異をとなえん |

国債暴落説について考える - 為替レートはどう決まるのか?(その7)

2011.06.11 Sat

05:59:59

国債暴落説というのが、いろいろと出回っている。
私には疑問なのだが、それについての反論をまた書いてみた。

まず国債暴落説とは、日本の国債があまりにも巨額になってきたために所有者が不安を感じ国債を売ると、そのタイミングが一致するときには大幅に価格が下がり、価格が下がること自体が原因となって処分売りがかさみ下げが止まらなくなるような事象が起こるという説である。
国債暴落自体はあってもおかしくない。
国債所持の不安から起こるというのはどうも疑わしいが、少くとも日本の景気が回復して資金が投資に向けられるようになれば、デフレと不景気を前提とした現在の国債の価格が崩壊してもおかしくはない。
おかしいのは、国債暴落と円安が同時にくるような意見で、ここらへんから私にはまゆつばに見えてくる。

単純に考えれば国債暴落は円高である。
国債が暴落するということは、金利が上昇することだから、日本の持つリスク資産から国債に資金が移動するはずである。
日本の持つ海外の資産で、国債よりリスクは高いのに利率が低い投資は回収して、国債に投資した方が得だからだ。
日本円で資金を調達している日本の銀行には、日本国債よりリスクが低い資産はないから、利率が高ければ回収する。
日本に資金が戻れば円高になるし、あるいは日本から外国への投資金額が低くなっても円高だ。

国債暴落で円安になるというのは日本の信用不安によって、資金が逃げ出していくからという話だ。
つまりデフォルトを起こさなくとも、ハイパーインフレで価値がなくなることが前提になっている。

国債が暴落したときに、均衡が成立しているならば、どのくらいのインフレを仮定するか計算してみよう。
たとえば、今アメリカ国債2年物が利率0.4%で、日本国債2年物が利率0.17%だ。
ここで日本国債が暴落して、利率が3%になったとしよう。
1億ドルを2年分投資する。
ドルだと1億80万ドルになる。
円に投資すると、1億ドル * 80(レート) = 80億円で、2年後には80億円 * 1.06(利率) = 84億8千万円となる。
そうすると、2年後のドル円レートが84億8千万 / 1億80万ドル = 84.12円/ドルより円安にならなければ儲かるわけだ。
たいしたことないと思ってはいけない。
償還するときのレートは貿易財の購買力平価のレートで見るのだった。
購買力平価について」で見たように、現在の購買力平価でのレートは65.12円である。
そうすると(84.12 - 65.12)/65.12 = 0.29で実に30%近いインフレが発生することを期待しているわけだ。
年率だと半分の15%で、この場合は複利で効いてくるから、もう少し小さくて、計算すると13.2%ぐらいだ。

13.2%のインフレは尋常じゃない。
これほどのインフレは需給のギャップがとても開いている必要がある。
現在の日本の需給ギャップというのは、供給が需要を上回っている。
それに対してインフレになるには、需要が供給を上回らなくてはならない。

石油ショックのときのインフレは、景気が良くて需要が非常に大きかった所に石油の値上げが襲って急上昇した。
現在の日本にこのような状況があるだろうか。

現在の日本でインフレが起こるには、需要の急増か、供給の急減かが必要だ。
需要の急増はとてつもない好景気を意味する。
国債暴落と円安には、石油ショック直前の高度成長が数年続いて、供給が追いつかない事態がいる。
絶対にないとは言わないが、これは喜ぶべきことだろう。
あるいは、供給の急減だ。
東日本大震災はまさしく供給の急減だったが、年で見ればたいしたことはない。
今年度の実質成長率はマイナスになるかならないかで、とても供給の急減とはいえなくなる。
つまり、国債暴落と円安を招くほどの供給の急減は戦争でも起こって、国内の工場が半年ぐらい操業できないとありえないのではないだろうか。

結論からすると、国債の暴落と円安は同時に起こらない。
だから国債暴落と円安で日本がとてつもない貧乏状態になるというのは、まゆつばものだ。

関連記事
為替レートはどう決まるのか?
購買力平価について - 為替レートはどう決まるのか?(その2)
量的緩和政策とQE2について - 為替レートはどう決まるのか?(その3)
均衡を生み出すメカニズム - 為替レートはどう決まるのか?(その4)
国債購入政策の功罪 - 為替レートはどう決まるのか?(その5)
続:国債購入政策の功罪 - 為替レートはどう決まるのか?(その6)

このエントリーをはてなブックマークに追加
LINEで送る

コメント

297

国債暴落で円安になる理由は、通貨の信任が無くなるから
国債が暴落して、自国通貨高になった国など、古今東西何処にもない

能書き垂れるなら、もう少し経済の基本を勉強してからにしないと
恥書きますよ

298 Re:国債暴落で円安になる理由

名無しさん、コメントありがとうございます。

コメントについては納得しがたかったので、最新の記事で反論してみました。
何か意見がありましたら教えてください。

特に、自国通貨建て国債が暴落して自国通貨安になることは普通ありえないと思うのですけれど、具体的に起こったケースを教えてもらえないでしょうか。

それでは。

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURLはこちら

395 国債の金利が下がる意味 - 為替レートはどう決まるのか?(その8)

「為替レートはどう決まるのか?」というシリーズでは、国債の金利差が資金の移動にとって意味があり、かつ一番重要であるということを理解したことで、自分にとって納得できたことを記事にしている。 そのため、あまり体系だっていないが、感じることを書いていく。 今回は国債の金利が安くなること自体は自国通貨安を意味しないことを示す。 ドル円相場はアメリカと日本の国債の金利差がもっとも重要な要因だと述べてきたが、アメリカ国債の金利が下降したからといってドルが全面安になるわけではない。 ドル安円高だと、ドルは

444 日本国債のCDSが上昇している理由

あいも変わらず、日本国債のデフォルト話が出ている。 日本が世界金融危機の次なる「誘発点」に―米誌 私はありえないと否定しているが、それではなぜCDSの保証料が上昇しているのだろうか。 そこらへんのことを説明してみたい。 ただ、実務がよくわか

525 国債が暴落すると自国通貨高になる

「国債暴落説について考える - 為替レートはどう決まるのか?(その7)」で次のようなコメントをいただいた。 引用開始 国債暴落で円安になる理由は、通貨の信任が無くなるから 国債が暴落して、自国通貨高になった国など、古今東西何処にもない 引用終了 ちょっと納得しがたいので反論してみた。 まず、国債の暴落が起こった場合の為替相場の例を見てみよう。