異をとなえん |

量的緩和政策とQE2について - 為替レートはどう決まるのか?(その3)

2011.06.04 Sat

03:20:32

為替レートが金利差によって決まってくる部分が多いと述べてきた。
その結果何が言えるだろうか。

まず、中央銀行の国債購入が経済に影響をもたらすことだ。
2001年に始められた日銀の量的緩和政策は経済にはっきりした影響を与えていない。
銀行が日銀に持つ口座に大量に預金がたまっていたとしても、銀行は貸し出しを積極的に増やすことはなかった。
それに対して、アメリカのQE2はドル安、株式相場の上昇、商品相場の上昇といった感じで経済に影響を与えている。
この違いはどこから来るのだろうか。

QE2では積極的にFRBはアメリカ国債を買っている。
そうすると今まで述べたように、アメリカ国債と他の国の国債との間ではある種の裁定状態が働いている。
アメリカ国債の金利が下落すれば、新興国との間で金利差が開き、資金がアメリカから新興国に流れ、ドル安になっていく。
もっとも新興国はきちんとした国債市場がないから、簡単に資金が流れていくわけではない。
また、金利が最も低い日本国債との間では、アメリカ国債の金利が下落すれば、日本との金利差は縮まり、日本からアメリカへの資金の流れが弱まり、やはりドル安を導く。
もちろん、アメリカが経常収支赤字国である以上、その流れは簡単ではない。
他の要因が働いて、最終的にアメリカに資金が流れてくるような状態にならなければ、この状況は維持できない。
けれども、QE2がドル安を導いていることは確かだと思う。

ドル安は多国籍企業のアメリカ国外にある資産・収益を増加させる。
ダウの構成企業がほとんど多国籍企業であることによって、ダウは上昇することになる。
また、アメリカから新興国に資金が流れこむことで、新興国の景気を刺激し、商品市場の上昇を招いていく。
結局国債の金利を下げることで、裁定が成立していることにより、FRBの資金が世界に流れていくのだ。

それでは、日銀の量的緩和政策はなぜ経済に影響を与えられなかったのだろうか。
それは日銀が増やしたのが当座預金だけで、リスク資産でなかったからだ。
銀行の資産はいろいろな物に配分されているが、商品ごとにリスクは違う。
商品はリスクの高いものから低いものといろいろある。
その中で一番低いものが国債であることは言うまでもない。
しかし、それでも資金を固定している以上リスクはある。
日銀の当座預金はそれよりもリスクが低い。
0と言い切っていい。
しかも、元手は日銀からの貸し出しで、自分の金ではない。
リスクのある資産を増やすには元手が必要なのだ。
元手が一定である以上、リスクを増やすことはできず、当座預金として滞留することになる。

しかし、日銀が国債を購入すれば違ってくる。
国債はリスクが少ないといえ0ではない。
それが現金化されるということは利益が計上されたことであり、元手が増えたのだからよりリスクがある資産の投資に回せる。
あるいは、こうも言える。
日本国債とアメリカ国債との間には裁定が成立していると述べてきた。
そこで日本国債が購入されることによって金利が下がれば、アメリカ国債との間の金利差が開く。
これはアメリカ国債の購入を増やすように働く。
日本の銀行がアメリカ国債を購入するわけだから、円安になり、経済に影響を与えることになる。

そんなわけで支持するかどうかは別にして、中央銀行の国債購入は経済に刺激効果があると結論づける。
次回は中央銀行の国債購入の経済的意義をもう少し追及する。

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