異をとなえん |

円高は得に決まっている

2010.09.01 Wed

01:17:01

最近円が世界の通貨に対して上昇している。
ドルに対しては85円を越え、ユーロに対しては106円台と過去最高のレベルに近い。
輸出企業を中心に利益が出なくなると円高不況の文字が飛び交い、マスコミが騒がしい。
しかし、本当に円高は日本にとって不利なのだろうか。
普通に考えたら円高によって、日本はより安い価格で必要な製品を輸入できるようになる。
輸出産業は輸入するために輸出しているのだから、それは絶対に望ましいはずだ。
それなのに、なぜ円高は問題なのか。
そして、輸入企業は利益が増えメリットがあるというレベルの話を越え、本質的に円高が日本にとって有利な理由を述べたい。

円高が批判されるのは、輸出企業が採算の悪化によって海外に移転し、雇用が減ってしまうからだ。
海外に工場等が移動することにより、働いていた従業員が今までの仕事ができなくなるのは確かだ。
けれども、円高による輸入価格の低下によって、輸出で失った以上の需要が国内で生まれるはずだ。
経済の仕組みはそうなっている。

インフレを恐れてデフレを呼んでしまう日本。

引用開始

いまだに「円高にもメリットがある」と言っている人は、工場やスーパーの跡地を見に行った方が良いでしょう。ガラ〜ンとした空間が、全国のあちこちに広がっている。2006年には120あたりだったドル円が84を割りましたから、日本は4年で3割も通貨高になった。「円高は日本が評価されている証拠」などと理屈を述べている間にも、「なるべくお金は使わない方が良い」という感情が街の隅々にまで浸透してゆき、消費はまったく冴えない状態です。
引用終了

円高によって失う輸出需要はすぐわかる。
今まで存在していたものが失われていくのだから、日本にとっての損は明白だ。
それに対して、円高によって発生する新しい需要はよくわからない。
茫漠として目につかない。
輸入企業が得をすると言っても、デフレが強い日本の状況では直ぐ輸入価格を下げるしかないかもしれない。
それでは誰も得する者がいないように見える。
でも、そんなことはない。
円高による輸入価格の低下をそのまま最終的な商品に転嫁すれば、価格が下がって消費者は絶対に得をする。
価格が下がれば需要は増え、価格が上がれば需要は減るというのは、経済学でほほ常に成り立つ市場の法則だ。
今までよりも安い価格で同じ商品が手に入るのだから消費者の財布は豊かになる。
そうなれば消費は必ず増えていく。

景気が悪いからデフレになるのであって、デフレだから景気が悪いのではない。
商品サービスの価格が低下することによって、必ず需要は増えていく。
リフレ派主張のインフレになれば、今の価格では買えなくなるから商品を買うというのは悪い冗談としか思えない。
商品の価格が上がれば普通は購入量を減らす。
それなのにインフレが促進するというのは、原油が輸入されなくなるような供給がよほど制限されている経済でしかありえない。
今の日本の状況にはほど遠い。

価格が低下したことによって既存の商品の需要は増えるはずだし、新しい商品の需要も生まれてくる。
実際1985年からの円高局面でも、1994年からの円高局面でも、日本経済は成長していた。
日本は人口が減少しているから、少子高齢化だから、需要が大きくならないなんて、デタラメに過ぎない。
人の欲望は膨らんでいく。
今程度の人口減少であれば十分需要は拡大していく。

円高が問題だとしたら、投機による一時的な価格上昇の場合だけだろう。
確かに規模の小さい国においては、投機によって価格が激しく上昇し、その結果国民が贅沢に暮すようになり、そして最後に投機資本が一気に抜け出して危機が発生することはありえる。
しかし、日本の場合は条件が違いすぎる。
日本の経済規模は非常に大きく、投機によって為替相場を動かすことは困難だ。
実際今の為替相場を見る限り、ドル円相場はリーマンショックの時に円が底値をつけてから着実に切り上がっている。
リーマンショック後の一時的な円の急騰を除けば、大きく円が動いたとは言えないだろう。
そして、投機によって相場が動いているならば、アメリカの金利が安くなっていることで世界への投資が促進されるはずだ。
それは世界的なドル安を意味する。
けれども、ドルが安くなっているのは日本円だけといっていい。
投機によって資金が動いているのではなく、投機をやめているので本国に資金が還流しているのだ。
日本円がドルに対して高くなっているのは、日本から世界に対して投資されていた資金が還流しているから高くなっているのが妥当だと思う。
投機によって相場が動いているのでなければ、円高は自然な流れだ。
それに合わせて産業構造を変革していくしかない。

また、アルゼンチンの自国通貨高とは状況が違いすぎる。

参照:今の円高はアルゼンチンのペソ危機と状況が似ている 輸出競争力なき通貨高を甘く見てはいけない

アルゼンチンの場合は固定為替相場で、自国通貨を高く保っていたのは、自国の為替介入だった。
この状況で国際収支が悪化し続ければ、最終的に為替を支えきれなくなるのは当たり前だ。
はっきり言って固定為替相場の問題であって、今の日本の為替相場と関係がなさ過ぎる。

余談になるけれど、日本も戦後長いこと1ドル360円という固定相場だった。
でも一度だって為替危機などに遭遇しなかった。
国際収支が赤字になることは何度もあった。
でもそうなると、日本政府はきちんと経済を引き締めた。
そうすることによって、国際収支は黒字を回復した。
だから一度も問題を起こさなかったのだ。
なぜ多くの国で、貿易収支が赤字になったら経済の引き締め措置を取る智恵がないのか不思議でしかたがない。

それでは、なぜ自国通貨高が自国にとって有利であっても、各国は自国通貨安政策を望むのだろうか。
最大の理由は国内需要が減少局面だと、自国通貨高による需要拡大効果が全く見えないことにある。
アメリカを例にして考えてみよう。
理屈としては、1ドル85円である今より、1ドル100円の方が消費需要は伸びるはずだ。
しかし、バブル崩壊による需要の低下はその効果を打ち消してしまう。
それでも、1ドル85円だと需要は5%減少で、1ドル100円だと10%減少のような差はあるはずだけれど、目に見えない需要低下より輸出産業の不景気の方がずっと重大に見える。
そして、ある意味アメリカのように国内の経済規模が貿易に比べてずっと大きければ、ある意味今のような話は机上の空論なのだ。
アメリカ単に国内の状況に合わせて経済政策を打っているだけで、為替相場の変動による効果は大きくはない。
これは日本経済についても同じことだ。
日本経済の貿易依存度も15%ぐらいとアメリカと同じぐらい低い。
だから基本は日本国内の状況に合わせて経済政策を実行すればいい。

政府に対して小手先の対応ではなく、根本的に円高に対応して欲しい意見が出ている。
根本的な対応は生産性の低い部分を海外に移転して、生産性の高い産業を育てるしかない。
どうすれば、そうなるかと言えば円が高くなるのをそのまま放置しておくことだ。
そうすれば自然に産業が移転していくことになる。
円のレートが高すぎるから、本来なら生産性の高い移転していなくてもいい工場が移転してしまうと心配する人がいるかもしれない。
しかし、日本は輸出が多すぎる。
日本が世界に持っている膨大な資産を考えるならば、貿易収支はマイナスになっている方がいい。
自動車産業の輸出分が丸々なくなるぐらいで、ようやく均衡するのが日本経済だ。
そうなった方がいい。
将来はそうなるとしても、今は早すぎるという意見もありそうだが、景気が良くなれば自然にそうなっていく。
苦しくとも合わせていくしかないというのが私の意見だ。

製造業を失うことで日本が没落過程に入ったという意見も出そうだが、アメリカが製造業を放置した後で没落過程になったとしても、50年以上かかっている。
日本もそれぐらいかかる。
盛者必衰はこの世の習いだ。
日本も従っていくしかない。

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