異をとなえん |

ガラパゴス化は必然である

2010.11.06 Sat

00:07:43

日本のガラパゴス化を批判している記事は多い。
しかし、私にはほとんどの記事が経済の理屈からおかしいと感じられる。

「日本の特異性」は世界に売れないもそういう意見だが、反対意見を書いてみた。

引用開始

最近の日本のアニメや携帯電話等の日本ブランドの工業製品に感じるのは、「洗練」「複雑」「脆さ」だ。洗練されてはいるが、複雑すぎて、使用環境の変化に脆い。日本の環境には最適化されているが、生活環境の異なる外国では現実的ではない特徴がテンコ盛りである。

一方で世界で売れている製品の特徴は、「大味」「単純」「頑強」ではないだろうか。そして安いこと。ドラマは筋が単純でわかりやすく楽しいほどよい。工業製品も機能が単純でわかりやすく安いほうが売れる。

今の日本人はそういう単純でわかりやすくて廉価な商品が作れなくなってしまっている。しかし、それが商売の原点ではないのか。「日本のユニークさ」を世界に売り込もうというのは、正攻法で市場競争力を失ってしまった負け犬の逃げ口上ではないのか。
引用終了

日本の製品は日本の環境に最適化されているので、世界に売れなくなっているという意見は正しいのかもしれない。
私は海外の状況には詳しくないので、その意見の妥当性はよくわからない。
しかし、売れないことは全く問題ないのだ。
なぜならば、日本の経常収支がずっと黒字だからだ。
日本の貿易収支はだいたい10兆円の黒字であり、所得収支の黒字も同じくらい出ている。
日本の経常収支の黒字は中国やドイツよりは少ないけれど、それに次ぐものであって中国やドイツのように批判されてもおかしくない。
よっぽど特殊な事情がないかぎり、黒字であっても、赤字であっても、あまり極端に大きいのは経済にとってよくない。
日本の黒字が大きいのも、内需が成長していないために輸入が伸びないからであって、日本経済の問題の一つなのだ。
そう言えば、ここらへんの話は前の円高の頃アメリカに激しく言われたのだが、最近は中国が矢面に立っているので出てこなくなっているが、本質は変わっていない。

もちろん、日本企業にとって商品が外国に売れないより売れた方がいいことは確かだ。
ただ、外国に売るよりも日本国内で売ることに必死になった方がいい。
日本商品が外国に売れれば円高になる公算が高く、採算が悪化し外国に売ろうとする努力が無に帰してしまう。
為替相場は経常収支で決まらないという意見もあるが、長期的に見れば効いてくるのは確かだ。
だから、日本企業は国内で売ることを目指して、できるだけ日本の環境に最適化した付加価値の高い製品を発売できるようにすべきなのだ。

少子高齢化の影響で日本の内需は伸びないから、外国市場で成長するしかないという意見もある。
確かに企業の製品によっては、日本で価格を上げづらいものもあるだろう。
ビールみたいな食品企業なんかは、その対象かもしれない。
そういう場合、食品のおいしさを生かした設計のような部分を外国に展開して、成長を図るのは企業にとって正しい選択だ。
ただ、輸出とかはあまりしないほうがいい。
今まで述べてきたように、円高に巻き込まれて採算が悪化する危険性があるからだ。
輸出入に関係ない商品は、企業としては大事でも、日本経済という枠組みでは重要ではないから、これらは別の話となる。

少子高齢化によって日本の労働人口が減少したら、輸出も減少する。
また国内でも必要な製品を作れなくなるので輸入が増大する。
その時のことを考えて、今から外向きになれという意見もある。
はっきり言って、その意見は未来を先読みしすぎている。
まず、経常収支がバランスした方が望ましいということは、貿易収支は10兆円以上の赤字になることが必要なのだ。
所得収支の黒字は日本の対外純資産によって決まるから、経常収支の赤字によってそれが減らない限りずっと増え続ける。
だから、10兆円以上の所得収支の黒字は当分変わらない。
それを打ち消すためには、貿易収支の10兆円以上の赤字が必要で、それはつまり現状の貿易で20兆円輸出が減るか、20兆円輸入が増えなくてはいけない話なのだ。
そして、少子高齢化というのは、お年寄が貯金で暮らすようなものだから、海外資産の取り崩しもやむを得ないと言えるだろう。
そうすると、さらに10兆円貿易収支の赤字が増えても仕方がない。
つまり、少子高齢化によって日本の貿易収支が30兆円悪化しても10年ぐらいは問題ない。
その時に対策を打っても十分間に合う。

さらに貿易収支が現状よりも30兆円も悪化することかという疑問もある。
日本の輸出金額は現在60兆円ぐらいだが、外国の消費者に直接売る消費財は自動車くらいで、この輸出金額がだいたい10兆円だ。
残りはほとんどが資本財と部品になっている。
これらは単純でも廉価でもないけれど、品質が重要なこともあり、非常に価格競争力が強い。
たとえば、有名どころだが水族館の水槽などがある。
2007年のニューズウィークの「世界が注目する日本の中小企業100社」の特集で最初の会社が日プラという水槽を作っている会社だ。
透明度を維持したまま水槽を大きくするには、特殊な技能が必要らしくて世界市場を支配している。
世界の市場は小さくてわざわざ他の企業は参入しようとするとは思えない。
はっきり言って水族館は他の企業に声をかけもしないだろう。
仕様を説明するだけでも手間がかかる。
こういう企業の市場支配力は非常に強い。

日本には普通の人が存在も知らない、ニッチだが市場を支配している製品が山ほどあるのだ。
これらの商品の競争力は簡単には覆らない。
日本の家業として商品を作り続けていく伝統を考えると、半永久的に市場を支配できるのではないかと思うほどだ。
こういう商品の積み重ねで日本の輸出は成り立っている。

そして、これらの商品のそもそもの発端は、「日本の特異性」なのだ。
水族館の水槽も、日本で水族館が多く、かつ大きくしたいという市場の要望から生まれたのだろう。
日本の特異性が世界で売れないことはない。
売れている製品もたくさんある。
日本は安くて単純な商品は作れなくなっているかもしれない。
安い製品では労働コストが出ないからだ。
けれども、高い労働コストをかけても売れている商品があれば、全く問題はない。

「ガラパゴス化は必然である」という表題までたどりつけなかったのでこの項続きます。

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