異をとなえん |

均衡を生み出すメカニズム - 為替レートはどう決まるのか?(その4)

2011.06.07 Tue

03:21:04

「為替レートはどう決まるのか?」の話に戻る。
今までの話をもう少し深く考察してみる。

** 均衡のメカニズム

変動相場制で資金の移動が自由化されている場合、二つの国で長期金利に差が生じたとき、金利が低い国から高い国に資金が流れていく。
厳密には実質金利が低い国から高い国に流れるだ。
今まで述べてきたように、名目金利に差があってもインフレ率が違えば償還のときの購買力平価が変わっていることで、為替相場が変動している可能性が大きくなる。
名目金利がいくら高くても、インフレ率が高い国では実質金利はあまり高くない。
そうしたら、受けとる儲けはあまり大きくならない。
インフレ率の予想は難しいが、普通の国ならば急激に高くなったり低くなったりはしない。
現行のインフレ率をめどに上昇しそうか、下降しそうかで大体の予想はつくことになる。
確定している名目金利と予想インフレ率から実質金利が導きだされ、その差の分だけ資金が流れることになる。
2年物の国債の金利差が一番為替相場と相関が強いと言われているけれど、これは予想インフレ率の違いがほとんど無視できるとこらからくるのだろう。
もちろん、資金が動くことによって、双方の国の金利市場は影響を受けるし、事後的に定まったレートによって貿易収支が決定し、しいては資本が移動した金額と経常収支の赤字幅黒字幅が結果的に一致することになる。
これが二つの国ではなくて、複数の国で最終的に全てが均衡するのだから面白い。

二つの国で資本が移動する話に戻る。
実質金利が低い国は景気が悪い国、実質金利が高い国は景気がいい国といっていいだろう。
景気が悪い国では資本が移動することによって、自国通貨が安くなる。
そうすると賃金が安くなり、自国内にある部品や在庫も安くなる。
輸出が促進されて、輸出企業は儲かり、段々と景気が良くなる。
景気が良くなるということは株式相場が上昇することであり、債券市場から株式市場に資金が流れ出し、実質金利は上昇を開始する。

景気がいい国では逆になる。
景気が良くて、自国の通貨は高くなっているのだから、輸入がどんどん増える。
生産が増えていなくとも、輸入によってまかなえれば限界にぶつかることもない。
けれども、需要が満たされてゆけば消費も増えていかなくなる。
あまり物が売れなくなり、企業の利益は減り始める。
株式相場は下がるようになり、実質金利は下がり始める。

つまり、二つの国は資金が流れていくことによって、実質金利は互いに近づきはじめるだろうと予測される。
正確にどう均衡するかは、双方の国の需要の強さにかかってくるはずだ。
実質金利の高い国の方の景気が強いままならば、実質金利の低い国もそれに引っ張られて景気が良くなっていく。
逆に実質金利の高い国の景気が弱くなるならば、実質金利の低い国の方に引っ張られてしまう。

** 為替相場の流れ

今日1ドル80円のレートを割って79円台に突入していた。
先週のアメリカの雇用統計が思わしくなかったので、アメリカ景気の回復に陰りがさしていると見る向きが増えた。
株式市場から資金が債券市場に流れこむことで、金利は下降を開始し、日本からアメリカに資金が流れにくくなってきた。
だから、ドル安になっているわけだ。

リーマンショック後の為替相場は次のように考えられる。
リーマンショック後の金融危機によってアメリカの金融市場は動揺し、資金が安全な国債市場に流れこんだ。
金利も急低下し、日本からアメリカに資金が流れにくくなった。
だから経常収支の黒字がそれに見合うような水準になるように、レートが上昇した。
アメリカの需要が減っているので経常収支が減り、その分だけの資本の移動で均衡するようにレートが上昇したとも言える。
まさに、事後的には全てが均衡している状態だ。

その後世界各国の財政政策、金融政策によって景気は持ち直す。
アメリカの急低下した長期金利も反転し始めた。
その結果日本から資金がアメリカにまた流れ始め、円安になっていく。
でも、アメリカの景気回復は金融危機前とは違い強くない。
金利差があまり開かず、円安も1ドル100円台にタッチするぐらいでたいしたことない。

その後FRBの量的金融緩和政策によって、債券市場に強力に資金が流れ、名目金利は低下を続け、ドル円相場も下がり続けている。
一時アメリカ景気の持ち直しの予測からドルが反転したこともあったが、それほど強くなく、下がり続けているのが実態だ。

東日本大震災の後、一瞬猛烈に円高に振れたときがあった。
その理由を後付けする。
日本の生産設備に巨大なダメージが発生したことがわかった。
日本が生産できなければ余剰を生み出せず、貯蓄ができなくなるかもしれない。
そうすると金利は上昇する。
日本からアメリカに資金が流れない所か、下手すると日本に資金が流れる。
そうなれば強烈な円高だ。
為替相場はそれを予測して振れ、オプション的なものを突破することによってさらに上昇した。
ただ、実態はそれほど悲惨なものにならないことがわかったことで、円高は止まった。

中央銀行の国債購入の経済的意義を考える予定がそこまでいかなかった。
次回はそこまでいきたい。

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