異をとなえん |

中国はバブルなのか?

2010.01.14 Thu

00:57:10

中国で引き締め政策が始まった。

中国の予想外の姿勢転換、政策金利引き上げや人民元上昇の前触れか

記事によると預金準備率を50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き上げたのだ。
新興国の引き締めは全般的には予想されていたとはいえ、中国の引き締めが今だとは思っていなかったこともあって、かなり影響している。
中国の景気後退、日本の輸出低下が連想され、日経平均が下落した。

中国の景気はバブルっぽい様相を強く示している。
中国人が夢見る「憧れのマイホーム」 不動産投資も過熱し、バブルが沸騰中
引用開始

大学を卒業したばかりの中国の若者はみんなマンションを買おうとする。ちなみに、大学新卒の年収は約2万〜3万元程度(約30万〜45万円)。それに対して都市部の新築マンションは、80万〜120万元(1200万〜1400万円)もする。

 年収の20倍以上ものマイホームを購入しようとする考え方は一般的にあり得ない。
引用終了

物価は上がっていないのに、住宅価格が上昇している。
大学を出たばかりの若者が、年収の何十倍ものマンションを借金して買っている。
典型的なバブルの症状に見える。
しかし、中国みたいな一人当りGNPが低い発展途上国でも、バブルは起こるのだろうか。
前にそんな疑問を呈していたが、その疑問に答えてみたい。

中国がバブルかどうかは、まずバブルの定義によって決まる。
バブルとは何か。
バブルの最大の特徴は、とにかく普通の景気後退に比べて影響が大きいことだろう。
それは、普通の景気後退が在庫の変動から来ているのに対して、バブルは資産価格の減少を通じて起こるからだ。
資産価格の下落は経済に大きな傷跡を残し、金融システムの安定性を損なう。

それでは、なぜ資産価格の上昇が起こるのだろうか。
今までもいろいろな説を考えてきたが、現在の私の仮説はこうである。
ある国の経済が大きく成長していた。
しかし、ある時点で今までの成長率を維持するほどの需要がなくなってしまう。
需要がないということは、投資先がないということで、成長率は低い方に屈折する。
けれども、期待成長率は急には下がらない。
今までが5%だったら、5%の成長を期待している。
だから、5%の金利を少し下がった所で金を集め続け、5%の金利を少し上回った所で運用しようとする。
でも、運用先がないため、とりあえず安そうな資産を買っておく。
運用先がなければ借金しないというのは正論だが、今までの成長が頭に残っているから、借金しても成長を目指してしまう。
安そうな資産を買ったのであっても、みんながみんなそう思っていれば、その安い資産の価格は上昇していく。
バブルの発生である。

日本の場合、バブルの発生の依代は土地だった。
中国の場合の依代はよくわからない。
全体的に上がっているように見える。
不動産にしても、株式や商品にしてもだ。
海外の資源に盛んに手を出しているのも、バブルが関係しているように見える。
バブルが崩壊すると、経済は逆回転し不況に突入する。
経済は資産価格の上昇によるムダな成長を元に戻し、さらに本来の成長率の下方屈折分の低迷も重なって、景気はなかなか回復しない。

中国の場合もバブルだとしたら、成長率の下方屈折が起きているのだろうか。
私には起きているように見える。
中国の成長の根源は、今まで外国からの直接投資によって、欧米への輸出が伸びたことだった。
それら輸出企業の生産性の上昇が中国の経済成長を支えてきた。
しかし、中国の賃金上昇は輸出企業の競争力を下げ、ベトナムやインドなどに投資がシフトしている。
つまり、成長率が下がるのはありうる話だ。

もう一つ成長率の屈折になるのは、中国の人的流動の弱さだ。
中国は戸籍の管理によって、農村から都市への人口移動を制限している。
農村から都市へ移住しても、戸籍が貰えず、教育や社会保障の対象外だ。
それでも、今までは、出稼ぎ農民は増え農村から都市への人口移動は続いていた。
でも、その力はあまり強くない。
インフレの発生が人口移動による生産性の上昇の現れだと思うのだが、中国政府はそれを嫌っている。
物価の上昇をできるだけ止めるために、人口の移動を制限している。
そのような抑圧を止めることが、経済成長の基礎だと思うのだが、共産党一党独裁体制の元ではそれも簡単にはいかない。

つまり、中国の成長率の屈折はあり得ることで、生産性の上昇が今後簡単には起こらないのだとしたら、バブル崩壊の余波は長く続くはずだ。
中国の一人当りGNPが低いことによる成長への可能性も、中国が自主的に技術開発していないのだとすれば、生産性の自動的な上昇を導き出すものではない。
外国からの技術移転がなくなれば、生産性は上昇しないことになる。

中国がバブルかという問いには、私の答えはイエスになる。
だとしたら、今回の引き締めは長い不況の始まりかもしれない。

私は前中国の成長は自律的なものだと予測してきた。
その最大の理由はインフレの発生だった。
でも中国の体制はインフレを許容できない。
けれども成長は必要としている。
その道筋は余りにも細いと言わざるを得ない。
今回、もし景気後退が起これば、国民の不満から中国の政治改革への欲求は強まるだろう。
大きな混乱が起こることもありうる。

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