異をとなえん |

日本の科学技術のレベルは落ちているのか?

2010.03.30 Tue

02:49:31

日本の科学論文生産数が減少しているという記事(「グラフで見る日本の科学研究の後退」)を読んで衝撃を受けた。
「日本の2005-2009の論文生産数は1999-2003の水準より減少」していると言うのだ。
私は日本の科学のレベルは上がっているという印象を持っていたので、どうしてかなと疑問を持った。
記事を読んだ限りでは、よくわからなかったので検索して見ると、「ついに日本のサイエンスの「老化」が始まった?:相対的のみならず、絶対的な生産性の低下という事実が示すもの(追記あり)」という、より分析してある記事を見つけた。

その中では、原因を次のように予測している。

引用開始

その時の議論を踏まえるに、やはり「日本のサイエンスの現場で論文を書く研究者が減り、論文を書かない研究者が増えてきた結果として、総論文数自体が頭打ちになっている」と見るのが妥当なのだと僕は睨んでおります。その原因はここまでのデータからでは全くわかりませんが、雑用の増加や大学教員の絶対数の減少による一人当たりの教育義務の増加といった事情によって、論文を「書ける」研究者が減っているということも大きな要因になっているのではないかとも勘繰れます。
引用終了

ただ、これには納得がいかない。
その記事の中にもあるように研究者は純増している。
予算も研究費はたいして変わっていない。

科学技術予算の見方(1)を参照

引用開始

 このうち一般会計の科学技術振興費は、財務省によって、それに含まれる事業が限定され、政府予算のうち政策的経費と呼ばれる政策的にメリハリをつける経費の中で、唯一、張り(ハリ)の対象となって、最近の「ゼロ・シーリング予算」の中でも、毎年、1%程度ずつ増加しています。その資金規模は、2001年度予算の1兆1,000億円から、2008年度では1兆3,600億円となっています。(その他の科学技術関係経費は、減少することがありますから、科学技術関係経費の全体額も増減します。実際、2005〜2007年度の3年間は、科学技術関係経費は、前年に比べて減少することが続きました。)
引用終了

論文の生産するのが人間である以上、研究者が増えれば生産数も増加するのが普通である。
それなのに減ったのは、純粋に能力がないからという可能性もあるけれど、むしろ論文数がそれほど重要視されなくなったからではないだろうか。
2005-2009の間、中国の科学論文数は急増しているが、質は悪いという意見をよく見る。
日本も、もし論文数が重要ならば、質の悪い論文を量産できたはずだ。

では、なぜ論文数が減少したのか?
最大の要因は国立大学の独立法人化に伴ない、研究者の評価基準が変わったせいではないだろうか。

そのブログがリンクしている記事に次のような物があった。

日本人ノーベル賞受賞に見る日本の大学の研究環境の悪さ

そこを見ると、評価項目が次のようになっている。
引用開始

 どういう評価項目があるか、というと、研究分野では、(1)国の科学研究費(科研費)をはじめとする研究費総額が多いか少ないか、(2)国や民間企業との共同研究をしているかどうか、(3)国や地方自治体などの審議会の委員になっているかどうか、(4)世界や日本の学会の役員になっているか、招待講演を年間何回行っているか、あるいは学会、研究会といった集まりを主宰したことがあるか、等々といった項目にそれぞれ点数が付けられ、その総点と上司の判断を加えて、教員各自の評価がなされるわけである。
引用終了

この中では、民間企業との共同研究が大きいように感じる。
文部科学省の官僚は理系がおらず、基本的に科学者の研究の評価ができない。
だから、論文数を評価基準として、予算の配分を行なっていたようにみえる。
その結果、いままで大学の研究者はできるだけ論文を生産するようにした。
独立法人化に伴ない大学は、収入源の確保のために企業との共同研究をより重視せざるを得なくなった。
企業との共同研究の場合、企業は自分たちにとって有益な研究に金を出そうとするはずだ。
これは短期の実用研究という意味ではなく、長期的な視野での基礎研究についてもあてはまる。
企業の技術者は単なる数値の論文数ではなく、研究自体の価値を評価できる。
その結果、研究者は質の低い論文を量産するのではなく、意味のある研究に集中したのではないだろうか。

日本の大企業はちょっと前、外国の大学には多額の寄付をしているのに、日本の大学にはお金を出していなかった。
1998年に日本版バイドール法である大学等技術移転促進法ができて、企業との連係が進み始めた。
そして、国立大学の独立行政法人化に伴ない、それが促進されているのだと思う。
アメリカの大学が基本私立大学であり、かつ業績を挙げていることを考えれば、いい方向に進んでいるはずだ。
日本の科学技術のレベルが落ちているかどうかはわからないけれど、論文数の低下は直接関係ないというのが私の意見だ。

このエントリーをはてなブックマークに追加
LINEで送る

コメント

233

有能な研究者や技術者が高齢化でどんどん引退しているのかも知れませんね。
日本各地の年齢別人口グラフを見ると分かり易いかも知れません。

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURLはこちら