異をとなえん |

物語の構造

2009.08.01 Sat

20:30:30

好きな小説家を三人あげろと言ったら、
私の場合その筆頭にあがるのは山本周五郎だ。
小学校の頃、叔母の家にあった全集の一冊を読んで以来、ずっと好きでいる。
物語として抜群にうまく、引きこまれる。
その中の好きな作品の一つに、「樅ノ木は残った」がある。

ここからは、一応ネタばれなので空白を入れておく。
たいしたネタばれではないが、
読んでしまうと私が独力で気づいた感動は手に入らない。
どうしてもと思う人は先に作品を読んで欲しい。
なお、部分だけ読んでネタばれ回避の方法はない。
ネタばれの部分はあいまいにするが、この記事の特徴から、
ほぼ確実にネタばれする。
もっとも感動したのは独力で気づいた部分が大きくて、
これは気づく人はすぐ気づくけれど、
気がつかない人はほとんど気づかないと思うので、
それほど気にすることはない。
ミステリ的なネタばれをあるけれど推理小説ではないので、
これもあまり気にする必要はないだろう。























「樅の木は残った」を読んでから、数年たったころだと思うが、
物語の構造とかそういうことを考えるようになっていた。
ある時、「樅の木は残った」のラスボスに当たる人物が、
どの時点で小説に登場するかが気になった。
なんで、その時そんなことを考えたかわからないが、
たぶん「樅の木は残った」を読み直していたのだろう。
ラスボスに当たる人物は物語の最終盤に、
主人公原田甲斐と会った時のことを思い出す。
2度会ったと回想するのだが、
私は2度目に会う小説の中盤でのシーンは覚えていたが、
最初に会ったシーンは全然記憶になかった。
小説の中では描写されていないのかも知れないが、
気になって確認のため最初から読み直して驚いた。
いや逆かもしれない。
いつ登場するか当りをつけてから読み直したような気もする。
確認して、物語とはかくあらねばならいのだと思った。
そして、最初の対決シーンが頭の中に広がり、映画みたいだなと思った。

こんなことを思いだしたのは、
アニメ「化物語」の「まよいマイマイ」のエピソードが良くできていたからだ。
「まよいマイマイ」は3話構成で、シリーズの中では3話から5話になっている。
エピソードの最後の方で、
主人公阿良々木暦が一瞬意味のわからない言葉を吐く。
その意味不明の言葉はエピソードの冒頭に伏線が張ってあって、
私はヒロイン戦場ヶ原ひたぎの笑う顔を見ながらその意味に気づく。
それを理解すると私はいい話だなと思うわけだ。
理由はよくわからないが、物語に構造があり、伏線がきちんとはってあって、
それが回収されると快感なのだ。

その快感を反芻したくて、
今日になって3話分のエピソードを見直してしまった。
ミステリ仕立てということもあって、
伏線がそこら中にはってあることに気づく。
最初見た時は
ポップな軽い感じの4話目のオープニング曲がテーマそのものだったり、
「まよいマイマイ」のエピソードの主役である
八九寺真宵(はちくじまよい)の
主人公に向けられた嫌いですという言葉の意味がわかる。
理解しづらかったキャラクターの心情が染みいってくる。
そうすると、今までは会話の面白さに釣られて見ていたのが、
キャラクターに共感しながら作品を見ていることに気づく。

物語は円環の欠けている部分を補うことで成立すると聞く。
父親がいなくなった。
父親を探しに行く。
父親を見つける。
そんな感じだ。
なぜかはわからないけれど、人間にはその構造が気持ちいい。
だから、
私は首尾一貫した最初から伏線がきちっとはってある物語が好きなのだろう。
そういう風に書きたいなと思う。

私の書いている文章は物語ではなく、論文みたいなものだ。
最初に結論を書くのが望ましいといろいろな本に書いてある。
だけど、最初に結論を述べ、後で理由をいろいろとつけ加えていくと、
文章をどう終るのがいいのか、いつも迷う。
尻切れトンボみたいになりがちなのだ。
物語の構造を考えることで、解決方法を一つ思いついた。
主題とあまり関係ない話を、冒頭に入れ最後で補足するという方法だ。
若干姑息かも知れないが、それでも自分の中では座りがよくなる。

そんなわけで、冒頭の好きな作家の内残り二人をあげて終わろう。
私の好きな作家の残りの二人は、
ロバート・ハインラインとセシル・スコット・フォレスターになる。
セシル・スコット・フォレスターの代わりに、
ディック・フランシスを入れようか迷うのだが、一二位は決まっている。
総じて、自立した男を理想としているのかもしれない。
もっとも、我が身と引き比べて見ると愕然としてしまうのだが。

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