異をとなえん |

続:国債購入政策の功罪 - 為替レートはどう決まるのか?(その6)

2011.06.10 Fri

04:31:41

昨日の話に続いて、国債購入政策の功罪を考える。

量的金融緩和政策の内需拡大効果には疑問がある。
しかし、長期金利を下げることによって金利の高い国に対して資金流出を促し、しいては自国通貨安を起こすことで輸出の拡大雇用の増加を目指す政策はある。
単なる量的緩和政策ではなく、国債を購入する政策はそういう意味では有用だ。

でも通貨安政策というのは、国民の給料を下げ、とにかく仕事を取ってきて、借金を返そうという政策だ。
IMF危機のときの韓国みたいに外国への借金で首が回らなくなった国では正しい政策だとしても、外国に借金がない国ではそんなにしゃかりになる必要がない。
日本にしても、現在のアメリカにしても、必要なことは内需の拡大である。
全然使わなくなってしまった家計が消費を増やしてくれること、それが一番必要だ。
そう考えると通貨安政策というのは明らかにまずい。
輸入品の価格が上がれば需要は減る。
消費に悪影響を与える。

現在のアメリカではガソリン価格が1ガロン4ドル近辺になっていて、他の商品を買うお金がなくなっている。
つまり、QE2によって起こっているドル安と商品価格の高騰が需要を減らしているのだ。
通貨安政策がぐるっと回って、自分の首をしめてゆく。

もっとも、アメリカに必要なのは内需の拡大というのは間違いかもしれない。
2001年の日本の量的緩和政策と円高阻止のための為替相場の介入は、輸出中心の成長で日本経済に安定をもたらした。
膨大な資産を失った日本の傷をいやすために必要な政策だった。
アメリカも不動産資産の下落の影響をいやすために、通貨安政策が必要という観点はありうる。
しかし、それは輸入物価の上昇による需要の減退という悪影響をもたらす。
内需を減らし、外需に頼るというのはアメリカ経済の回復にとっては正しくても、アメリカ国民にとっては貧しくなることだ。
容易には受けいれ難い。
時間をかけて受容していくしかない。

通貨安政策は他国の成長のおこぼれをいただこうという政策だ。
リーマンショック前のアメリカみたいに、自律的に経済成長してくれる国がいてはじめて成立する。
アメリカが自律成長し、そのおこぼれを中国や日本がもらい、世界は成長していった。
オーストラリアやブラジルは資源を供給して、さらにその新興国のおこぼれをもらっている。
アメリカが成長できなくなれば、新興国の成長によって世界は成長できるのだろうか。
私は無理だと考えている。
中国のGDPに占める輸出の割合は40%近い。
そんな国で輸出が伸びなくなれば、全体のGDPも伸びなくなってしまう。
世界を引っ張る力になりえない。

どの国も世界経済を引っ張る力がないのに、通貨安政策を目指しても、共倒れになるだけだ。
それでも、自分一国だけは助かりたいという考えもある。
けれども日本はそうすべきではない。
日本は資産デフレの傷が一番浅い。
だから、日本が内需拡大の先頭に立つべきなのだ。
そうすると、輸入物価上昇、インフレを起こす通貨安政策ではなく、内需拡大のための円高政策を取る必要がある。

だいたい、今日本は東日本大震災での復興という大仕事がまっている。
基本的には需要はあるのだから、わざわざ円安にする必要はない。
必要な分を輸入すればいいだけだ。

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392 国債暴落説について考える - 為替レートはどう決まるのか?(その7)

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