異をとなえん |

次期覇権国はなぜ長期不況に突入するのだろか?

2010.05.01 Sat

15:59:18

風邪がようやく引いて頭が動くようになった感じだ。
本を書くぞと言っても、なかなか進まない。
逆に別のことを書きたくなってしまう。
そんな訳で頭に浮んだことをまとめてみた。

覇権国が覇権を握る前に長期不況に突入するのは、なぜだろうか。
イギリスの南海泡沫事件やアメリカの大恐慌は、なぜ必要だったのだろうか。
なぜ不況が起こったかはわからないが、覇権を握るために長期不況が必要だった理由はわかる。
それは長期不況が生産性を改善させ、覇権国になるための基礎を築くからだ。

物が売れなくなり、不況になると、社会はそれを改善するために必死になる。
物的生産性を上げ、コストを下げて、販売価格を下げる。
あるいは、品質や機能を向上させて、お得感を作り出す。
つまり、本質的な意味での生産性を上げて、物やサービスを売れるようにするのだ。

次期覇権国が覇権を迎える前の長期不況は、その生産性の向上を促す鞭となる。
それまでは、その時の覇権国に追随した量的拡張が生産性向上の最大の要因となっている。
覇権国で生み出した、新技術、新商品を取り入れて、普及すれば生産性が向上し、成長していく。
明治維新において、西洋からの新技術が伝播して、日本中に普及していったように、普及するだけで生産性は向上する。
本質的な意味での新しい何かを生み出す必要はない。
もちろん、この過程でも独自に生まれた新商品はあるし、質的な生産性の向上もあるのだが、大部分は量的な普及だろうということで単純化しておく。

次期覇権国が覇権を握る前というのは、生産性が世界の最先端に追いついて、量的な普及がもう難しくなった時点だ。
そのままの状態では、物が動かず、経済が停滞する。
エントロピーの飽和状態と似ている。
それを変革するのは新しいエネルギー源の創出であり、経済であるならば新技術の発明となる。
新技術が普及していくことによって、経済は活況を呈し成長を再開することになる。

つまり、次期覇権国が覇権を握る前に長期不況に陥いるのは、今までの量的な発展から質的な発展に移行するためだ。
あるいは、長期不況の時期に生み出した質的発展が世界に普及している間だけ覇権国は覇権を握っていられるのかもしれない。
アメリカが大恐慌の時期に生み出した技術のネタは多い。
ナイロンの発明に見る石油化学産業、統計機械から生まれたコンピューター産業など数限りない。
その発明の量的拡大や普及のみがアメリカの戦後の発展の全てとは言い難いかもしれないが、大きな役割を果たしたとも言える。

アメリカを覇権国に押し上げた原点が石油文明だとするならば、大恐慌による技術的発展は必ずしもそれに対応していない。
他の国で起こっても構わなかったように見える。
そういう意味で、長期的不況によって生まれた質的発展がその覇権国の期間を決めるとは言い難い。
むしろアメリカの場合は、石油文明によって世界に覇を唱える生産性の向上が与えられ、その向上分によって生まれた余剰を消費するための需要を長期的不況で生み出したと言える。

ジャズやハリウッド映画の本格的な世界への普及も大恐慌の時代だ。
大恐慌が社会の全般的な改良を促したから、その向上を感知して世界に普及した。

振り返って見るとクールジャパンという現象も、日本がバブル崩壊後の長い不況に入ってから起こっている。
アニメマンガゲームといった文化的な部分は不況とあまり関係がないかもしれない。
しかし、コンビニエンスストアや宅配便の普及は、やはり長期的不況によって促された気がする。
今の人々が日本的な便利さと言う細々とした改良も、この不況の時代からだ。
納豆についている醤油が注ぎやすいように、出っ張りや切れ線が入ったのはこの不況の時代の気がする。
正確には覚えていないので、錯覚かもしれないが。

だから私にはパラダイス鎖国などと、日本だけが独自に発展していると言う意見は間違っているとしか思えない。
日本で便利だと思う事項は、やはり世界に普及していくはずだ。
日本式思いやりは世界に通じるなどと言う話ではなく、単純に世界の最先端を走っているから、そこで成功を収めるものは世界にも普及するという話だ。

日本が世界の最先端かどうかは疑問を持つ人がいるだろう。
かって、世界一位に近かった一人当りGNPも急落しているのだから、その考えは過去のものと言うわけだ。
しかし、単純なビッグマック指数で考えてみると、日本は世界一なのだ。
単純なビッグマック指数というのは、ビッグマック一個を手に入れるために必要な労働時間を比較する話だ。
ビッグマック指数 - Wikipediaによると日本でビッグマック一個を手に入れるために必要な労働時間は10分で、世界で一番低い。
アメリカが11分だ。
単純すぎるかもしれないが、世界の最先端に近いことはそれだけで言えると思う。

もう一度図式的に考えてみよう。
次期覇権国はエネルギー効率を改善することによって、世界の最先端に立つ。
イギリスが石炭をエネルギーにしたことによって、アメリカが石油をエネルギーにしたことによって、エネルギー効率を改善したようにだ。
エネルギー効率が改善すれば、供給力は増えていく。
しかし、その供給量に見当った需要はまだ生まれない。
人々は単純な量的発展が永遠に続くと思うが、それだけでは飽和状態に達して、結局長期停滞を生み出す。
不況が長期になるのは、今まで述べたように生産性の拡大が質的な変革だからだ。
長期停滞は、だから生産性に見当った消費を生み出すための産みの苦しみなのだ。
自転車競技でトップ目が風圧に苦しむように、覇権国になる国もその風圧に耐えなければトップで走ることはできない。
その風圧に耐えて、他の国々を引っ張っていけるようになれば、堂々たるトップということになる。

以上が覇権国が長期不況に見まわれる理由だ。
なお、覇権国という言葉を使ったが、これは次世代産業のリーダー国が結果的に軍事的、政治的覇権を握る事が多いということだろう。
国際情勢が緊迫化しないならば、特に覇権という感じは発現しないのかもしれない。
その国で発展した産業が他の国に次々に普及していく感じでリーダーを取る国のことを指し示すとして理解して欲しい。

参照:覇権国交代の理論 - 「内向の世界帝国 日本の時代がやってくる」

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