異をとなえん |

円安介入はなぜ効かないのか? - 為替レートはどう決まるのか?(その9)

2011.06.14 Tue

00:53:38

去年(2010年)の9月、政府が円安にするためにドル円相場に介入した。
82円ぐらいから開始して、85円ぐらいまでドルの価格を押し下げだ。
しかし政府の介入は一時的で、その後円安傾向に振れることもなく、段々と円高になっていった。
東日本大震災発生後の突発的な上昇では、史上最高値76.25円をつけて、その後も80円近辺でもみ合っている。
政府の介入にはたいした効果がないのが定説であるが、それを証明している。
政府の介入がなぜ無効なのかについて、理屈付けしてみた。

今まで述べてきたように、ドル円相場は金利差と貿易財の購買力平価と期待インフレ率によって、かなり正確な均衡価格の推定が可能である。
正確な推定が可能なのは、ドルと円の間に資本が自由化されていて、双方の国債市場の規模が非常に大きく、かつ為替市場の規模も非常に大きいので、裁定取引をいくらでも行なえるからである。
裁定取引を繰り返すことによって、ドル円相場は金利差からくる均衡価格に近づいていく。

ここで政府が円安介入をしたとしよう。
非常に多額であったので、円安にレートが移動した。
けれども、均衡価格よりも円安ということは、日本の長期資本投資をする人たちには、投資できない水準にまで円が上昇したことになる。
長期資本の円が出ていかないのだから、経常収支で黒字を出している日本にはしだいに金が集まるようになり、円高に振れてゆく。

また、日本政府が多額の為替介入を行なっていた2003年、2004年では、統計によると資本収支は黒字になっている。
2003年は約22兆の外貨準備増と7.7兆の資本の日本への移動、2004年は約17兆の外貨準備増と約1兆の資本の日本への移動。
普通の年は日本から世界に資金が流れていくのに、外貨準備の増えかたが多かったので、逆に世界から日本に資金が流れているのだ。
つまり、日本の民間は多額の資本を戻している。
あるいは、世界が日本に投資をしている。
日本の資本の移動の基本は、民間で余った金をアメリカ国債のような信用リスクの低い債券に投資することだ。
政府の為替介入も結局はアメリカ国債を買って運用していく。
債券を買っていないと、利益が出ないからだ。
すると、アメリカ国債の価格は上昇する。
為替が円高でアメリカ国債の価格が上がっていれば、今までアメリカ国債に投資してきた人たちには、絶好の手仕舞いどきとなる。
アメリカ国債を売り、想定より低い円レートで日本に資金を戻す。
さらに当然のことながら投機をしているトレーダーも、日本政府の介入レートが理論値より高すぎていれば、理論値まで戻るように売り浴びせることになる。
結局、政府が円安介入した場合、その金額に合わせた分だけ日本の民間が売ってくるはずなので、円が安くなりすぎるなんてことはない。

ドル円相場が何の根拠もなく動いているならば、トレンドを作ろうとするための為替介入も意味があるだろう。
そうではなくて、推定した理論値で、為替相場が動いているのならば、トレンドを作ろうとするための介入は全く無意味になる。
どういうトレンドを作ろうとも、理論均衡価格に相場が収束しようとするからだ。

それでは、円安介入には意味が全くなかったのだろうか。
そういうわけではない。
基本的に政府の円安介入は民間のアメリカ国債への投資を肩代わりするだけだが、2002年から2004年の介入は非不胎化介入であったので少し違う。

非不胎化介入というのは、アメリカドルを買ったために使った円を市場から回収しないケースを指す。
通常は不胎化介入で介入した円を市場から回収してしまう。
つまり、非不胎化介入というのは、介入した円が市場からあふれるので金融緩和政策と同じである。
アメリカ国債と日本国債がほぼ同値であるとしたら、政府の介入は日本国債の購入とほぼ同じ効果があったのではないだろうか。
国債の購入によって金利が下がり、金利差が拡大することで円安に向かう。
それと結果的にほぼ同じことが、円を購入することでも起きたと。

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