異をとなえん |

日本人の内向き指向は問題か?

2010.09.03 Fri

04:56:57

日本人の内向き指向が問題にされている。
アメリカへの留学生が減少し、新入社員が海外勤務を嫌う。
それに対して、韓国では国内市場が小さいことからグローバル化を目指し積極的に海外に進出している。
結果日本企業は海外で負け続けシェアを失い、韓国は海外市場に広く進出し市場を支配している。
だから、日本は停滞し、韓国は成長しているという理屈である。

世間的には納得されている理屈みたいなのだが、私には納得がいかない。
まず問題なのは、日本人の所得は高いから、韓国より海外への競争力が落ちることは仕方がないことだからである。
日本人の一人当りGDPが世界2位から20位より落ちていると批判されているが、90年代初頭の円高と2000年代中ごろの円安が投機的であると考えれば、世界10位ぐらいの先進国の平均ぐらいであることは変わっていない。
ドイツ、フランス、イタリアと大体せっているぐらいだろう。
それに対して韓国の一人当りGDPは最近2万ドルぐらいで、大体日本の半分である。
だから、単純な価格競争をすれば日本は絶対に勝てない。
それでも、日本人が韓国人より一人当りGDPが高いのは、韓国人ができない部分で戦い、勝っているからである。
どんな部分が強いかと言えば、まずより高度な技術を必要とする部分では日本は明らかに韓国より優っている。
資本財や素材・部品を作っている部分だ。
これらを韓国に輸出し、韓国はそれらを利用して、大量に安価というか手頃な価格の製品を作って世界に売っている。
つまり技術は少し劣るけれども、日本より低い賃金で働く労働者を生かせれば韓国は強いわけだ。
もちろん、最近では組み立ては中国に移転していることが多い。
でも、こういう部分こそ韓国が本当に強い部分なのだ。

日本人が目指すべきはどこかと言うと、世界最先端の技術を持った人々へのサービス業なのだ。
日本の製造業の中核は世界最先端の技術を持って、依然として世界で高い競争力を持っている。
世界最先端の技術を持った人々は日本人なのだから、当然サービスも日本語が要求される。
高所得を持った人々に独占的な技能、この場合は日本語、を提供しているのだから、それらの労働者も高所得となる。
日本が外国人労働者の移動を禁じているからという面もあるが、サービスの質を高めるには日本語が必須だから、日本人が有利であることは間違いない。
海外へ行くというのは、ほぼ全ての日本人が持っている最も重要な技能、日本語能力を使わないのだから、非常に不利な立場を目指すことになる。
そういう意味で日本人が内向き思考になっているのは、当然としか思えない。

もちろん、昔日本がまだ遅れていた頃は海外指向にも意義があった。
海外で情報を集め、日本にそれを伝達することは、非常に価値があった。
海外留学が盛んな時代の話だ。
でも、海外からの情報が魅力的だった時代は終わった。
よく知りもしないで断言しているが、それでもマスコミ情報ではそのように感じる。

海外から日本に送る魅力的な情報がなければ、日本人は日本で新しいサービスを生み出すしかない。
現在日本が停滞しているのは、それがそんなにうまく行っていないからだが、だからと言って不利な場所で働いてもしかたがない。
アメリカなどで新規なサービス事業をしようとしても英語を使うだけ不利だ。
その事業に普遍性があれば日本で開始しても成功する。
日本では成功しないけれど、アメリカなら成功する事業を思いついたとしたら、そもそも日本人かという話になる。

でも、海外に工場などを移転する場合のことを考えると、外向き指向が必要だと考える人がいるかもしれない。
韓国が新興国に積極的に進出しているのに、日本は内向きのままだから競争に負けたという話だ。
これはある意味事実なのだが、だからと言って日本が外向きになれば勝てると言うとそうでもない。
韓国が勝つには理由がある。

海外で働く人材に必要な能力は何だろう。
まず、語学だ。
本国と海外の出先との間のコミュニケーションを取る能力だ。
そして、ほとんどこれに尽きると言っていい。
語学も現地の言葉と本国の言葉、そして世界の共通言語の英語が話せることが望ましい。
日本だと外資系企業と日本の出先を繋ぐ人々は英語屋と批判される感じもあるが、必要なことは言うまでもない。
同時に語学を身につけるにはそれほど能力が必要かと言うとそうでもない。
訓練すればある意味誰でもでき、そして高度になれば付加価値が上がるかというとそうでもない。
つまり、日本人からすると単純な語学屋は付加価値が低すぎる。
高い給料が取れない、敬遠するという話になる。

それに対して韓国の場合は変わってくる。
多国籍企業と発展途上国の間に介在して中間の賃金で働くというのが、韓国人にはちょうどいいのだ。
語学というのはそれほど特化した能力でないので身につけやすい。
そして、先進国の人間は生活環境の劣る発展途上国で働きたくないので、競争力を持てる。
発展途上国から英語などを学ぶ人間も出てくるけれど、教育システムが劣っているからそれほど多くはない。
韓国のような中間所得の国には理想的となる。
だから、韓国では英語教育や中国語教育が盛んなのだ。

サムスンはある意味典型的な中間介在企業なのだ。
日本製品を研究し、日本の手を必要としない部分を抜き出して、それを海外の賃金の安い国で実現すれば差益を稼げることになる。
韓国の賃金が安い時には、海外に発注せず韓国内で組み立ても行なっていた。
日本勢はこれに追いつけない。
海外に仕事を出すという部分で手間取ったのも事実だが、海外でのインターフェイスを行なう人材の賃金格差が最終的には響いてくる。
サムスンは新興国に仕事をしないで一年遊んでもいいなどという研修をしているが、こんなことができるのも賃金が安いからだ。
サムスンの賃金は韓国の他の企業に比べてずっと高いと言われるが、トータルで考えてみるとまだ安いのだと思う。
成績が悪いと早期に退職させるようなシステム全体を考えてということだ。

サムスンは日本語ができるという特殊技能労働者、ほとんど韓国と台湾にしかなかった労働者によって、日本から情報、資本財、素材・部品を手に入れることができた。
これは他の国には持ち得なかった有利な条件だ。
そして、日本から代替できる工程さえあれば、賃金の安さによって成功が約束された。
韓国の所得が向上していくと、そう単純に行かないので、海外に進出していき、インターフェイスを担当することで発展している。

つまり、先進国は先端企業が海外から金を稼ぎ、他の産業はそれにサービスをすることで、全体として高所得を実現している。
それに対して、中国のような低所得の国では、その低賃金を生かした組み立て産業を中心に発展している。
それでは、韓国のような先進国にもなれず、かと言って中国に張り合うには賃金が高すぎる国はどうするのか。
韓国が選んだのは、先進国と発展途上国のインターフェイスになる道である。
単純化し過ぎているかもしれないが、そんなに間違っているとも思えない。

日本は韓国と競争するためには、所得が低い部分では争えない。
円安局面、日本の賃金が定常的に下がっている場合には世界市場で争えても、それは日本国内の景気が世界に比べて悪い時だ。
日本の景気が良くなれば、たぶん円高を伴っているだろうけれど、世界市場で韓国と争えなくなる。
日本が本格的に成長するには、内向き指向で国内市場を開拓するしかない。

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