異をとなえん |

ユーロシステムの崩壊はありえない

2011.07.23 Sat

06:15:39

ユーロの崩壊などありえないように思える。
前にも書いたが、PIGS諸国がユーロから脱退することなど不可能である。
ギリシャ、ポルトガル、アイルランドなどの国が、通貨の主権を回復しようとして、元の通貨に戻ろうとしても戻れるわけがない。
新通貨を発行しても、今にもデフォルトしそうな国家の通貨の価値はどんどん落ちていく。
そんな通貨を誰が受け取るだろうか。

新通貨の流通をはかるには、強制的に実行するか、自然な感じで変換していくか、二つの方法が考えられる。
強制的に実行するのは、ユーロと新通貨の変換レートを決定して、日を決めて一気呵成に変換してしまう方法である。
実行日にはユーロの流通は禁止され、強制的にユーロは新通貨と交換されることになる。
銀行の預金を降ろせば、自動的に新通貨に変わってしまうわけだ。
民主主義国でこんなことを実行しようとすれば、法律を通す必要がある。
問題なのは、法律が可決されると同時に、あるいはそのような法律が審議に入ろうとした時点で、人々は逃げ出すことだ。
銀行預金はすべて降ろして、とりあえずユーロ札に変えるだろう。
貸し出している金も、とりあえず回収するしかない。
ユーロで貸していた金が、法律で新通貨に変換されて戻ってきたらたまらない。
ユーロ札はどうするか。
そのまま持っている方がいいのか。
それとも、国外の銀行に預けた方がいいのか。
どちらにしても、現行のシステムから全ての資金が逃げ出していき、金融システムが一瞬の内に崩壊してしまうのは確かだろう。
だから、強制的な実行など不可能といっていいと思う。

そうすると、強制によらずして自然と変換をはかるには並行して使っていくしかない。
もっとも、新通貨の発行を審議する時点で、強制と任意の区別なく金融システムから一気に資金が逃げだすかもしれない。
それは一応起こらないとして話を進めよう。
ユーロと新通貨を並行して使用するわけだが、一体どうやって新通貨を流通させるのか。
誰も受け取ってくれない新通貨で、政府が支払いをしようとてしても受け取ってくれない。
実行するとしたら、金兌換紙幣のように、ユーロに変換できることを保障したユーロ兌換紙幣を発行する形で進めるしかない。
でも現在の状況で準備通貨としてのユーロは貯められない。
そもそもユーロがないから困っているのだ。
結局、信用がない政府に新通貨など発行できるわけがないという結論しかない。

つまりPIGS諸国はいやがおうでも、ユーロシステムに残っていくしかない。

ユーロシステムが破綻しないとなると、問題なのはドイツの動向である。
ユーロの崩壊を防ぐためにドイツは危機にある国を援助しなければならないという意見が一般的だ。
でも、ユーロが崩壊しないとしたら、ドイツはなぜ助ける必要があるのだろう。
アメリカ合衆国での地方自治体の倒産と同じようなもので、中央政府は放っておくだけだ。
もちろん、PIGS諸国に資金を貸し出している銀行は連鎖倒産する危険性が出てくる。
けれども、ドイツは膨大な経常黒字を積上げつつあり、ドイツの銀行も大量に資金を溜め込んでいるはずだ。
恐慌下において、弱い銀行が倒産し、強い銀行に預金が集中していくことを考えれば、危機にある国の銀行からドイツの銀行に預金を移していく可能性もたぶんにある。
つまり、ドイツの銀行は耐える可能性が強いのではないだろうか。

銀行が破綻しなければ、ドイツはPIGS諸国が破綻して困ることがあるのだろうか。
ユーロ圏から資金が逃げ出している状態では、当然ユーロ安になる。
ドイツは輸出が絶好調で景気は最高にいい。
問題は何もないように見える。
長期的に考えれば、南欧の各諸国の経常収支が改善され、ユーロ高に導くかもしれない。
でも、それは先のことだ。

ドイツがPIGS諸国を助けたくないのだとすれば、支援がまとまりにくいのもおかしくない。
今回、ギリシアに第二次支援が決まったけれど、危機の先延ばしといっていいだろう。
でも、それが一番得だとドイツは考えているのかもしれない。

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434 なぜドイツはECBの救済も共同債の発行も拒否するのか?

イギリスのEconomistやFinancialTimesがユーロの崩壊を言いたてるのは、ポジショントークではないのだろうか。 ユーロシステムの崩壊はありえないと私は主張してきた。 今現在、信用のおける通貨ユーロが使われているのに、信用のまったくないであろう新しい通貨が使われることなどありえない。 そう主張してきた。

440 ユーロ崩壊の心配をする前にデフォルトの心配をしろ

ユーロ崩壊の話について書きたい。 前にも書いている気もするが、なんか同じことでも繰り返して言いたくてしかたがない。 そこで重複を気にせず書く。 でも、実際に書いて見直してみたら、なんかほとんど同じことしか書いてない。 ちょっとがっかりだけど、文章自体は少しこなれたのではないかと思う。