異をとなえん |

「イリアム」感想

2009.08.22 Sat

19:32:57

ダン・シモンズ著「イリアム」を読む。


この本では三つのストーリーが並列に展開する。
ギリシャ神話に題材を取ったトロイの戦いを描く話。
外惑星に進出した地球人が造り出した知的生命体が内惑星の動向を調査する話。
遠い未来の人類が自分たちの存在に疑問を感じて世界を探検する話。

その三つの話が別々に進行していたのでは、
小説にならないから関連性があることが少しずつわかってくる。
外惑星の話と未来の地球人の話は同じ時間の話で
彼らは最終的に接触するのではないか、
ギリシャ神話は未来人のドラマに関連しているのではないか、とかだ。
この話の関連性の部分が、本を読ませる原動力になっている。
解決を必要とする円環の欠けている部分というわけだ。

最終的に三つの話の内、二つは融合する。
ただし、残った一つの話と他の二つの話との関連性はほぼわかるが、
はっきりとは融合していない。
その融合した話は続編で語られるのだろうけれど、ここまで長いのに、
なおかつ典型的な「おれたちの戦いはこれからだ」エンドでは、
不満もたまってしまう。

本編の話も感情移入がもの凄くしづらい。
はっきり言って共感を持てるキャラクターが誰もいない。
ギリシャ神話の部分には、
意味があるのかどうなのかわからないキャラクターが大量に出てくるのだが、
訳のわからないギリシャ名で覚えられはしない。
もっとも、全然覚える必要はない。
少くとも「イリアム」の部分だけでは、ほとんど意味がない。

「ハイペリオン」以来ファンであるが、
ファン以外には勧められない本のような気がする。
ダン・シモンズのもっとも優れた点が
ページを次々とめくらせる能力と考えれえば、
ほとんど徹夜で三冊読ませられた「殺戮のチェスゲーム」が最高傑作だった。

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