異をとなえん |

被害妄想をやめろ - 「激突 国際標準戦争」感想

2009.08.15 Sat

21:09:50

被害妄想はやめろと言いたい。
NHKの「追跡!A to Z」の8月8日放送の
「ニッポンは勝ち残れるか 激突 国際標準戦争」の感想である。

番組は超高圧送電の新たな国際標準規格を決める攻防を描いている。
1050kvと1200kvの紙の上だけの標準があった所に、
日本は1100kvの国際標準規格を新たに提案した。
しかし、ヨーロッパの国々がその標準化に反対している。
はたして結果はいかにという話である。

参照:NHK追跡!A to Z「国際標準戦争」

最終的に日本の提案の規格は国際標準になるのだが、
薄型テレビが国際標準によって、
輸出できなくなるという話から始めることもあって、
日本の正義の標準が悪のEUによって打ち砕かれそうだという、
メッセージみたいな物が感じられた。

しかし、番組を見たかぎりでは、私の目には逆の可能性もあるように見える。
日本が技術力に任せて横紙を押し通したという受けとめかただ。

ヨーロッパで
1200kv関連の技術を開発しているメーカーの気持ちになってみよう。
UHVは将来性があると、地道に基礎研究を続けてきた。
要素技術の一つはようやく完成の目途がたち、
今後の実用化に向けて電力会社と具体的な開発計画が確定した。
そこに、日本から1100kvと標準ではない規格が提案され、
すでに動いているという。
電力会社は開発計画を撤回し、日本の製品を採択しようとする。
そのメーカーの開発は大赤字に終わる。

こんなメーカーがあるかどうかは、わからない。
しかし、実際にそんなメーカーがあれば、
日本のやり口はあまりに汚いという感情しか持てないのではないだろうか。
大企業が自分たちの技術開発力を活かし、
ユーザーとのコネを使って独占的に開発し、
中小企業を締め出しているように見えないだろうか。

国際標準の場で戦おうにも、既に世界最大の市場となる国は押さえられ、
実用化も間近かい。
紙の上の製品だけでは対抗しようがない。
技術開発は競争だから勝ち負けは仕方がないとも言えるが、
1100kvで開発しているという情報を流すのは礼儀ではないか。
そうすれば、そちらにシフトする展開もあった。

もちろん、私の意見は現実を良くわかっていない。
超高圧送電などの分野にそんなメーカーはそもそも存在しないのかもしれない。
あるいは、本当にヨーロッパの国々の間では、
日本の標準を排斥したいと考えている人がいるのかもしれない。

こちらの記事を見ると、
1200kvの標準はロシアが主導し、
1050kvの標準はEUが後から押しこんだみたいだ。
つまり、EUとロシアの間で国際市場を分け合う陰謀が結ばれたと解釈もできる。
この時、なぜ日本も1100kvも標準に入れるようにしないか、よくわからないが。

それでも、日本の主張が通ったことは、
戦争などと言うほどの実態がないように見える。
日本の提案に反対に回った国々がなぜ反対したか、
番組は何も取材していないが、それなりの理由があったのではないだろうか。
たとえば、ドイツやスウェーデンのように、それなりの実力を持ち、
どう規格が決まろうとも、
ある程度の需要を確保できる国は損得を計算して冷静に判断できる。
けれども、技術力が大してない国にとっては、冷静に判断することは難しい。
その結果、国際規格を自分たちの頭越しに決められることにたいして、
一泡吹かせたい気持ちから反対することも考えれられないだろうか。

もちろん、日本にも言い分はあるだろう。
コミュニケーションの壁は大きいし、距離も遠い。
世界の国々を参加させての開発など考えられない。
1100kvの標準を主張しようにも、口だけでは簡単に負かされてしまう。
現物を持ってきて、
その素晴しさを証明して始めて世界から理解が得られたのかもしれない。

だからと言って、日本が世界から孤立していて、
いじめられているという被害妄想に走るのは、間違っている。
実用に供する製品を持っていて、中国という顧客をつかんでいる日本は、
明らかに超高圧送電の分野では優位に立っている。
そういう国が被害妄想に走り、他の国に喧嘩を売る必要などない。
金持ち喧嘩せずということわざもある。
第二次世界大戦において世界から孤立しているという考えから、
無謀な戦争に走ったことを考えて欲しい。

以上が私のメインの感想だが、その他に二つばかり大きな疑問があった。
一つはインドのことで、
1200kvで開発を進めると言明していたが本当にそうするのだろうか。
標準設定の話でのブラフに思えたのだが、今はどうしているのだろう。
もう一つはWTOのことで、
国際標準規格に沿っていないと輸出できないといっていたが、納得できない。
全ての商品に国際標準規格があるとは思えないからだ。
少くとも、なんらかの付帯条件がついているように見える。
そこらへんのことも番組で紹介して欲しかった。

追加取材をして欲しい要望がたくさん出るということは、
頭を刺激するいい番組だったのだろう。
それでも、
戦争と名乗るからには対戦相手に対する取材は必須ではないだろうか。
相手の戦略戦術を理解するためにもだ。

標準は開発者、ユーザーみんなが利益になるように決めるものだ。
戦争などと考えるのではなく、
全体の利益を考えて、その中で自分たちの考えを主張していくものだろう。
世界とのコミュニケーションを広め、互いの誤解をなくして競争し、
共存共栄していく、そういう番組を作って欲しい。

このエントリーをはてなブックマークに追加
LINEで送る

コメント

167

もともとインフラ系の標準は日本は政治力がないせいでさんざん塗炭の苦しみを味わってきましたからねえ。被害者意識になるのも仕方ないかもしれませんが・・・。

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURLはこちら