異をとなえん |

購買力平価でのGDPについて - ガラパゴス化は必然である(その8)

2010.12.25 Sat

02:37:47

「途上国化する日本」を立読みしたのだが、ちょうど「ガラパゴス化は必然である」と真逆の主張みたいで興味を持って読めた。

本の中で購買力平価での一人当たりGDPを考えると、日本はすでにトップレベルからずっと遅れているという指摘があった。
続:ガラパゴス化は必然である」では、日本の一人当りGDPが実質的に世界でも極めて高いとしていたが、これはおかしいのだろうか。

** 購買力平価での一人当たりGDPは日本は低く出やすい

まず、購買力平価での一人当たりGDPは先進国には不利に、発展途上国には有利に働く。
中国ではミルクに最近有害な物資が混ぜられて売られ、多くの赤ん坊の患者を出しだ。
そのために、日本製のミルクならば信頼がおけるということで、日本製のミルクの売行きが好調になった。
さらには、日本製のミルクの空き缶を集めている人がいるという噂が出はじめた。
ミルクの空き缶に中国製のミルクを集めて売ろうという魂胆らしい。
この場合、日本製のミルクと中国製のミルクとが、同じ製品だから同一価格と考えるのは明らかにおかしいだろう。
日本製の品質の高さは価格差分の価値があると考えるべきだ。

つまり、先進国の製品は一般的に発展途上国の製品に対して、品質が高く、安全性に気を配っている。
その分価格が高くなるわけだが、先進国の人間は安全には替えられないと考えているわけだ。
日本は品質の高さでは、世界でも他に抜きんでていると思う。
その分どうしても、製品の価格は高くなる。
結果、どうしても購買力平価での一人当りGDPは低めに出る。

それではアメリカはどうだろうか。
アメリカは購買力平価での一人当りGDPが単純な為替ベースでの一人当りGDPより高めに出る傾向がある。
これはアメリカが、購買力平価を計算する際に対象となる、基礎的な物資の価格が極めて安いことから起きている。

前に「ウォルマートに呑みこまれる世界」感想でも述べたが、アメリカでは商品の品質を落とし、価格を落とす傾向がずっと続いている。
本来なら、品質と価格のトレードオフが成立し、価格は高いけれど品質は高い商品、価格が安くて品質も低い商品も共存できるはずである。
もちろん、アメリカでは貧乏人も多いので価格を最優先に選ぶ客層が厚い。
そのため、価格が安い商品は売行きがいいのだが、そこにウォルマートが中国で大量生産することによって更に価格を下げることに成功している。
結果、ウォルマートが価格と品質が両方低い製品で独占を形成するので、価格が高く品質が高い商品が生き延びていくことができない。
ニューヨークのような大都市では、それなりの商品選択の自由があるのだろうけれど、それ以外の都市では全然うまくいかない。
アメリカが購買力平価の一人当りGDPが高い国となるわけだ。

つまり、購買力平価の一人当りGDPで比較するより、為替換算の一人当りGDPで比較した方がより正しい。
為替換算は変動が激しい問題はあるが、何年かの平均を取ることによって、それは解決できる。

** 一人当りGDPが低い場合の問題は何か?

次に購買力平価での一人当りGDPが低いとしたら、いやもう本質的には購買力平価は関係ない。
他の国に比べて一人当りGDPが低いとしたら、日本は他の国をうらやましく思うはずである。
足りない何かがあるのだから。
それを日本でも利用できるように努力していけばいい。
そうすれば、経済は成長できるはずだ。

しかし、現時点では足りない何かがない。
アメリカこそがガラパゴス化した国である」に述べた、アメリカと日本の需要の明白な差である、先進医療、広い住宅、大型自動車は日本が目指すべきものかと言うとかなり疑問である。
アメリカと同じ道を簡単に歩むことができない所に、日本の低成長の原因がある。
その問題を解決しないで、一人当りGDPで日本は発展途上国化しつつあると言っても意味がない。

2011/01/21
GDPをGNPと間違って記述していたので、全て修正

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コメント

258

GNPではなく、GDPではないでしょうか?
もし、GNPであるとすれば、最後に公的に算出されたのが前世紀ですので、かなり前のデータだと思います。
ちなみに、購買力平価は、財にしろサービスにしろ、品質に差が出やすいものは、算定の対象にされておりません(もしくは加重されてます)ので、中国の粉ミルクの価格がそのまま反映されていることはないと思います。

259 Re: GNPではなく

コメントありがとうございます。

> GNPではなく、GDPではないでしょうか?

そうです。
ミスでした。

> ちなみに、購買力平価は、財にしろサービスにしろ、品質に差が出やすいものは、算定の対象にされておりません(もしくは加重されてます)ので、中国の粉ミルクの価格がそのまま反映されていることはないと思います。

中国製の粉ミルクと日本製の粉ミルクは普通の意味での品質に差はないと考えています。
粉ミルクには詳しくないのですが、普通に作っていたら、同じような成分だと思うのです。
だから、粉ミルクは、むしろ品質に差が出にくい財に見えます。

けれども、さらに上の観点から見た品質では差があるわけです。
命に危険性のある紛い物を意図的に入れるなどというのは普通の国では起こりません。
だから、購買力平価では同じ財として処理するしかないと思います。

いや、もしかしたら、日中の粉ミルクでは普通の意味でも品質に差があるのかもしれませんが、ないと仮定して書いています。
ここらへんは、具体的に知っているわけではないので、単なる推測です。

結局、主張したいのは、信頼できる売り手の製品の価格は高くなってもおかしくないが、購買力平価でそれを反映させることはできないということです。

それでは。

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