異をとなえん |

なぜデフレは続くのか?

2010.11.03 Wed

15:37:26

昨日の記事の中の日米の物価指数の推移は面白い。
日米の物価指数が同じような形で下がっている。
バブル崩壊が大元の原因だとしても他の条件は異なっているはずだ。
それらの条件による変化が見えないのは、消費者物価指数の低下の直接の原因が同じだからだろう。
消費者物価指数の傾きは消費者の節約のスピードだ。
人間が節約モードに入ったとき、消費の減退のスピードは大体似通うということだ。

バブル崩壊による資産価格の大幅な減少で消費者は支出を減らす必要に迫られる。
けれども、人は急に消費を減らすことができない。
惰性で今までと同じ物を買い、同じサービスを享受しようとする。
使っていない物も、いつかは使う時のことを考えて、維持費のことも考えずそのまま持っていく。
もちろん、仕事を解雇されて収入が激減した場合、消費はいきなり減るがそれは特別だ。
だから需要が急減することはない。
ゆっくりと消費者はムダな消費の削減を始める

倹約モードで最初に減らすのは、新規の消費だ。
自分の意思がないと消費できない物・サービスがまず減らされる。
観光なんかは一番減りやすい。
ただ、これはムダというわけではない。
次に、本当の意味でムダな消費の削減を始める。
習慣で買っているけれども、使っていない物の購入をやめるようなことだ。

この消費の減退はゆっくり起こるので需要は急減しない。
しかし、節約モードでは需要は伸びない、もしくは減少するから、どうしても市場の競争はきつくなる。
価格は上昇せず、むしろ下落圧力がかかってくる。
それが今回のグラフに見る消費者物価指数のゆっくりした低下の意味となる。

** デフレを止める方法

この需要の低下はなかなか止まることがない。
需要の低下による供給の減少が新たな所得減少をもたらし、再度の需要低下を招くからだ。
デフレスパイラルは資産価格の低下が止まり、消費のムダを省いた後の均衡状態が回復して、ようやく止まる。
このデフレスパイラルは止めることも早めることもできない。

デフレスパイラルを止めることは、消費がそのまま続くということだが、それは所得に見当っていない。
サラ金に手を出して破綻する人間が止まないのと同じように、収入以上に消費していればいずれは破綻する。
資産効果による所得の上昇を前提として生まれた消費は、資産価格が減少すればいずれは減らすしかない。
たいていの人間はそこまでバカではないから、破綻する前に節約を開始する。
だから資産価格の低下が続くかぎり、消費の減少は続く。

それではデフレスパイラルの速度を早めて、均衡状態を一気に回復することはできないのだろうか。
デフレスパイラルを早めるということは需要が一気に減るということだ。
大恐慌のような金融危機を伴なった経済の破綻が起これば、需要は一気に減少するだろうが、それが望ましいとは到底言えない。
そういう意味ではなく、GNPの大幅な減少を伴なわない形で節約モードを早く過ごす方法はないだろうか。

それは簡単にはいかない。
節約自体が頭を使った工夫なのだから、見つけるにはそれなりの時間がかかる。
本質的にムダな消費を節約することは正しい。
人の役に立たないことで、資源やエネルギーを消費するのは地球に優しくない。
消費額が同じでも効用は改善しているはずだから、節約は本質的に創造的なプロセスなのだ。
たとえば、家の周りの街灯は人が近づくと明かりがつくようになった。
ムダなエネルギーを使わずに効用は同じままだ。
けれども、電力需要は減少することになる。

** デフレの存在意義

消費の節約モードがある意味での創造の過程であるならば、実際の経済でもっと頻繁に起こってもいいように見える。
けれどもデフレが発生するほどの消費の減退はそれほど起こっていない。
理由は資産価格の長きに渡るほどの低下は簡単には起こらないからだ。
通常の不況では、ある程度の節約をしただけで均衡状態を回復する。
均衡状態が回復すれば、普通に所得は伸び、消費が回復していくので、デフレには突入しない。

大恐慌の時のような、年20%にも及ぶ物価の下落は、システム自体が揺らぐ暴力的な需要の減少から、もたらされる。
その過程においては創造的なプロセスなどみじんもなく、ただ目の前にある消費を減らすしかない。
しかし、現在の日本のような年1%ぐらいの物価の下落は、それほど厳しくはない。
生活のムダを省いてゆく創造的なプロセスと受け止めることもできる。
この記事を書く前は、デフレのような状況からは直ぐに抜け出したいと考えていた。
しかし、この記事を書く過程で、デフレは苦しいけれども、自分にとっての本当のムダは何かを考察するいい機会のようにも思えてきた。

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