異をとなえん |

続:なぜ、中国は今回の衝突事件でかくも怒っているのか?

2010.09.30 Thu

17:16:34

前回に続いて、尖閣漁船衝突事件の中国側の状況についてもう少しふれておきたい。
特に日本との対立を推進しているとみられる軍についてだ。
今の中国軍は戦前の日本軍に似ている。
そして、中国全体の状況も戦前の日本に似ている気がする。

中国軍が旧日本軍に似ている所は何だろうか。
箇条書きしてみる。

・兵力を削減している
・列強の軍事近代化に追いつかなくてはいけないという意識を強く持つ
・軍事費を拡大している

・退役した後の待遇に恵まれていない
・経済的に恵まれていない感じを強く持っている

・正統的なイデオロギー
・社会的な地位が高く、独立した力を持つ
・政府・外交官たちの影響が弱い(党の軍隊と天皇の軍隊)

・社会の矛盾、貧乏を解決したい意識を強く持つ(日本だけ?)
・一致団結しているように見えて派閥抗争が激しい(日本だけ?)
・出先の部隊の暴走(満州事変、東シナ海での軍艦の行動)

中国軍は陸軍中心で世界最大の人員を誇った軍隊だが、近代化とともに兵力を削減している。
予算自体は急速に成長しているが退役している人は多いのだ。
日本軍が大正時代に世界的な軍縮モードで、人員を大幅に減らしたのに、軍の機械化のために予算としてはあまり変わらなかったのに似ている。

中国軍が急成長しているからといって、軍人自体は相対的に恵まれていない。
中国の金持ちは国家と結びついた蓄財システムだ。
コネを生かした商売をしているとか、賄賂をもらうのでなければ、あまり儲からない。
現役軍人は国防重視であれば金銭的報酬は少ないだろう。
けれども、軍人がそのまま放り出されても、民間の競争社会に簡単に適応できるわけがない。
退役軍人も軍とコネを生かした商売でもできなければ、どうしようもない。
つまり、商売っけがない普通の軍人は高度成長している中で相対的に貧しく社会の中で疎外されている気分になりがちだ。
日本の大正軍縮時代、軍服姿で歩くのが恥ずかしく感じたなどと同じような気持ちではないだろうか。

中国では農民の不平不満から暴動に近い自体が頻発しているが、退役した軍人の参加もあると聞く。
元軍人は武器の扱いはお手のものだから、火薬類を使えば騒乱は大きくなる。

戦前の日本では民主主義や資本主義が公式なイデオロギーとして認められてはいなかった。
公式なイデオロギーは天皇絶対的な考えであり、現実にあたってそれをどう適用するか判然としなかったが、否定することもできなかった。
大正時代は実質的に民主主義と資本主義で社会を動かしていたけれど、昭和に入り不況に突入すると、この二つのイデオロギーに否定的な意見が多くなる。
民主主義を否定した、共産主義、国粋主義が力を持つ。
公式なイデオロギーでないため、民主主義、資本主義の力が弱く、自分たちの立場が守りきれなくなる。
中国の現在もそれに近い。
公式の建前は共産主義だが、それがどういう意味を持つのがほとんどわからなくなりつつある。
実際に社会を動かしているのは、社会主義市場経済という、資本主義と何が違うのと言いたくなるものだ。
今は高度成長が続いているから、かろうじて社会はまとまりを持っている。
けれども不況になれば、社会を統合する意識は崩壊するだろう。
社会主義市場経済という、まやかしのイデオロギーは力を失い、正統的な共産主義イデオロギーの復活が強く叫ばれることになりやすい。
軍隊は民間との接点がないだけ、現実離れした政策を表明しがちだ。

軍は国防を中心とした政策の中で、必ずしも政府の外交関係と関係ない政策を持っているように見える。
たとえば、軍にとって資源は戦争遂行のために必要であり、採算に関係なく確保しようとする。
中国が現在世界の多くの開発途上国で資源確保のための援助を行なっているは、その現れではないだろうか。
普通の外交関係より、そういった資源の意識が強いので、世界の中で評判の悪い独裁国家でも平気で援助できる。
北朝鮮との外交も国防的にアメリカ軍との前線をできるだけ遠ざけておくために、北朝鮮を援助する。
これらの状況は日本軍が満洲で政府の抑止を無視して活動していることに近い。
はっきりしたことは言えないが、中国外務省が軍を抑えきれない状態が生じているのではないだろうか。

社会的な地位は高くエリートとして遇されているけれども、金銭的に恵まれていないのは、非常にフラストレーションがたまることになる。
しかし、軍事費自体はずっと拡張し続けているので戦争のためのおもちゃには事欠かない。
世界一の大国といった意識は海外への進出を加速させる。
その中で領海法といった大義名分があれば、軍人にとって軍事的手段を取りたくなるのを止める要素がなくなる。
中国首脳部も外交戦略や経済的な問題から日本と対立するのを避けたくとも、大義名分は軍にあるのだから、止めることができない。

満州事変の時、朝鮮軍司令官である林銑十郎は独断で国境を越え、満洲に入った。
この行為をその時代の新聞は彼を越境将軍として称賛し、政府は止めることができなくなった。
日本に拿捕された漁船の船長が英雄として扱われているのを見ると、現在の中国にもそのような社会の雰囲気を強く感じる。
政府の首脳部が信念を持っていなければ、世論に迎合する。
世論に迎合した結果が、今のような日本への対立状況を生み出している。

日本がどういう対応を取るかについては更に次回に回す。

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