異をとなえん |

ユーロシステムの問題点

2010.12.02 Thu

00:12:40

ユーロが急落している。
ここにきてユーロというシステムの問題が噴出しているようだ。
ユーロのシステムの問題は、不景気の場合に金融政策も財政政策も実行できないことだ。
これについて考察してみたい。

** 金融政策が実行できない

金融政策は金利を下げることで、資金を供給し、経済活動を活発化させる。
今までは、EU各国の国債を担保にして、ヨーロッパ中央銀行(以下ECB)は銀行に直接資金を供給していた。
これは国債が必ず償還されることを前提にしている。
けれども、ギリシャの危機が発生して以降、EU内の国債は必ず償還されるという前提が怪しくなってきた。
そうすると、国債を担保にとって、銀行に金を貸すという行為が難しくなる。
かといって、担保を取らずに銀行に金を貸すなどできるわけがない。
その銀行が倒産した時に、一体誰がその損失を負担するのかが大問題になってしまう。

国債を買い上げるのも同じことだ。
EU内の国家が破綻した場合、ECBがその国の国債を持っていると、当然損失が発生する。
その場合、いったい誰がその損失の責任を負うかが大問題となってしまう。
ギリシャが破綻して、ECBがギリシャ国債で損失を出せば、それはEUの他の国がギリシャに援助したことと同じになる。
単なる中央銀行がEU内の政治家を差し置いて、そのような責任を取れるわけがない。

つまり、ECBは金融政策で金利を下げたくとも、金を貸せる所がないというジレンマが発生してしまう。
金利を下げて経済活動を活発化させる目的は達成できないことになる。

** 財政政策も実行できない

財政政策も同じような理由で、実行できない。
EUの政府には、いざとなったら必ず買い支えてくれる中央銀行がない。
借金をし過ぎれば、今のギリシャみたいに借金ができなくなり、破綻に追い込まれる。
EUの中の国が援助することによって、借り換えはできたが、同時に借金を踏み倒すこともできなくなった。
つまり、EU内で緊急融資を受ける前だろうと後だろうと、借金を膨らますことを停止し、できるだけ財政支出を削減する方向に向かわなえければならない、ということだ。
この結果、現在財政赤字が大きくない国でも、財政支出を減らす必要がある。
財政支出を膨らまして大赤字になり、国債の借り換えに支障をきたせば、EUの支援を受けるために実行したくない政策も実行する必要があるからだ。
アイルランドも法人税の引き上げをしたくなくて、交渉が難航したと聞く。

現在の所、ギリシャやアイルランドのように破綻した国に対しては、残りの国が緊急融資をすることで救っている。
けれども、今後破綻する国が続出すれば、融資金額は上昇していくのに、助けることができる国は減っていく。

** ユーロシステムの行く末は

結局ユーロシステム全体として考えると、ユーロシステムは金融政策も財政政策も実行できない状況に立ちいたっていることになる。
全体として見れば、外国からの資金に依存しているわけでもないのに、なんら対応できないことはやはり問題だろう。
リーマンショック直後には財政政策はできたけれど、それは緊急でまだ余裕があったからだ。
もっとも、今の状況を考えると、あの時緊急に支出などするのではなかった、と考えている国もあるような気がする。

ユーロシステムが金融政策も財政政策も実行できないということは、各国は財政支出をひたすら削減するしかない状況に追い込まれていることになる。
そして、財政支出を削減すれば、需要が減ることでGNPは縮小し、税収は減る。
またもや、赤字が拡大するから、さらに財政支出を削減しなければならない。
悪循環は続き、悲惨な状況になる。
アジア通貨危機を思わせる状況だが、さらに悲惨なのは、アジア通貨危機の時ほどユーロのレートは下がらないことだろう。
EUの中核であるドイツはユーロのレートが下がれば、輸出が伸びてゆく。
それによって、ユーロは下がり続けず、ある程度の所で止まる可能性が高い。

景気は悪化し続けるのに、カンフル注射もままならない。
なんというか二進も三進もならない、状況といっていいだろう。

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