異をとなえん |

日本の好景気の条件 - 為替レートはどう決まるのか?(その10)

2011.06.22 Wed

03:45:55

「為替レートはどう決まるのか?」というのは、金利差によって為替レートが決まる理論から、私の理解できることを書いてきた。
書きたいことはだいたい書いてしまったので、最後に日本が好景気になる条件について考えてみたい。
その他にもいろいろ考えついたことはあるけれど、それはまた別の話とする。

日本の好景気というのは、デフレが終了してインフレになり、アメリカの債券金利を日本の債券金利が上回るような状態になることだ。
デフレが終了してインフレになるというのは、大体納得できるだろうが、アメリカの債券金利を日本の債券金利が上回る条件はどうしてつくのだろうか。
これはアメリカの景気に関係なく日本の景気が良くなって欲しいからだ。
2002年ごろから始まった好景気はアメリカの景気に引っ張られていた。
アメリカ経済の景気がいいことで、金利差が生まれ円安となり、輸出を増やすことができた。
同じく景気がいいことで、アメリカでは消費が活発に行なわれ、その市場に輸出することで、日本は多くの企業が利益を上げることができた。
アメリカ経済に依存した好景気のため、リーマンショックに始まる金融危機で輸出が急激に減少することで終了した。
これは悲しいので、できればアメリカの景気に関係なく、日本の景気が良くなって欲しい。
そこで、アメリカの債券金利を日本の債券金利が上回る条件をつけた。
現実的な未来を考えても、アメリカ経済が日本の失われた十年を繰り返すならば、アメリカの債券金利はしだいに下がっていく。
この金利を上回れないとしたら、日本の景気は悪いままだ。
アメリカが失われた十年を繰り返している間、日本の景気も悪いままでは悲しすぎる。
つまり、アメリカの景気が悪いままでも、日本の景気が持ち直す条件として、日本の債券金利がアメリカの債券金利を上回るがあるのだ。

さて、日本の債券金利がアメリカの債券金利を上回るとはどういうことだろうか。
今までの債券の金利差によって、為替レートが決まるという理論に従えば、アメリカから日本に資金が流れ、貿易財の購買力平価以上に円高になるということだ。
アメリカが日本に対して経常収支が黒字になることもあるかもしれない。
この場合所得収支が黒字になる可能性は少ないから(アメリカが日本に対して純債務を持つには時間がかかるから)、貿易サービス収支が黒字になるという条件だ。

これらの実現は大変である。
貿易財の購買力平価はいまだいたい65円ぐらいだった。
この条件を上回る円高ということは1ドル60円などという話だ。
こんなに円高になったら、日本の輸出額も大幅に減少するだろう。
今の1ドル80円の円高でも自動車の国内生産はムリだという話が出てくる。
それを大幅に上回るレートなのだから、自動車の輸出は0でも不思議はない。
他にも輸出額は減るだろうから、アメリカとの貿易収支が赤字になっても当然のこととなる。

問題はこの場合の日本内部での雇用状況だ。
今でさえ需給ギャップがあって、完全雇用状態にはほど遠い。
それなのに、輸出用の自動車生産すら日本から失われたら、失業率は今より高くても不思議はない。
これは日本の好景気を達成できる条件としては矛盾する。
つまり日本には好景気はありえないという話になってしまう。

簡単に考えるとそうなってしまうのだが、好景気を実現するには他の部分を変化させても達成できるかもしれない。
それを二つ考えてみた。
一つは円高で輸出用の自動車生産がなくなったとしても、それを上回るほどの需要が国内に生じていることだ。
たとえば、輸出用の自動車生産を国内需要分に変更できればいい。
ムリと思うかもしれないが、バブルのときは日本国内でたくさんの自動車が売れた。
それが再現できれば、好景気と円高を両立できる。
ただ、なんとなく無理っぽい。
バブルの再現は不可能だ。
けれども全く関係のない新製品を生み出せれば、状況は変わる。

もう一つは、円高自体を阻止することで、現在ある輸出用の国内生産をなんとか維持する方法だ。
債券金利が日本の方が高いならば、資金はアメリカから日本に流れる。
そうなれば円高だけど、債券金利に着目して流れる資金はリスクを取れない弱い資金だ。
日本からアメリカにリスクを取った資金が直接投資として流れ、アメリカから日本に流れる資金の金額を上回れば円高にならずにすむ。
金融危機前のアメリカでは、日本や中国から資金がアメリカ国債目当てに流れてきた。
アメリカの民間資本は世界に直接に投資され、アメリカは債務超過国であるにもかかわらず、所得収支が黒字の国を実現していた。
これと同じことを日本も実行すればいい。

現在日本企業による世界の企業へのM&Aをけっこう行なわれている。
武田薬品のスイスの薬品会社の買収は目新らしい。
日本企業はバブルの傷も癒えて、キャッシュリッチなのだから、M&Aは十分可能だ。
他にも、アジアの需要を満たすための設備投資を日本ではなくアジアで果敢に行なっている。
アジアのインフラ投資をサポートするための貸し出しも盛んになりつつある。
そんなこんなを考えると、円高を起こさないだけの投資が日本から世界に流れても全然おかしくない。

円高にならない状態で、最終的に日本内部で新需要が生じれば、日本の景気はよくなり、日本の債券利回りがアメリカを上回っても全然おかしくない状況ができると思う。
日本で新たな需要が生まれなければ、日本の景気は良くならないと主張してきた。
その考えに変わりはないけれど、それと同時に日本からの長期投資と輸出の維持も重要というのが、新たに追加する主張だ。

関連記事
為替レートはどう決まるのか?
購買力平価について - 為替レートはどう決まるのか?(その2)
量的緩和政策とQE2について - 為替レートはどう決まるのか?(その3)
均衡を生み出すメカニズム - 為替レートはどう決まるのか?(その4)
国債購入政策の功罪 - 為替レートはどう決まるのか?(その5)
続:国債購入政策の功罪 - 為替レートはどう決まるのか?(その6)
国債暴落説について考える - 為替レートはどう決まるのか?(その7)
国債の金利が下がる意味 - 為替レートはどう決まるのか?(その8)
円安介入はなぜ効かないのか? - 為替レートはどう決まるのか?(その9)

このエントリーをはてなブックマークに追加
LINEで送る

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURLはこちら

405 お金があることとないこと

お金がある人とない人では使い方が全然違う。 お金がある人は余裕を持った使い方ができる。 まとめて買えば割引をしてくれる商品で、本当に必要なものなら今必要がなくとも買う。 それに対してお金がない人は悲しい。 日々使える金に制限があるから、一個あたりの費用よりも総額を重視して買物をしなくてはならない。 長期を見れば損なことでも、仕方がない。 割引率よりも、絶対額なのだ。 投資も同じだ。 お金があれば余裕を持って投資することができる。 将来性のあるハイリスクハイリターンの株や商品を買うこ