今度が本物のバブル崩壊だという証拠はなんだろうか。

中国の高度成長は主として低賃金に誘われた外資系輸出企業によって担われた。
そして、どうもそれ以外の要素は重要でなかったようだ。

増田悦佐氏の「中国、インドなしでもびくともしない日本経済」

P137によると、中国国有企業の雇っている労働者の数は1979年から1999まで、70%台後半で全然変わっていない。
それなのに、工業生産額に占める国有企業の割合は1979年の80%から1999年の23〜4%と激減している。
つまり外資系輸出企業の生産性の高さに全然追いつけていない。
また、P140によると、2010年の生産者物価指数と消費者物価指数の上昇率では、生産者物価指数の上昇率の方が高い。
日本の物価指数では企業物価指数の方が消費者物価指数の伸びより常に低いことと対照的である。
日本では、生産性が常に向上しているので他の条件が変わらなければ、企業物価指数は下がっていく。
人件費の上昇が激しければ、物価指数は上がるけれども、生産性が伸びにくい小売の消費者物価指数より高いことはない。
それに対して、中国ではたった一年だけど、国内工業の生産性が全然上昇していないので、原料費や人件費をそのまま価格に反映させていることを示している。
消費者物価指数が低いのは、工場労働者の方の賃金上昇率が高いのだろう。

結論として、中国の高度成長の源泉は極めて低い生産性だった労働者が外資系輸出企業に移動することによって、高い生産性を持った労働者に変身したことにあった。
そして、ほとんどそれだけなのだ。
もちろん、それだけと断定していいか微妙な部分はある。
都市への集積による生産性の上昇効果は中国の企業にも発生していなくてはおかしい。
それでも、今までの流れを考えると生産性の伸び率は0と仮定しても全然間違っていないように思える。

中国の高度成長の源泉が外資系輸出企業の生産性の高さだけによったならば、一人労働者が移動することによって中国の全体としての所得はその分上昇した。
上昇した所得は主として、外資系企業と経営者に分配された。
土地インフラをサポートしている政府にも、いろいろな形で金は流れただろう。
労働市場は今まで逼迫していなかったので、賃金を通した還元はそれほど大きくはない。
経営者、合弁相手である国有企業、政府に分配された所得は再度投資され、中国の巨大な貯蓄金額を現出させた。

中国のバブルは消費できずに貯まっている資金の、不動産への巨大な投資が原因になった。
中国沿岸部に進出している外資系企業によって、労働者は沿岸都市に集中してきている。
その住まいを供給するために不動産は上がり続けている。
だから、沿岸部の都市に住民が集まり続ければ、不動産価格は上昇し続け、バブルが崩壊することはない。

しかし、転換点がやってきた。
ついに労働者の供給が逼迫してきて、賃金が上昇を開始した。
外資系輸出企業は単純な賃金の安さを理由とした、中国への進出をとめはじめている。
繊維産業がより安い労働者を求めて中国を撤退し、ヴェトナムやカンボジアに進出しているのはその例だ。

外資系輸出企業による中国への進出が止まれば成長の源泉はないし、都市部の不動産価格の上昇もありえなくなってしまう。
つまりはバブルの崩壊だ。

自動車産業や日本の内需産業の中国への進出は、外資系輸出企業とは別のくくりの進出だ。
これらの産業が付加価値の向上を生みだすならば、外資系輸出企業を源泉とした成長から別のくくりの成長に変化し、バブル自体が停止しないことも考えられる。
ただし、これは難しい。
全力疾走をしている馬車から、速度を維持したまま馬を取り換えるようなものだ。
一度停止する必要がどうしても出てくる。

けれどもバブルは止まり続けることはできない。
停止すれば自然に崩壊してしまう。
中国の成長するための需要の大部分が不動産投資である以上、バブルが崩壊すれば不動産投資を続けることができず、成長は停止してしまう。
調整はかなり時間がかかる。
それが本当だろう。

冒頭のなぜいまバブルが崩壊するかと言う質問の答えは、成長の源泉だった外資系輸出企業の進出が労働者の賃金が上がることによって止ったからになる。

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