異をとなえん |

バブル崩壊後の長期停滞の仕組み

2009.06.24 Wed

03:32:22

前に日本のバブル崩壊後の停滞が長く続いた理由について、
記事にしたことがある。
未完成のままだが、その後もいろいろ考えている。
少し考えが変わった部分もあるので、また記事にしてみたい。

まず、日本のバブル崩壊後の長期停滞の原因が、
土地価格の下落にあることは間違いない。
しかし、土地価格の下落だけが特別なのではない。
何であろうとも資産価格の下落は経済を縮小させると思う。

たとえば、海外に持っている自国の債権が何らかの理由で消滅したとしよう。
すると海外からの利子分の収入がなくなってしまう。
つまり、その分だけ消費か投資が減ることになる。
海外からの利子が、GNPの10%を占めていたとすれば、
当然GNPは10%減少するはずだ。
これが元のGNPにまで戻るには、経済成長によって埋めなければならない。
それには長い年月がかかることになる。

地価の下落による資産の減少も同じ理屈だ。
ただ、地価の下落は最初は強弱見方が別れるので、
その地代もゆっくり減少していく。
だから、長期停滞を生みやすくなる。
つまり、需要もじりじり下がってゆくことになるので、
通常の成長と打ち消しあえば、0%成長に近くなる。
日本はその例だったと思う。

この時、問題なのは収入の減少による需要の減少の場合、
その影響が新しい需要に集中して影響を及ぼすことだ。
経済成長というものは、今までの生産の効率を高めて労働者の余剰を生み出し、
新商品の開発による需要でその余剰労働者を吸収して起こる。
しかし、収入の減少による需要の減少が起こった場合、
その時一番に不要とされるのは新しい商品、新しい産業だ。
つまり、労働者を吸収する部門が一番に成長できなくなる。
また、本当の意味で生産性が急速に上昇するのが新産業だから、
そこが成長しないのは通常の意味での成長率に悪影響を及ぼす。
一方、既存の産業も需要の減退によって、企業は苦しくなる。
その結果生産の効率を高める努力は加速され、労働者の雇用は減少してゆく。
当然のことながら、この二つの結果、
失業率は上昇し労働者の賃金は上がらなくなる。

長期停滞を止めるために、公共投資はこの場合役に立たない。
地代で500万の収入があった人が450万に減少した。
そこで50万借りることができたとしても、役に立たないのと同じことだ。
その人の収入が450万だということを認識して、それで生活していくしかない。

輸出にも頼ることはできない。
なぜ、輸出を伸ばすことで成長することができないのだろうか。
資産価格の下落が始まる前、輸出入は均衡しているはずである。
黒字赤字があったとしても、それを勘定に入れて均衡している。
資産価格の減少による不況が到来したとしても、
生産費用は変わらないので、商品の下げられる価格には限界がある。
輸出はあまり伸びないことになる。

さらに、国内の需要が減少する以上、輸入も減少する。
変動為替相場のもとでは、他国通貨の需要が減ることを意味するから、
自国通貨が上昇することになる。
具体的に言うと、日本の場合輸入が減少すれば、ドルの需要が減り、
結果ドル高に向かう。
さらに、日本の場合外国に持っている債権が多かった。
日本国内で資産が減少しているので、
必要な資金、借金の返済や赤字の補填などのために、
国外の債権を処分して国内に戻していった。
これも、円高に向かう要因となる。
実際バブル崩壊以後、
円は1990年1ドル144.79円から1995年94.06円と上昇を続けることになる。
自国通貨が上昇すれば、さらに輸出するのは苦しくなる。
経済は停滞を深めるしかない。

資産価格の下落が続いている間は、いつまでも成長の足を引っ張り続ける。
経済の本格的な回復には、資産価格の下落が停止し、
その時点での均衡が達成した後になる。

経済の回復は次のように起こる。
国民・企業は長期不況の苦い経験から消費・投資を急激に増やすことはない。
その結果、貯蓄が増えていく。
その貯蓄は消費も投資も増えてないので、海外に投資として流出するしかない。
海外通貨の需要が増え、自国通貨は安くなる。
当然、輸出は増大してゆく。
それに伴い設備投資が増え、労働者の雇用が増えていく。
労働者の雇用が増えれば、賃金が増え、消費が増えて、成長してゆく。

以上が現在私の考えている、長期停滞の仕組みだ。

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