異をとなえん |

中国がアメリカに対して敵対的になっている理由

2010.03.21 Sun

20:52:32

中国がアメリカに対して敵対的になっている理由が気になっている。
WEDGE Infinityというサイトのチャイナ・ウォッチャーの視点というシリーズを最近見つけたが、なかなか面白い視点で参考になる。
その中の中華VSアングロサクソン 冷戦時代到来か?という記事では、中国が欧米に対して強硬外交に転換したと指摘している。
米中関係において、アメリカが中国に対して強硬姿勢にならざるを得ないのではないかと私は考え、そういう記事も書いた。
けれども、中国がアメリカに対して敵対的になるかどうかは、あまり意識していなかった。
中国がアメリカに対して敵対する理由があるのだろうか。
そこらへんを考えてみた。

まず、アメリカが中国に対して敵対的になっている理由はアメリカの製造業が中国に対して進出していくことに耐えられなくなっているからである。
多国籍企業の経営者の視点として見れば、アメリカの労働者も中国の労働者も変わらない。
ほぼ同じ労働をして賃金を安ければ、そちらに工場を移していく。
今までは、製造業の仕事がアメリカから失われても、住宅価格の高騰によって、アメリカの所得は増えていたので、それほど問題は起こらなかった。
景気が良かったので、工場の職を失った人も別の仕事にありつくことができた。
しかし、住宅価格の上昇が止まり、景気が悪化すれば、失業者は新たな職にありつくことができない。
そのために、労働者は工場の移転に強力に抵抗するようになる。
労働者として抵抗するには弱くとも、彼らはアメリカの有権者としての力を持っている。
政府に圧力をかけることによって、制度自体の変更を目指すことになる。
アメリカでは保護主義的な力が噴出し、元を高くするように中国に求めているのも、その一つ現れとなる。
アメリカが中国に対して強硬姿勢に転じたのはそのためだ。

それに対して中国は低姿勢でやり過ごすのではないかと思っていた。
しかし、中国は力には力と、アメリカに強力に反撃しようとしている。
その理由はなぜだろうか。
たとえば、通貨が元高に振れるのは中国にとって、それほど問題ではないと思っている。
なぜ中国は元高を激しく否定するのだろうか?

中国はインフレを激しく嫌っている。
その理由はインフレによって、社会構造が壊れることを怖れているからだ。
インフレにより、追い詰められた低所得の人々が流動化し、都会に集中して、過激化することを一番心配している。
だから、インフレが発生すると、それを必死に止めようとするし、インフレにならないように、都市と地方の間の流動をできるだけ減らそうとしている。
戸籍制度を維持して地方から都市に人口が移動しないようにし、交通網の充実を遅らせてきた。
それでも、経済成長が続き、一人当りの生産性が上昇していけば、インフレを避けることができない。
正確にはインフレが元高かの二者択一である。
インフレは、貿易財を生産する労働者が増加して、労働市場が逼迫し、賃金が上昇し、サービス業の労働者の賃金も上昇して、全般的に物価が上昇することになる。
元高は、貿易財を生産する企業の競争力を弱めて、生産が伸びなくなる。
労働市場の需要は減るので、賃金は上昇しない。
しかし、輸入品が安くなることで、相対的に競争力の弱い市場に外国から商品が入ってくる。
中国の場合は農業だと思うが、その場合やはり農家から人が押し出されてゆくことになる。
大きな観点から見れば、インフレも元高も同じような影響を及ぼす。

しかし、短期的には当然違うはずで、中国政府が数年前に為替を元高に向けたのは、インフレより元高を好むからだ。
インフレは労働市場の逼迫によって、人が動くことで、社会に変動が起きていく。
それに対して元高は、輸入品が地方に浸透していくことで社会を変動させる。
人の移動の方が、中国政府にとっては直接的な問題で、阻止したい。
それに対して、商品の移動はシステムが整っていないとなかなか進まない。
小売業が輸入品を扱ってくれないと、地方の消費者は買えない。
それらの観点から、数年前中国政府は元高を選んでいると考えていた。

現在、中国政府は元高を精一杯拒否している。
外国から圧力を受けて実行するのは嫌だという面子の問題もあるけれど、それ以外の理由はないだろうか。
一つはバブルな気がする。
本来ならインフレになるはずなのに、バブルが発生してそれが抑えられている。
消費に向かうエネルギーが全て投資に向けられることによって、インフレを止めているのだと思う。
仕組みはよくわからないが、バブルにはインフレを短期的には抑える力がある。
インフレが発生していなければ、中国政府は元高によるインフレ抑制の努力をする必要がない。
むしろ、競争力を落とすだけ不利だと考えているのだろう。

もう一つは、やはりナショナリズムだ。
中国の経済成長は、先進国と中国の間の賃金の差による利益を多国籍企業と中国政府が手にすることで実現した。
労働者にはインフレが進んでいないことからもわかるように、あまり利益は分配されていない。
それが、労働者と経営者の間の格差を生んでいる。
制度的な都市と地方の間の格差も含めて、中国国民の間には潜在的な不満が高まっている。
その不満を発散させるために、ナショナリズムが利用されているわけだ。
歴史によくある、内政の不満を転換させるために、外交で得点を稼ごうとするケースだ。
欧米に対して、強硬姿勢に転換したのも、それが理由だろう。

アメリカが中国に対して敵対的になり、中国がアメリカに対して敵対的になる以上、それを緩和する術はない。
対立はエスカレートしていくはずだ。
具体的な未来はよく見えないが、あらゆる点で最悪の事態を想定する必要がある。

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