異をとなえん |

続々:なぜ、中国は今回の衝突事件でかくも怒っているのか?

2010.10.01 Fri

23:52:16

今までの記事の考察を元に、今後の日中関係、尖閣諸島について考察してみる。
その前に、今回の衝突事件が起こった原因は日本、中国どちらにあるのだろうか。
日本が暗黙のルールを無視して漁船を逮捕したのが始まりだったのか。
それとも、中国の漁船が意図的に巡視船に衝突させたのが始まりだったのか。
この質問は、日中戦争の始まりの弾丸の発射が日本軍、中国軍、あるいは中国共産党の謀略だったのかという問いみたいに、あまり意味のない質問に思える。

日本の海上保安庁が逮捕したのは、自分たちの命に危険を感じたことによる怒りの現れで普通の事態に見える。
その取り調べについても、政治は最初介在したとは思えない。
つまり、普通の現場判断だと起訴されるのが当然なのだろう。
じゃあ、中国が仕掛けたかと言うと微妙な所だ。
中国内部の強硬派が穏健派にゆさぶりをかけるために、わざと事件を引き起こしたという考えはあまりにもまだるっこしい。
謀略ならば、銃をぶっぱなすとか、尖閣諸島に上陸するとか、もっと確実な方法を狙うように見える。
やはり、最近の中国の高度成長による意識の高揚が、普通の漁船の船長にも波及しただけだろう。
GNP世界第二の大国になったのだから、第三位の国に譲る必要はないというわけだ。
問題なのは、それだけのことで日中関係ががたがたになってしまうことだろう。

今後も些細な衝突は常にあり続ける。
中国は大国意識を増大させるとともに、ますます傲慢になりつつある。
世界で最後に残った共産主義国意識は疎外感を募らせるだろうし、自分たちが包囲されている意識を強くする。
その結果、ますます他のごろつき国家と仲良くなっている。
キューバはともかくとして、北朝鮮やスーダンは仲良くなっていい国だとは思えない。
共産主義だって建前は人権を大事にする国のはずだ。
自国の普通の国民を飢え、殺すような国を、自分たちを支持するそれだけの理由で仲良くするのは、倫理観が狂ってる。
そのような中国と日本は仲良くできるわけがない。

そう考えると、今回の衝突は少なくとも日本の未来にとっては良かったことだ。
レアアースの暗黙の輸出停止措置は中国のリスクをはっきりさせた。
代替製品の開発には拍車がかかるし、中国以外の地域でのレアアースの開発も再開する。
中国人観光客の急なキャンセルや日本人での中国での逮捕は、日中での対立が始まった時、中国への依存がいかに危険かを示している。
民間企業は中国への過度な依存を避けるようにいろいろな手を打っていくだろう。
それらは中国の成長を妨げ、たぶん日本の成長も妨げるだろうが、日本が大きな損失を出す危険を減らしてくれる。

それでは、日中関係でも尖閣諸島に関してはどうなるだろうか。
実の所,私は楽観している。
どちらかと言うと、中国政府は対立状況を抑え込むように動くのではないか。

今までの記事では、私は現在の中国の政府が軍を中心とした強硬派を抑えきれないから、衝突事件が起こったと説明してきた。
それなのに、なぜ対立が鎮静化するのだろうか。
それは現在の尖閣諸島での対立があまりにも、先鋭化し過ぎて危険だからだ。
船長の逮捕に対して、首相の温家宝は解放できない場合にあらゆる責任を日本が取るべきだと言った。
これは絶対に解放するとの明言であり、逆に言えば解放できなければ自分の責任を取らざるを得ない表現とも言える。
今回日本政府は船長を解放した。
けれども次同じような事態が起これば、やはり首を賭けて日本と交渉しなくてはならない必要が出てくる。
幾らなんでもこれはきつすぎる。

では中国政府として、どうしたらいいか。
日本が漁船を捕獲するような事態を生じさせなければいい。
中国政府の監視船が領海沿いをずっと航行しているという、報道がなされている。

引用開始

中国漁船・尖閣領海内接触:中国「監視船常駐化」 尖閣付近、日本は退去を要求

 沖縄県・尖閣諸島付近で中国漁船が海上保安庁巡視船に衝突した事件で、仙谷由人官房長官は27
日午後の記者会見で、24日に中国の漁業監視船2隻が尖閣付近を航行しているのを確認し、海上保
安庁の巡視船6隻が警戒していると明らかにした。一方、中国人船長釈放決定前に外務省が首相官邸
と協議していたことが判明した。国会は28日に参院外交防衛委員会、30日に菅直人首相出席のも
と衆院予算委員会で衝突事件などを巡り議論する。

 仙谷長官によると、外務省はすでに4回、中国側に海域からの退去を要求したが、27日早朝時点
ではなお航行中という。中国の漁業専門紙・中国漁業報によると、中国の漁業行政当局が自国漁船保
護として尖閣諸島近海でのパトロールを常態化する方針を表明。現在、漁業監視船2隻が中国漁船を
護衛している。
引用終了

日本への圧力をかけるためだというのが普通の解釈だが、同時に漁船が尖閣諸島の領海に入りこまないような措置とも見える。
中国漁船も日中の監視船が睨みあっているような状況では、領海を越えにくいだろう。
たぶん、中国政府も中国漁船に対して問題事を起こさないように、領海を越えてはいけない指示は出しているのではないかと思う。
しかし、漁民は逮捕さえされなければ、平気で越えようとするだろうし、それを中国政府は止められない。
けれども、中国の監視船が領海沿いに張り付いているような状況なら、さすがに領海を越えにくい。
もちろん、海上保安庁の巡視船と中国の監視船の小競り合いが起こる可能性もあるのだが、どちらも武器の使用を自制することを期待すれば大きな対立は起こらないだろう。

もちろん日本の弱腰が中国を増長させる可能性はある。
けれども、日本にとって本当に脅威なのは尖閣諸島が取られることではない。
日本を油断させておいて、日本全体を一気に攻撃してくることだ。
だから、一番怖いのは今のように些細なことでぶつかり合うのではなく、中国が猫をかぶっていることが一番怖い。
中国が今回の事件で対立をエスカレートさせて、尖閣諸島を強引に奪いにくることはあるだろう。
負ける可能性もある。
ただ、尖閣諸島を取られるのは日本の核武装を世界的に認めさせる絶好の理由になる。
災い転じて福となす、という考え方だ。

尖閣諸島のような小さい無人島は日本中国どちらの領土であっても、大した問題ではないという意見がある。
私もそう思う。
だけど、どちらの国もそれなりの理由があって主権を主張しているのだから、引くわけにはいかない。
上のレベルでの調停が必要になる。
その上のレベルでの調停は国際司法裁判所しかないと思うのだが、中国は認めないだろう。
日本は裁定がどうであろうども結論を認められるだろうが、中国は無謬である共産主義イデオロギーによって拒否する。
つまり、日本と中国の間には民主主義と共産主義という根本的なイデオロギーの差があるのだ。
その差異を無視した、アジア共同体などという世迷い言は今回の事件でなくなるだろう。
それだけでも、今回の事件はいいことだった。

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