異をとなえん |

中国の奇妙さ

2011.09.19 Mon

20:06:38

なぜ中国は世界一の外貨準備国なのだろうか。
とても不思議である。
国民が金持ちで、お金が余るから世界に資産を持っているのならわかる。
でも、中国はまだまだ貧乏な国のはずだ。
一人当り国民所得は4000ドルで、日本の約10分の1だ。
買いたい製品がたくさんあってもおかしくない。
自動車、住宅の需要が伸びているみたいだけど、もっともっとあっていいはずなのだ。
そういう需要が多いならば、当然輸入は増え、貿易黒字は減っていく。

それなのに、統計を見ると消費性向はかなり低い。
全体のGDPの30%半ばで、1980年ごろから、ずっと減り続けている。
その代わりに、貯蓄が拡大して50%を越えてきている。
投資も当然高いわけだが、貯蓄を使いきれず、その分世界に対して資本が出ていっている。
なんで、こんな変な経済なのだろうか。

中国国民の貯蓄が多いのは、年金や保険などの社会保障制度が充実していないので、将来に備えるために貯蓄しているという意見をよく目にする。
なんか納得がいかない。
第一中国のインフレ率は預金の利子率を上回っている。
銀行にお金を預けたままにしておくと名目で増えた分よりも実質で減った分が上回るわけだから、普通避けるはずだ。
実際、小金を持っている中国人は預金するよりも、不動産投資をしている方が多いと感じる。

つまり、中国を擬人化すると、成長による所得の増大分を消費と不動産投資に分けて使い、将来の不安から消費よりも不動産投資の成長率が高ければ、中国の消費性向の低さは説明がつく。
それでは、経常収支の黒字に相当する貯蓄はどこから来るのか。
ISバランス論から言えば、貯蓄-投資=経常収支の黒字である。
ISバランス論は恒等式なのだから、経常収支の黒字がある以上、どこかで貯蓄が発生しているはずだ。
それが中国政府による為替介入か?

ドル元相場を一定の範囲に留めるために、中国政府は恒常的に相場に介入している。
ドルを買って元を売っているから、元が市場にあふれでる。
それではインフレの素なので、不胎化ということで介入分だけ資金を市場から回収している。
介入分を銀行から政府に強制的に集めさせるといっていい。
通貨システムが健全に活動するためには、一定の資金が銀行などの間を流れ続けなければいけない。
そこに資金を足して引いているわけだから、一応貯蓄の源泉は中国銀行そのものになるのか?
なんか無から有をつくりだしているみたいで、すごく気持ち悪い。
もう少し考えてみよう。

まあ、こんな風に考えてみたとき、中国経済は何が奇妙なのだろうか。
やはり消費性向が低すぎるのが奇妙となる。
日本や韓国の高度成長のときは固定為替相場のもとで、消費は順調にのびた。
中国はなにが違うのか。

中国人は消費財の多くが自分の労働に見当った価値がないと考えているからではないだろう。
賃金が上昇しなければ、消費が増えることはない。
いや賃金が上昇したとしても、それに見当って価格が上昇すれば消費はやはり変わらない。
中国国内で消費があまり増えていないのは、生産性が向上していないので、商品の価格が下がらずお得感が小さいからだ。

生産性の上昇は外資系を中心とした輸出産業中心に起こっているだけで、それ以外の伸びは小さい。
輸出産業に貯まった剰余は労働力が枯渇していないので、労働者に分配されることはなく、資本の利益となっている。
彼らはその利益を不動産投資に回している。

沿岸部では労働者の賃金が上がり始めた。
ようやく中国の労働力も枯渇しはじめたわけだ。
賃金の上昇は当然商品の価格に反映されて、インフレを招く。
けれども、生産性の向上が輸出産業だけにとどまっているならば、インフレはすぐに消費の減退をまねくだろう。
中国の大部分の人間の生産性が向上していないとしたら、恒常的な成長はできないわけだ。

結局中国の成長は中国の低賃金に魅かれて集まった外資系企業によるところが大きい。
低賃金の労働者がいるかぎり成長できた。
けれども、低賃金の労働者がいなくなれば外資系企業は投資をする理由がなくなってしまう。
輸出産業は成長できなくなる。

中国の不動産投資が盛んだったのは成長への期待だ。
輸出産業の成長がそれを支えた。
成長できなくなれば逆回転を起こして、資産価格が下落を起こすのは、バブルの常だ。

そうするとどうなるか。
消費はそう変わらない気がする。
もちろんバブルの影響による消費の増大はあったと思うのだが、それは不動産投資に向けられていた。
だから、不動産投資自体が大幅に減少する。
消費が変わらず、投資が大幅に減少すれば、輸出ドライブがかかることになる。
投資の減少によって、労働者が放出されるので、輸出産業のための労働力は確保できる。
ただし、賃金の下方硬直性によって、賃金自体は下がらない。
世界経済自体が順調に伸びていれば、輸出が増える余地もあるだろうけど、今はそうもいかない。
そうすると、答えは失業者の増加となる。
単純な失業者の増加は中国政府的には非常にまずい。
治安への影響も大きいだろう。
公共投資を増やして対応するしかない。
結局、成長が止り、政府の赤字が増大していく日本化ということになる。

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