異をとなえん |

国債の金利が下がる意味 - 為替レートはどう決まるのか?(その8)

2011.06.13 Mon

04:00:15

「為替レートはどう決まるのか?」というシリーズでは、国債の金利差が資金の移動にとって意味があり、かつ一番重要であるということを理解したことで、自分にとって納得できたことを記事にしている。
そのため、あまり体系だっていないが、感じることを書いていく。
今回は国債の金利が安くなること自体は自国通貨安を意味しないことを示す。

ドル円相場はアメリカと日本の国債の金利差がもっとも重要な要因だと述べてきたが、アメリカ国債の金利が下降したからといってドルが全面安になるわけではない。
ドル安円高だと、ドルは他の通貨に対して高くなることが多い。
リスクマネーがアメリカや日本に巻き戻されている現象と解釈されている。

アメリカと日本の国債の金利差をもっとも重要な要因として動いているのは、日本の資金を動かしている人たちだろう。
基本的にリスクを取って資金を動かすことをきらい、できるだけ堅実に運用することを目指している。
そして日本で資金を動かしている人はそれらがほとんどだ。
リスクを取って運用し、海外に投資している金額は少ない。
最近では、アジアへの製造業投資とか、世界の企業のM&Aとか、日本でもリスクを取って海外に投資しようとする資金が増えてきた。
けれども、これはバブル崩壊後の傷が癒えて、ようやくリスクを取るほどの余裕ができてきたからだ。
リスクを取れなかった今までは、金利差に着目した資金が圧倒的だった。

それに対してアメリカの資金は違う。
金融危機前日本や中国からの資金はアメリカ国債に投資されていた。
アメリカはその資金を世界中のリスクがより高い資産に投資していた。
けれども、金融危機後アメリカの経済も停滞し始め、リスクが取れなくなった。
貧乏になると勝負できないのだ。
そうすると、堅実な運用を目指して国債を購入しようとする資金が増えてくる。
アメリカの国債価格が上昇し、利回りが低下してくると、日本円はアメリカに流れなくなる。
リスクマネーがアメリカや日本に巻き戻される現象が意味しているのはこういうことだ。

日本の場合もバブル崩壊直後は円高になっていた。
最大の理由はリスクマネーが日本に還流していったことだろう。
バブル当時いけいけだった日本は世界中の資産を買いまくっていた。
三菱地所のロックフェラーセンターの買収などはその典型だろう。
けれども、日本で資産価格が下落しはじめると、日本企業は貧乏になっていった。
リスクを持つことが困難になっていった。
仕方がないのでリスク資産を大量に処分した。
三菱地所がロックフェラーセンターを売却し、資金を円に戻したわけだ。
その資金は国内に滞留するので国債の価格は上がり、金利は低下していった。
もちろん、アメリカと日本の国債の金利差を裁定して、アメリカに出ていく資金もあったと思うが、それはリスクマネーの還流の規模に比べて小さかったのだ。

QE2によって、FRBはアメリカ国債を買い上げ、金利の低下を図ったがそうはならなかった。
最大の理由は、正統派経済学による景気が回復するという予測の発生だろう。
景気が回復するという予測、インフレになるという予測、商品価格が上昇するという予測は、国債から還流した資金を株式市場、商品市場、新興国市場に流していった。
それらはインフレを起こしたが、アメリカ国民はインフレを拒否し経済が停滞し始めている。
そこで結局資金はリスクを取らなくなりアメリカ国債に還流し始めている。
アメリカ国債が下がると、日本からアメリカ資金は流れなくなる。

まとめると、アメリカではリスクを取った投資機会が少なくなると国債に購入が集まり、国債の金利は下落していく。
アメリカ国債の金利が下落すると、裁定を通じて日本からアメリカに流れる日本円の動きが鈍くなっていく。

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