異をとなえん |

「プロジェクトX」が嫌いだった

2009.12.09 Wed

03:45:57

「プロジェクトX」という番組があった。
日本のいろいろ成功したプロジェクトのドキュメンタリー番組だ。
世間では流行っていたけれど、私は嫌いだった。
努力すれば成功するという単純な話に還元していて、本当にプロジェクトが成功した原因を追及していない。
競争がある以上、勝者と敗者がいる。
勝者が敗者を上回った理由は単純にがんばったとかではなくて、確固とした戦略があったはずだ。
その戦略こそ私の知りたいものであり、興味を持つところだった。
それが「プロジェクトX」では、ただ単にがんばっただけしか読み取れない。
それではつまらない。
私はそう考え、2、3本しか見たことがなかった。

最近考えが変わってきた。
経済というのは、がんばれば成功する、それだけのものだと考えるようになった。
どんな人間でもがんばってさえいれば、仕事に慣れ、生産性は向上していく。
解決方法がある問題ならば、手当たりしだいに挑戦していけば、いつかは答えにたどりつく。
だから、新しい技術革新が成功するのは当然のことなのだ。
実際、今までの歴史はそれを証明してきた。
もちろん、ただがんばればいい訳ではない。
競争だから勝者と敗者がいるのは当然のことだ。
しかし、ある目標に向かってがんばった時、勝者は一人だけかもしれないが、そこで考えを切り替えればゴールはいっぱいある。
一つの山頂への挑戦に負けたとしても、そのルートを利用して別の山頂に向かえばよい。
経済はゼロサムゲームではない。
一人の人間の利益は別の人間の利益にもなるのだ。
誰かがある技術革新に成功すれば、その技術を応用した世界も開けていく。
そういう風に経済はできている。

経済は優れた人だけで成り立っているのではない。
どんなに優れた人でも、全てをできるわけではない。
時間がかかろうと、能率が悪かろうと、解決しなくてはいけない問題が社会にはたくさんある。
その問題を解決し、人々の役に立つならば、それが成功なのだ。

そんな事を考えると「プロジェクトX」をあんなにじゃけんにするんじゃなかったと思う。
単純に努力して、その結果成功した物語として楽しめただろうから。
もっとも、ゲームとして考えた場合、なぜ一方が勝ち、他方が負けたかは重要な問題だ。
そういう観点から作っても面白いだろうけど、それは番組の作り手の提供したいものとは違ったわけだ。

日本についてはいろいろ不安な事が多い。
デフレはきついし、株価は低迷しているし、国の借金は山ほどある。
少子化も心配だ。
でも、日本の多くの人はがんばっている。
努力を忘れ、傲慢になり、浮かれているわけではない。
今までの方法でうまくいかなければ、別の方法を試してあがいている。
そうじゃないと考えている人もいるみたいだけど、会社が潰れれば仕方がなく変わっていく。
十年も給料が上がらなければ、何かを変えないといけないと考えだす。
人はそういうものだ。
それらの努力はいつか結果を出す。
「プロジェクトX」のことを考えていたら、「艱難汝を玉にす」という言葉を思い出した。
日本も今の苦境こそが、未来の飛躍の土台となる。
そう信じている。

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コメント

209

寺田寅彦さんが「科学の発見は屍山、血河の畔に咲いた一輪の花だ」書いていました。
成功した例が面白いから、放送するんでしょうけど、失敗して潰れた例のほうが面白いのではと思いました。その方が成功の何倍も例があり、普遍的だと。
軍事オタクくずれでいうと
マグドネルF3HデーモンがあったからF4Hファントムがあったのだし。
F111BがあったからF14があったのだし。
胴体着艦という、着想があったから、アングルドデッキができたのだし。
戦艦キアサージの2段式の砲塔があったから、ミシガンの背負式主砲配置があったのだし。
ホーク戦闘機の2本に分けるジェットのノズルがあったから、ハリアーができたのだし。
T34のソ連だって多砲塔戦車なんてのを作っているし。

211 Re:寺田寅彦さん

失敗した例だと、野口英世のことを思い出しました。
偉人の本では褒めたたえているけれど、実際は全然違う。
現在の目から見ると、後世に影響を与えるような業績は何もない。
でも偉人でない所が感動できる。
名誉を求めて必死にがんばって、何一つ事を為せず死んでいく。
「遠き落日」を読んで、かくありたいと強く思いました。
山本周五郎の言葉に「人間の価値は何をなしたかではなくて、何をなそうとしたかだ」、というのがありますけれど、失敗した人はそれを思い起こさせます。

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