異をとなえん |

リフレ政策とデフレのぶつかる戦線

2010.11.02 Tue

13:12:21

気になっているグラフが二つある。
一つはコモディティ(商品)価格の上昇率、もう一つは消費者物価の推移だ。

コモディティ価格の上昇率は、騰がっているのは金(ゴールド)だけじゃない ヒタヒタ押し寄せるインフレにあるグラフだ。
リンク先の記事ではインフレの脅威を心配しているが、私にはむしろコモディティが高騰していても全然反応しない消費者物価指数の方がこわい。

もう一つのグラフは[金融]インフレ懸念はバランスシート調整と共に消えゆくにある、元ネタはクルーグマンによるアメリカと日本の消費者物価指数の推移のグラフだ。
ここを見ると日本のバブル崩壊時と同じようにアメリカの消費者物価指数の上昇率は一貫して下がり続けている。

コモディティ価格はこの1年上昇している。
グラフで見るかぎり一番上昇率の低いトウモロコシでも14%の上昇だ。
最大の上昇率の小麦にいたっては74%も上昇している。
けれども、その上昇率が反映されるべき消費者物価指数はほとんど上がっていない。
1.1%と止まっているといっていい。
コモディティ価格の上昇がインフレにつながるならば、消費者物価に反映されなくてはならないはずだ。
小麦にしても、なんにしても、買っている人間はそのまま持っているわけではない。
最終的には食べる人たちに買ってもらうことで、投資家は利益を得る。
川上での価格上昇が川下に波及しないのは需要が弱いからだ。
価格が上がれば需要が減少して売れなくなるのがわかっているから、消費者物価は上がらない。
コモディティ価格の上昇が投機によるもので、本当の意味での需給を反映していなければ、結局はコモディティ価格は下げに転じるしかないと思う。

為替市場の値動きも同じだ。
リフレ政策によって、ドルの価値は下落すると思われ、為替市場ではドル安が続いている。
ドルの価値が下落するということは購買力平価でドルが安くなることだから、為替市場の長期的な動きとはあうはずだ。
しかし、本当にドルの価値は下落しているのだろうか。
たとえば、ドル円相場で円の価格が上昇する。
それは日本からアメリカへの輸出品価格が上昇するということで、普通に考えれば日本からアメリカへの輸出数量は減少する。
同時にアメリカから日本への輸出品価格は低下し、アメリカから日本への輸出数量は増大する。
つまり、アメリカから見た場合、為替での円価格の上昇に対して、それに反発する力を生み出していることになる。
円価格の上昇がそのままドルの価値の下落につながるとしたら、日本からアメリカへの輸出品の価格上昇はそのままインフレとして受け入れられ数量は減らないことが要求される。
逆にアメリカから日本への輸出はインフレが発生しているので価格が上昇して数量の増加が起こらないとなるわけだ。

コモディティ価格の上昇にしても、為替相場の価格上昇にしても、そこで発生した価格上昇が最終的に消費者に受け入れられなければインフレにはならないはずだ。
でも現在のアメリカの消費者に価格上昇を受け入れる余地があるのだろうか。
失業率は高止まりし、賃金も上昇していない。
需要は弱いままだ。
ここで価格が上昇したら、さらに需要が減るだけだろう。
結局、需要が弱いままだから消費者物価が低迷しているだけという理屈になる。

リフレ政策というか、FRBの金融緩和政策によってアメリカでは大量に資金がばらまかれている。
その資金はコモディティ市場、為替相場、新興国の市場に流れこんで市場の活況を生み出している。
でも、この価格上昇は投機による価格上昇だ。
リフレ政策によって投入されている資金は貸し出されている金だ。
いつかは返さなくてはいけない。
どんなに金利が安くても、ある程度はつく。
行って来いの投機だから、価格上昇後それを買ってくれる人間がいないかぎり、崩壊してしまう。
コモディティ市場はどんなに買っても、最後にそれを消費してくれる買い手がいない限りどうしようもない。
もし、コモディティ市場の高騰がインフレの道だとしたら、それは最終的に消費者が受け入れる必要がある。
つまり、コモディティ市場の価格上昇が消費者物価指数の上昇へと結びつかなくなてはならない。
でも、最終消費者はそれを受け入れるのだろうか。
少くとも推移を見る限りでは、物価の上昇はどんどん低下し続けている。
コモディティ市場の価格上昇を受け入れている兆候はまるで見えない。
最終市場の価格下落傾向と商品市場の価格上昇は共存しない。
どちらかが勝って、流れをおし潰すだろう。

コモディティ価格の上昇と消費者物価指数の低迷はリフレ政策と現実経済がぶつかっている境界だ。
どちらが勝つかで、今後の経済は決まる。
しかし、私にはコモディティ価格の上昇がそのまま受け入れられるとは到底思えない。
海の温度を人間の力で温めているように見える。
人間がどんなに努力しても、海の温度はほとんど関係ない。
海は自然の摂理に従って変化するだけだ。
消費者物価も経済の大きな流れで動いている。
消費者物価指数の低迷が続けば、それ以外の価格も最終的には従うしかない。

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