異をとなえん |

為替レートはどう決まるのか?

2011.05.31 Tue

01:45:42

「ガラパゴス化は必然である」の続きを書こうとして行き詰まっている。
その中で一つ認識を新たにしたことがあったので、それを先に書いておく。

為替レートの決まる要因を、本などで調べると、購買力平価、経常収支、金利差などが上げられている。
この中で最近一番重要だとされているのが金利差による資本の流れだ。

私はどうもその説明に納得がいかなかった。
金利差があると金利の低い国から金利の高い国に資金が流れるのはわかる。
でも、その結果相場が動いてレートが変動したとしても、金利差はそのまま残っているのが普通だ。
金利差でレートが変動するならば、金利差がある限り資金が移動し続けなければおかしくはないだろうか。
2003年ごろから続いた円安期では、金利差は3%ぐらいが常時あったと思うのだが、一方的に円安になることはなく、円は120円ぐらいのレートをずっとつけていた。
金利差自体が原因で資金が移動するならば、1ドル120円のレートから、さらに円安に動くはずだ。

この理由をいろいろ考えていたが良くわからなかった。
ただ、金利差によって資金が移動することは確からしい。
日米の中央銀行が政策金利を変更すると相場が動く。
いろいろなスワップみたいな取引を組み合わせて、ここらへんの仕組みを説明しようとするのだが、どうもうまくいかない。

たとえば、アメリカで景気が良く、金利が上昇局面になったとする。
少し引き締めをかけるつもりで、FRBが政策金利を上げると日本から資金が流れてドル高になる。
金利が上がるということは、債券の価格が安くなる意味と同義だ。
日本からアメリカに投資するというのは、債券を買うことだから、金利上昇局面ということはそれが安くなり続ける話だ。
そうすると日本の投資家は損をすることになる。
これはおかしくないだろうか。

こういう疑問をずっと持ち続けていたのだが、最近氷解した。
つまり、金利差0なら購買力平価にレートは決まるとし、投資家は金利差がある場合利益を出せるまでレートが変更することを許容すると考えるわけだ。

例を作ってみよう。
一年物の金利差を3%とし、日本が1.0%でアメリカが4.0%とする。
購買力平価は1ドル100円だ。
インフレについては無視しておく。
日本で100円を投資すると、1年後101円になる。
現在のレートをxとして、日本からアメリカに100円投資すると、1年後100/x*1.04ドルになる。
つまり下記の式を満たすxを求めるわけだ。
100 / x * 1.04 * 100 = 101
この時、xは102.97ぐらいだ。
つまり今のレートが102.97円以下だと1年後100円まで円高になっても利益を出せることになる。
金利差3%が大体3円になるわけだ。

レート差としては小さいかもしれないが、1年という短期でみたからだ。
これで10年物の金利差が3%ならば、だいたい30円のレートの変化に耐えられることになる。

もちろん、10年という長期だと、インフレ率が問題になる。
10年後の購買力平価を考えるということは、10年間の実質金利差を考えるのとほぼ同じだ。
それらを考慮して、投資が行なわれる。

まとめると、日本からアメリカへの投資では、実質金利差分のレートだけ円安に振れても資金は流れる。
当たり前かも知れないが、私はこの認識がなかった。
この認識によってわかったことを、この後に書きたい。

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