異をとなえん |

貿易収支の黒字はなくなるか?

2011.06.27 Mon

03:48:46

日本の貿易収支が赤字になるという説がある。
短期的には、東日本大震災によって生産設備に多大の被害がもたらされ、原発事故により電力の安定供給ができなくなったので、今後日本の生産には制約が課されるから赤字になるというのである。
長期的には、今後日本が高齢化社会に突入するにつれて、生産年齢人口が減少し、扶養すべき人口が増えていくことで生産物の余剰を作り出せなくなっていくから赤字になるという。

実際、東日本大震災によってサプライチェーンが寸断され、特に自動車産業の生産がとどこおり、輸出ができなくなったことで、貿易収支は赤字になり、その額も急増している。
突発的事象かもしれないが、リーマンショックのときも輸出が急減して、貿易赤字になっていた。
短期間で赤字が続いて現れたことは、長期的な転換点の兆しにも見える。
日本の貿易収支は今後赤字基調に変換するのだろうか。

私はその予測に反対である。

貿易収支が黒字になるか、赤字になるかは、そもそも何によって決まるのだろうか。
一国の生産量と消費量を比較して、生産量が消費量より大きいならば黒字だろうし、逆に生産量が消費量より少ないならば赤字だろう。
生産量は生産設備と労働力でだいたい決まってくる。
生産技術はもっとも重要な要素だろうが、短期間でそんなに変わるものではない。
生産設備も設備投資を増やせば、生産量を増やす方向ではかなり増加させることはできるが、減らすのは簡単ではない。
そうすると、生産量の短期的な増減は労働力の変化によって決まってくる。
完全雇用状態が維持されるならば労働力の増減も無視できるだろうけれど、実際にはそうはいかない。
失業率の違いによって、労働力は変化し、生産量も違ってくる。

日本経済は近年ずっと貿易収支の黒字は続いていた。
その原因は何かという問題はあるのだけれど、今は無視して黒字が続いているという条件の元で話を進める。

貿易収支の黒字が続いていたということは、生産量が消費量を上回っている。
これが赤字になるには、消費量が増えるか、生産量が減るかする必要がある。
今の貿易赤字は生産量が減ったからで、それも自然災害によるというかなり特異なケースだ。
単純なサプライチェーンの寸断の問題は、時間とともに解決されつつある。
自動車産業の全面復旧は早まりつつあり、遅くとも年内には回復できるだろう。
それとともに、貿易収支は黒字に変わるはずだ。

それでは、原発事故による電力制約はどうなるだろうか。
原子力発電の先は見えない。
それだと電力の制約により、生産量の制限がかかるようにも見える。
けれども、制約が発生するのは当分の所夏だけのはずだ。
実際節電という要請のもと、休暇を振り替えるとかによって、かなり問題を回避できるようだ。
今年の夏はそれで乗り切れるだろうし、来年以降はどうなるかわからないけど、原発が廃棄されても火力発電を増やしていくことで制約にはならないように思う。
もっとも、それは原子力発電のコストと普通の火力発電のコストが同じことを前提にしている。
原子力発電のコストが普通の火力発電のコストより圧倒的に安ければ、電力価格は上昇し企業の生産量に影響を与える。
けれども、最近のよく出回っている発電の単価を見るかぎり、原子力発電が圧倒的に安いということはない。
むしろ高い。
普通の火力発電には燃料の価格変動によってコストが急激に変わる問題があるので、単純に原子力発電のコストと比べられないと思うけど、全部火力発電にしても原子力発電より価格が上がることはないはずだ。
設備投資費の問題はあるが、原子力発電を停止すれば、その損は少なくとも政府がかぶらざるを得ない。
だから、原子力発電の撤廃という極端なことが起こっても、電力自体は制約にはならないというのが私の意見である。

貿易収支の問題に戻ると、東日本大震災や原発災害による生産量の減少から来る赤字は長続きしない。
短期、少なくとも一年以内に解消する。
だから、それ以外の理由による赤字について書かなくてはならないが、それは次回にする。
また、円高やコスト上昇の問題についても、そこで考えたい。

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407 続:貿易収支の黒字はなくなるか?

前回の記事では原発事故による経費の上昇はあまりないとした。 今日ニュースを見ると、いきなり18%価格が上昇するとか出ている。 引用開始 原発の再稼