異をとなえん |

バブルと覇権国とグローバリゼーション - ガラパゴス化は必然である(その13)

2011.05.12 Thu

19:34:21

えらくブログの記事をさぼってしまった。
東日本大震災もあって、自分自身の存在意義を考えてしまったこともあるのだが、本質的には怠け者なだけだ。
なんとか再開させたいと思う。

実際に書き始めてみると全然進まない。
頭は回転させていないと、どんどん考えられなくなってしまう。
さぼっている間にさびついてしまったようだ。
でも時々は休みも必要だ。
今まではその休みの期間であると考えて、気を取り直してブログの記事に取り掛かろう。

後掲示板の返事については明日書きます。

今まで「ガラパゴス化は必然である」の記事をいろいろと書いてきたが、その中で世界経済全体の発展に関するイメージが私なりにつかめてきた。
今回の記事では、そのイメージをモデル化させ、現在の世界がそのモデルのどこに位置付けられるかをはっきりさせる。
これは日本のガラパゴス化の意味の背景説明ともなる。
そして、次回では日本のガラパゴス化が世界経済の発展モデルの中で、どういう意味を持つかを記述する。

** バブルのメカニズム

まず、世界経済の発展モデルだが、やはりバブルの発生と崩壊の原因が説明できなければならない。
バブルの発生と崩壊は世界経済史の中でも大きな出来事に見えるし、世界の権力構造の変化にも密接に関わりあっている。
私はバブルの発生と崩壊の原因は技術革新の停止にあると仮定してみた。
技術革新の停止と言っても、完全に技術の進歩が停止するわけではなく、あくまで相対的なものである。
そして、技術革新も自動車や飛行機の発明のような重要だがそれ一つでは部分的なものではなく、個々の技術進歩は大きくなくても集めれば世界経済全体の発展を支える総体としての技術進歩と理解して欲しい。
技術革新の停止がなぜバブルの発生と崩壊を起こすのだろうか。

*** 総体としての技術革新の普及のモデル

人口一定で、今までになかった製品が、全体に伝播するモデルを考えてみる。
このようなモデルの普及率は一般にロジスティック曲線と呼ばれる形を取る。
(参照:ロジスティック式)
数式は無視して中にあるグラフを見て欲しい。
ロジスティック曲線は右に傾けたS字型の曲線であり、普及の初期は製品の購入者も少く、普及するスピードは遅い。
それがある時点を過ぎた所で、急激に普及率のスピードが上昇していく。
そして、普及率が飽和段階に入り、誰もが持っているような状況になると、へそ曲がりがようやく少しずつ買い始めるので、普及スピードは急激に遅くなってゆく。
戦後日本のテレビやビデオのような家電製品の普及は、このロジステック曲線にだいたい従がっていることが知られている。

上に述べたモデルを一つの製品ではなく、総体としての技術革新にも適用してみる。
戦後の日本であるならば、何もない着のみ着のまの生活から、住宅を持ち、自動車、テレビ、ビデオなどの製品が各家庭全てに普及するようなモデルである。
この普及率がロジスティック曲線のモデルに従うかどうかは難しい。
そもそも、総体としての技術革新の普及率の計算方法がわからない。
国内総生産などとは、また別の概念なので、うまく変換できない。
イメージとしては、飽和した時の一人当り国内総生産を上回る人間の総人口に占める割合が普及率のような捉え方だが、実際の計算は難しいだろう。
しかし、直感的に総体としての技術革新の普及率はロジスティック曲線モデルに従うとする。

また、このモデルの適用にはもう一つ技術進歩の問題がある。
最初の仮定では、技術進歩が停止したとしてモデルを考えていた。
けれども、戦後日本の経済成長では技術進歩が重要であったはずだ。
それを否定したモデルは適用しづらい。
しかし、これは普通の新製品の場合も一緒である。
初期には技術進歩が激しく、新しい機能の製品が次々と出るか、普及率が飽和した時点では技術進歩が停滞し、新製品は発売されなくなる。
つまり、技術革新の停滞が最終時点で起こるのは、ロジスティック曲線が適用できる普通の新製品の普及率のモデルと同じである。
だから、総体としての技術革新の普及のモデルが最終的には技術革新の停滞を仮定するのはおかしくない。

*** ロジスティック曲線モデル

それでは、総体としての技術の普及のモデルがロジスティック曲線になる意味を考えてみよう。
最初の普及の時期は試行錯誤の時期である。
技術革新がどの方向に向かうか、誰もまだはっきりとわかっていない。
だから、開発者はいろいろな技術を試し、新し物好きがしきりに新製品を買いながら、相互に影響しあって技術の本道を見定めてゆこうとする。
いろいろと試行錯誤の時期が終わると、技術は確立する。
その確立した技術の元で、規模の拡大を行ない普及期に入ってゆく。

つまり、技術革新が停滞することなく進んでいくならば、一つの技術が普及率の急上昇する局面に入ったとしても、また別の新しい技術が本道を見極めるための試行錯誤の時期に入っていくのではないだろうか。
逆に技術革新が停滞した場合、新技術の模索の期間はなくなる。
つまり、ロジスティック曲線の曲線の傾きが急激になる、普及率の上昇局面に入っていくことになる。

このように考えてくると、総体としての技術革新の普及のモデルは技術革新が停滞した時点で急激な普及期に入るロジスティック曲線ととらえることができる。
すると、それまでの普及率の曲線はずっと長く伸びている緩やかな直線と考えられる。

*** バブルの発生と崩壊

そして、いよいよバブルの話である。
技術革新が停滞することによって、急激な普及期に入った場合の金融の側面について考えてみる。
急激な普及期ということは、商品を生産するための設備投資が急増するということで、設備投資のための借金も急激に増大するはずだ。
同時に商品を消費するための借金も急激に増大する。
借金が急激に増大するということは、金利が上昇することを意味する。
しかし、貸し出し資金はそれほど増えない。
消費のために使ってしまう人が多いからだ。
結局、預金金利も上昇すると考えると、資金を持っている人の利益がもっとも大きくなり、さやを抜いている金融業はその次となる。

状況は普及率が半分というか、かなり前の所で変わってくる。
市場の規模が見えてくるので、設備投資が不要になる。
しかし、この時点では消費のためのローンは盛んなので、資金需要はまだ減らないだろう。

そして、ある時点で資金需要が極大を示し、減少傾向になってくる。
設備投資も減り始め、消費のためのローンの額が減り始めるからだ。
この時資金供給はむしろ増えている。
消費の飽和に達した人間がたくさんいるため余った資金が貯蓄されるからだ。

資金需要は減るのに、資金供給は増大する。
金融業としては資金が余るということだ。
今までとてつもなく儲かっていたのだから、資金を借りることをやめるような方向転換はできない。
投資先が見つかるまで、価格が安定的な資産を購入して一時的に寝かせておこうとする。
このときは、金融業全体がそう思うので、みんなが安定的な資産の購入を始めようとする。
資産価格は急激に上昇する。
一般的な多くの国の安定資産は不動産であり、その価格が上昇することになる。
資産価格の上昇は金融業に莫大な利益をもたらし、その利益の分贅沢な消費が増えてゆくので、需要はさらに拡大してゆく。
技術水準に見当ったレベルでの消費に留まらず、それ以上消費が増えてゆく。
これがバブルとなる。

バブルで重要なのは、この時期勝負すれば勝てるということだ。
勝ったり負けたりでなく、勝ち続けられるのだがら、全額勝負に行ける人間が一番儲けられる。
だから、段々と人々は強欲になり、幾らなんでもこれは無理と思うものまで買うことになる。

バブルは必然的に崩壊する。
限界を越えて上昇した資産価格によって、人々の消費は拡大してゆく。
それに連れて供給も増えていくが、投入できる生産要素にも限界がある。
限界を越えて普通のインフレが発生すれば、調整のために景気を冷やすしかない。
しかし、限界を越えて上昇した資産価格は止まっていることができない。
転売する時、利子分は稼げるとして投資しているからだ。
だから、上がり続けなければ損失が発生する。
それは資産の投売りを誘い、バブルは崩壊する。

資産価格が下降を開始して、その上昇をもとに生まれた消費が減少してゆく。
最終的には本来の技術水準にふさわしいレベルまで需要が減少した所で、需給が均衡する。
この後、新しく技術革新が始まってゆくことで、再度経済成長に復帰することになる。

以上が一国を限定として考えた、技術革新の停滞によるバブルの発生と崩壊のモデルである。
次に世界経済全体を考えて、理論を拡張してみる。

** 覇権国交代理論

世界経済全体にも技術革新の停滞によるバブルの発生と崩壊のメカニズムは存在している。
それは同時に覇権国の交代と結びついてきた。
このサイクルについて考えてみる。

*** 覇権国の誕生

初期状態として、技術が停滞し、消費が飽和状態に全ての国が落ち入っていると仮定する。
その中で一つの国が技術革新に成功すると、世界の経済のリーダーシップを握れる。

技術革新によって新規需要が生まれ、輸入が増大してゆく。
同時に新規に生みだされた製品は世界の他の国々でも珍重され、輸出も増大してゆく。
輸入輸出そろって拡大していくことで国際収支上の問題なく成長できる。
技術革新によって生み出された商品は希少なので、価値が高い。
他の国は高値で輸入することになる。
それだけの資金は、輸出入が均衡した状態だと普通の国にはない。
輸出する国からの借金に頼らざるを得なくなる。
産業技術の上と金融の上でのリーダーシップを取った国は、政治、軍事の面でもリーダーシップを取ることが多く覇権国と呼ばれることになる。

金融の面でのリーダーシップは政治的な影響によって成立した可能性もあるが、オランダは政治的に小国のままであったにも関らず、金融の面でのリーダーシップを握った。
金融と政治は直接な関係がない。
覇権国は政治軍事面での影響も大きいが、この理論の中では言及しない。

近代経済以降では、オランダ、イギリス、アメリカが覇権国だと言われている。
覇権国の交代の際には、上のような理由では説明できないケースが多いが、それについては後でもう一度考察してみる。

*** 二番手国でバブルが発生する理由

覇権国が技術革新を行ない、その技術を各国に伝播することによって、世界全体の経済成長が起こる。
世界経済全体の成長期だといっていい。
しかし、その後段々と経済がおかしくなってくる。
典型的な現象が、覇権国を追随してきた二番手国でバブルが発生し崩壊することだ。
その後、世界経済全体も不況に陥る。

二番手国でバブルが発生し崩壊するのは、前に述べたように技術革新が停滞するからである。
覇権国で技術革新が停滞することで、追随してきた国の中で一番技術水準が高く、一番技術革新の能力が高い国にバブルが発生し崩壊する。

なぜ覇権国ではバブルの崩壊による不況が発生しないのだろうか。
二番手国は自国のみのシステムの中で金融業が暴走しバブルが発生するのだが、覇権国の金融業は世界経済全体を相手にしている。
そのため、技術革新が停滞したとしても、二番手国よりかなり遅くバブルの発生崩壊現象が起こるはずだ。

二番手国より遅れた国は技術の伝播はまだ続いている。
新たに習得すべき技術による経済成長があるため、バブル現象は起きない。

二番手国のバブル現象といっても、イギリスに対してアメリカは既に技術的には追い抜いていたようにも見える。
自動車産業がイギリスより圧倒的に繁栄していたのは、その典型の気がする。
それなのに、覇権国での技術革新の停滞が影響するのは、二番手国のバブルが一国のみでの技術革新でなく、覇権国からの技術伝播による成長も見込んでいたからだ。
片一方が失われることで、相対的に技術革新が停滞し、バブルが発生した。

*** なぜ技術進歩は停滞するのか?

それでは、なぜ覇権国で技術進歩は停滞するのだろうか。
理由は二つ考えつく。

一つは、覇権国は世界経済全体の金融業を把握するので、金融業の位置付けが自国内で大きくなる。
成長段階での金融業は利益率が高いので人材も集めやすい。
相対的に製造業を中心とした技術開発分野がおろそかになり技術進歩が停滞する。

もう一つの理由は主要エネルギーの変更である。
オランダが風力、イギリスが石炭、アメリカが石油というのが、それら覇権国にとっての主要エネルギーだとしよう。
風力や石炭が時代遅れになることで、覇権国での成長が停滞する。
エネルギー効率は人間の効用に直接影響する。
通勤が30分だったのが、1時間かかるようになれば、なんかえらく損した気分になる。
ピンクの服が作れないので、赤の服で間に合わすのとは全然違う話だ。
エネルギー効率の遅れは、効用を下げ、消費を低下させる。
経済成長が停滞することによって、技術伝播を遅くさせる。
結果的に技術革新も遅れると言えるだろう。
石油危機以後のアメリカ経済も石油価格の上昇によって、経済がおかしくなっていった。

金融業が盛んになったから技術革新が停滞したというのは、どんな場合に適用できそうだが、現実とは違うようにも見える。
どちらが正しいかはよくわからない。
事実はどうあれ技術進歩は停滞し、成長は減速する。

*** 覇権国交代の実際

覇権国の技術革新が停滞したということで、世界全体の成長が低下していく。
ただし、これは明確ではない。
二番手国でバブルの発生崩壊が起こっても、世界経済自体は技術の普及による成長段階かもしれないからだ。
二番手国がアメリカのように規模が巨大な場合、世界経済自体も直ちに不況に突入していった。
アメリカが覇権国で日本が二番手国と考えた場合、日本のバブル崩壊は直接世界経済全体には影響を持たなかった。
世界経済全体ではまだ技術進歩の初期局面ということで、成長が続いていたからだ。

そう考えてくると、覇権国の交代はいろいろと難しくなる。
単純な理論では割り切れるものでないかもしれない。

オランダからイギリスへの覇権交代では、イギリスのバブル崩壊より前に、フランスもバブル崩壊が発生していた。
これはフランスも二番手国として、次期覇権国としての有力候補だったことを示すようにも見える。
また、覇権国交代の場合は秩序崩壊による戦争が発生した。
七年戦争や第二次世界大戦の勝敗は直接覇権国がどうなるかに影響を及ぼしている。
これも理論を難しくしている。

*** 一番最初にバブルの崩壊による不況に突入した国が次の覇権国になるのはなぜか?

それでも、覇権国が交代した場合、次期覇権国が一番最初にバブルによる不況に突入していたのはなぜだろうか。

理由は二つある。

一つは当たり前だが、一番最初にバブル現象を起こしたということは、技術水準と技術革新能力が一番高いからだ。
政治軍事的な能力はどうあれ、経済上のリーダーシップを取るためには、技術革新をリードしなければならない。
そのため、トップを取っていたということは他の国に対して有利となる。

もう一つは一番最初に不況に突入するので技術革新能力が磨かれる。
他の国では通常の方法による成長が可能なので、時間と能力を必要とする技術革新に力が注がれない。
覇権国は金融業による利益に目がくらんでいる。
それに対して二番手国では、技術革新に力を注ぐしかない。
二番手国が金融業で利益を上げるのは、覇権国による金融支配が強いのと二番手国は資産が急減しているので、うまくいかない。

もっとも技術的に先に進んでいる国がもっとも技術革新に力を注ぐのだから、技術面でリーダーシップを取る可能性が一番強い。
それが結局覇権国の道を開くのだろう。

アメリカの覇権国としての寿命が限界に近づいている。
しかし、日本が二番手国としてバブルの発生と崩壊を最初に経験したとしても、前の大恐慌の時とは全然違う形になっている。
その違いがどこから来るのかを、次に書いてみる。

** グローバリゼーションの本質

日本のバブル発生と崩壊がアメリカの覇権の交代を示す事件だとしても、前の覇権交代とは全然違っている。
イギリスのバブルの崩壊を示す南海泡沫事件は1720年に起こった。
オランダ連合東インド会社のアジアとの貿易額が最大だったのは、正に1720年代(「世界の歴史25巻アジアと欧米世界」p170)で、イギリスのバブル崩壊によってオランダの繁栄が終わったことを示している。

アメリカの大恐慌の場合は直ちに世界経済全体が不況に落ち入っていった。
日本のバブル崩壊では日本だけが不況に陥り、世界全体では歴史上かってないほどの成長を謳歌している。
この違いはどこから来るのだろうか。

*** なぜ日本のバブルが崩壊しても、世界経済は停滞に陥らなかったのか?

なぜ日本のバブルが崩壊しても、世界経済は停滞に陥らなかったのか。
その理由は三つ考えられる。

一つは規模の違いである、アメリカ経済の世界経済に占める割合と日本経済の世界経済に占める割合では比べものにならない。
アメリカ経済は当時世界のGDPの30%ぐらいを占めていたはずである。
それが不況に落ち入ることで世界全体も不況にならざるを得なかった。
それに対して日本のGDPは世界の中で10%ぐらいしかない。
日本が不況に陥るだけでは、世界全体を不況に導く力はなかった。

もう一つの理由がグローバリゼーションである。
新興諸国が世界経済に組み込まれることで、世界経済全体の規模が拡大した。
発展途上の国が多ければ、技術進歩停滞の影響が世界に広まるのも時間がかかる。

さらにもう一つ、エネルギー効率の問題がある。
オランダとイギリスの覇権交代の場合は後継エネルギーが明確なので、古いエネルギーを利用がしていることが、即技術革新の大幅な遅れをもたらした。
それに対してアメリカの覇権交代の場合、後継エネルギーは明確でない。
石油の次は判別しないのだが、石油が枯渇しそうだからということで、主要エネルギーの変更を図ろうとしている。
石油の価格上昇によって、生産性が停滞し成長も遅れたけれど、後継エネルギーがはっきりしない以上、アメリカが遅れ続けることもない。
だから、石油価格が下がればアメリカ経済は好調を取り戻す。
実際石油危機の1980年代アメリカ経済は不調だったが、石油価格が下がった1990年代アメリカ経済は好調になった。

三つの理由の中でも、グローバリゼーションによる規模の拡大が最も重要だと思う。
1990年ごろの先進国の人口は、アメリカ3億、EU3億、日本1億、その他1億で、8億人ぐらいだった。
それだけの人口しか、技術進歩の利益を享受できなかった。
ところがグローバリゼーションによって、世界人口60億のほとんどが生活水準を大幅に上げることが可能になった。
ロジスティック曲線の半分を越えたぐらいの普及率だったのが、いきなり曲線の傾きの急になる直前に戻されたようなものである。
中国の鉄鋼生産量が急激に増えていったように、旧世代の設備投資が急増していった。
そのローンを担当する金融業の利益が急増し、回り回って世界の金融業を支配しているアメリカの利益が巨大なり、世界は繁栄を続けた。

*** グローバリゼーションによる新興国の成長

国家の枠組みを取り払えば、平均的生活水準に到達を目指す人間が大量にいて、技術が確立しているならば、産業は発展し、金融業は儲かると簡単に言える。
しかし、世界が国家単位で分割されている以上、国際収支の均衡が成り立つグローバリゼーションのメカニズムがなくてはならない。
そのメカニズムを説明する。

グローバリゼーションは先進国以外の国が成長しない問題を解決し、新興国を世界経済の成長のメカニズムに参加させた。
アメリカが資本と経営と技術を提供し、新興国が単純労働力を提供するだけで製品を生み出すことが可能になったからだ。
その理由は「フラット化する世界(上)」に出てくる、インターネットの普及、コンテナシステム、共産主義圏の崩壊などと言っていい。

それらの技術革新が、多国籍企業の経営をスムーズにして新興国からの労働力だけの参加を可能にした。

かって、日本が明治維新のころの時代はそうでなかった。
「日本近代技術の形成」という名著の中で、日本の産業育成の困難が散々出てくるが、その理由は西洋から輸入した技術が日本でそのまま適応できなかったからだ。

西洋で発明された技術は西洋で利用できる資源に合わせて、技術が作られている。
綿花を使用した綿紡績にしても、鉄鉱石と石炭を使用した鉄鋼業にしても、自分たちで利用できる資源に合わせて技術ができているから、利用できる資源が変わると途端に不良品ばかりができるようになる。
日本の産業も最初は全然うまくいかない。
それを克服したのは、ある意味一から技術を開発したとも言える日本の技術者の努力の賜物があったからだ。
江戸時代の教育や商品経済の普及が日本に技術革新を開始できる能力が与えた。
残念ながら、他の新興国にはそれがずっとなかった。

スマイルカーブという言葉がある。
産業の中で、川上と川下の利益率が高くて、川中の利益率が低いというカーブだ。
川上は自然資源を取り込む部分、川下は消費者に売り込む部分、川中は部品を組み立てる部分だ。
川上が自然を相手にするので、入力はランダムであり、それに対応して、常に改良しながら製品を生み出していく。
川下は気まぐれな消費者を相手にしているので、その好みを瞬時に判断して対応していかねばならない。
川中の定まった入力を定まった出力に変換しているだけだ。
頭を使う必要はない。
それが利益率の低下を起こしている。

新興国がスマイルカーブの川中部分を担当するのは、それしかできる能力がないからだ。
ただ、かっては川中の部分だけを切り出すようなことはできなかったが、グローバリゼーションによって、それだけを担当することができるようになった。
このことによって、たとえ低賃金であっても新興国は成長できるようになったのだ。

*** 地球規模でのバブルの発生と崩壊

グローバリゼーションは技術革新の停滞によるバブルの発生と崩壊のメカニズムを壊したわけではない。
むしろ、より大きな規模でそれを実証するに過ぎない。
世界が単一の経済圏に組込まれることによって、技術革新が停滞していたとしても、普及率が半ばを過ぎるまでは経済の成長が続いていく。
世界全体に対して金利を取れるのだから、金融業の利益は極端に大きくなる。
実際にアメリカを中心とした繁栄は空前絶後のものと言って良かった。

しかし、グローバリゼーションの繁栄も長くは続かない。
世界経済人口の急激な拡大があったとしても、人口の半分が平均的な消費レベルに到達すれば、もう経済は下り局面だろう。
世界人口が60億とすれば、先進国で10億、中南米東南アジアで10億、中国インドで10億、それらの生活水準が平均に到達すればバブルが崩壊してもおかしくない。
実際リーマンショックを発端とした金融危機は、バブルの崩壊局面だと思う。

さらに、世界経済全体とは関係なく、現在の成長はアメリカが金融業による利益がアメリカ国民に流れ、それが新興国から製品を輸入することで成り立っている。
金融業による利益がアメリカの消費者に回らなくなれば、その関係は壊れる。

ITバブルは多国籍企業の利益が株価に反映され、その利益を消費することによる繁栄だった。
サブプライムバブルは過剰になった資本が資産に投入され、その価格の上昇を消費することによる繁栄だった。
今、利益を生み出すものはなくなりつつある。
誰が負担するのかわからないことで、発行できる国債の金をばらまくことでアメリカ国民は消費できている。
その金は中国から輸入する製品の支払いにあてられ、中国は受け取った金で元高にならないように、ドルを買い、そしてアメリカ国債を買っている。
なんのことはない。
中国がローンをつけて製品を売っているだけだ。
こんな関係は長く続かない。

以上が私が基本的に持っている世界経済のイメージである。
次回はこのイメージと日本のガラパゴス化を結びつけていきたい。

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