異をとなえん |

続:日本はなぜ旅客機がつくれないのか?

2011.06.11 Sat

21:34:32

前に一度、「日本はなぜ旅客機がつくれないのか?」の感想を書いてみた。
その理由をいまだに考え続けているので、今の意見を書いてみる。

日本の航空機産業がいままで弱い最大の理由は、政府の援助が少ないからだ。
世界の航空機産業は軍事中心に成立してきた。
軍事上の要請から政府が開発費を多大に負担してきた。
いまも新規航空機の開発の場合には、政府が補助金を出すことが当然のように認められている。

その結果、民需中心の経済構造を持っている日本には非常に参入が難しかった。
日本は開発費を補助するというシステムが基本的にはない。
だから、民間企業だけでは開発の初期費用を捻出することができなかった。
YS-11は政府が開発費を出したが、それを続けれられず失敗した。
政府が開発を援助し続けるべきという意見は多いが、それは政府が民間に介入するということで根本的に間違っている。
政府の強力な援助なしに成立できない産業ならば、日本には必要ない。

だから、世界の航空機産業はある意味腐っている。
世界の航空機産業を支配していたアメリカはエアバス社の参入を許した。
一つは共産主義の崩壊により軍事費が減少し、航空機産業がボーイング一社の独占になったためだ。
もう一つはエアバス社がヨーロッパの強固な支援を得ていることによって、開発費が捻出されたからである。
でも、開発費があればそれだけで市場に参入できるのだろうか。
どうもそうらしい。
もちろん開発に成功することは必要だが、成功すれば現行の機種より性能が高いはずなので、業界が寡占化している以上ある程度売れることになる。
航空機産業のメンバーは極めて少なくなっている。
イニシャルコストが高い以上、寡占化するのは業界の常だ。
複数の企業が参入すれば共倒れになる危険性が高まるので、市場を分割しそこで高い利益を出していこうとする。
そんな行動をボーイング社もエアバス社も示している。

その状況も少しずつ変わり始めてきた。
リージョナルジェットはアメリカとヨーロッパの政府中心の開発から離れて、民間独自が勝負できる市場を切り開いた。
政府が多額の補助をしていることは変わりなくとも、開発費がいままでのジェット機より減っただろう。
けれども、日本にとってリージョナルジェット市場はバブル崩壊以後に発生したといってよく、イニシャルコストが大きい航空機開発には体力の弱った企業の手の負えるものではなかった。

リージョナルジェットの業界はボンバルディアとエンブラエルの二社寡占である。
この二社はリージョナルジェット機という新しい分野を作り出してきた。
この業界に三菱重工がMRJという機種をひっさげて参入しようとしている。
不思議なのは、業界を支配しているこの二社の動きが鈍いことだ。
MRJは燃費を20%向上することが売りだ。
開発に成功すれば急速にシェアを伸ばすこともあるだろう。
それなのに対抗した旅客機を開発しようとしてない。

ボンバルディアはCシリーズという100席以上という、今までのリージョナルジェットより大きい旅客機を開発している。
それはそれで意味があるのだが、自分たちが支配している分野を守ろうとしないのだろうか。
MRJが新規に参入してきた所で戦えば消耗戦になる。
それが嫌で逃げているだけなのではないか。
エンブラエルは新規の開発をしているかよくわからない。
現行のシリーズがよく売れているからだろうけど、競争相手を叩く必要はないのか。

旅客機開発のイニシャルコストが高いからと言って、ある程度段階を追っていけばそれほどきつくはないはずだ。
きつくなるのは段階的に開発するのではなく、今ある機が完全に時代遅れになったら、完全に一新をするつもりで開発するからだ。

ボンバルディアもエンブラエルも資源国として経済は好調だ。
そこに利益率が低くなる泥沼の競争を回避して別の分野に逃げている。
そんな感じを受ける。

日本の航空機産業を応援したい。
ただ、それは政府の強力な援助によるものではなくて、民間企業の自立した経営によるものでなくてはならない。
三菱重工のMRJは民間企業の勝負のように思える。
今後の航空機産業が政府や軍事の枷から外れるならば、日本にもチャンスはある。

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