異をとなえん |

続:ガラパゴス化は必然である

2010.11.17 Wed

17:10:37

前回の記事は日本の経済が内需の拡大を目指すのが当然という内容だった。
今回の記事では、内需の拡大を目指すのが、なぜガラパゴス化になるのを説明したい。
その前にガラパゴス化を定義しておくと、ある国において独自の新商品が普及し、その他の国には広まっていかない現象とする。

経常収支の黒字国は内需の拡大を目指す必要があると言っても、新商品を開発する必要など、ない国がほとんどだ。
たとえば中国がある。
中国は世界一の経常収支黒字国だが、ガラパゴス化などしてはいない。
世界で普通に流通している商品を購入している。
その理由は簡単で、中国の一人当りGNPが低く、先進国が消費している商品を買いたくて仕方がないからだ。

日本は違う。
日本は世界の中でも一人当りGNPが上位の国であり、他の国から買いたいと思う商品がない。
けれども内需を拡大する必要があるのだから、新商品を必死に開発していかなくてはならない。
その結果、日本生まれの独自商品が多くなっている。

** なぜ一人当りGNPが世界一でないのに新商品の開発が必要なのか?

しかし、なぜ他の国から買いたい商品がないのだろうか。
日本の一人当りGNPは高いけれど世界一になったことはない。
他の一人当りGNPが高い国の商品を輸入することはできないのだろうか。

まず、日本が他の国より所得が高いことを確認しておこう。
バブル以後の円高で突発的に一人当りGNPが上昇し、日本は世界2位にまでなった。
ただ、これは円高による数字のマジックに過ぎず、実際は10位前後とみられる。
近年は18位とかになっているが、これも円安による数字のマジックで、それほど低くはない。
G7の国と大体同じと思われる。

G7の国より、はっきり一人当りGNPが高い国も存在する。
これらはノルウェーやカタールのような産油国である。
リヒテンシュタインのように、人口が少なくても金融業が盛んで一人当りGNPが高い国もある。
これらの国の商品を日本では消費できない。

なぜならば、資源や利息・配当で所得が高くなっている国では、新商品というより、既存の商品の高品質版で十分だからだ。
商品本来の価値というよりも、価格が高いこと自体が価値となっている。
宝石装飾品のような見栄消費だ。
そういう商品が売れていく。

日本ではバブル崩壊以後、利息・配当のような収入が激減した。
だから、見栄による消費では売れない。
労働の対価として価値がある商品を消費するしかない。
日本よりはっきり一人当りGNPが高い国では、そういう商品が少ない。

それではG7の国の商品は参考にならないのだろうか。
これも難しい。
その理由は日本のジニ係数がG7の他の国に比べて低く、所得の格差が小さくなっているためである。
所得の格差が大きいということは、上位の階層の収入が金利配当収入に依存していることを示している。
所得の低い層の収入は日本の一人当り所得より低く、その消費から生まれる商品を日本人は欲しいと思わない。
逆に所得の高い層の消費は、上でも述べたように労働の対価としての商品では高すぎるのである。

日本より一人当りGNPが高くて、労働の対価としての所得で日本を上回っているのはアメリカだけではないだろうか。
実際、iPhoneのようなアメリカの新商品は日本でも流行っている。
だから、日本もアメリカの真似をしていれば、ガラパゴス化などありえない。
しかし、それはうまくいかない。
その理由は、実はアメリカこそガラパゴス化の最も進んだ国であり、他の国が容易に真似し得ない国であるからだ

なぜアメリカこそが最もガラパゴス化した国かというのは、実は一番書きたい内容なのだが、それなりに長くなるので、その前に現在の話の結論をつけておきたい。

今までのことから、日本は労働の対価としての所得で、世界の他の国に比べてもっとも高い国だと思われる。
そのため日本が成長するには、新商品の開発が必須となり、他の国に比べて独自化することになる。

** 日本の新商品が世界に普及しない理由

日本が独自の新商品開発をするにしても、その新商品が世界に普及すれば、ガラパゴス化などと言われないはずである。
しかし、それらの商品が世界に普及しないのには次のような理由がある。

まず、一番大きい理由は、当たり前だが、独自の新商品を開発するのは、新規の需要を喚起するためである。
それほど所得がない国では既存の商品を買うので精一杯で、新規の商品を買う余裕がない。
簡単に普及する道理がない。
そして日本は積極的に普及しようとする理由がない。
経常収支黒字国である日本は、どうしても内需を中心に攻めていく。
手間暇かけてまで、輸出を伸ばそうとしない。
機能を減らして、輸出をするのは、そもそも新商品を開発した理由と根本的に矛盾する。

日本のデジタルテレビ放送の方式が南米で採用された。
しかし、現地で実際に売れているテレビは韓国の物が多いらしい。
これだけで理解すると、日本がデジタルテレビ放送の方式を採用してもらうための営業努力はムダになったことになる。
実際には、放送用の機器などが売れることを考えると、損ではないと思うが。

つまり、日本の商品が世界標準となっても、得になる(輸出が増える)可能性は少なく、損になる(営業努力が無に帰する)可能性の方が大きい。
そのため、どうしてもガラパゴス化しやすくなる。

次回、アメリカこそがガラパゴス化した国である、という記事を書きます。

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