異をとなえん |

中国の消費性向はなぜ低いか?

2009.06.15 Mon

11:06:28

中国の消費性向が低いのは、一つの謎である。
通説では社会保障が不十分だからというのが、その理由だ。
つまり、年金制度が確立していないし、
一人っ子政策で老後の生活が心配ということで、貯蓄に励む。
医療保障が十分でないので、高額の医療費に備えるために貯蓄に励む。
だから、消費が増えない。
私もこの問題については、いろいろな説を考えている。
富が上位階層に集中しているので消費し切れない
とか、
外資が利益を中国にためている
とかだ。
二つの説は貿易黒字が極端に多い理由を述べているが、
貿易黒字が極端に多いのは、消費性向が低いためなので、
本質的には同じことだ。

今回、もう一つの仮説を思いついた。
中国は土地の所有者がはっきりしていないので、
土地から得られる利益の分の消費がなされていない、というものだ。

中国の土地は国家が所有していることになっている。
国民は使用権という期間を区切って使う権利を持っているだけだ。
「中国で「50年の土地使用権」を取得できる制度とはどのようなものか?」
のページによると、住宅地だと70年、工場だと50年だ。
都市で、新規に使用を始める場合は政府に申請して、この権利を取得する。
けれども、この期間が過ぎた後、どうなるかは、はっきりしていない。
法律では一応継続できるみたいだが、具体的にどうなるかは定まっていない。
農村の方は、よくわからない。
共同で使用権を持っているみたいだが、確固たるものではない。
だから、政府は公共の福祉のためならば、
勝手に土地を取り上げることができる。
つまり、土地制度はかなり不透明で、はっきりしていない。

中国は高度成長が続いているわけだから、
通常の市場経済の国では、土地価格は高騰しているはずである。
そうすると、土地を持っている人は、そのキャピタルゲインが手に入る。
このキャピタルゲインの分だけ、普通は消費を増やせることになる。
けれども、中国国民は土地の所有権を持っていない。
使用権しかない。
期限がくれば、消滅してしまう権利だ。
継続できると言っても、はっきりしない。
だから、中国国民は、キャピタルゲインを手に入れられるかどうか、
良くわかっていない。
貯蓄に励むことになる。

しかし現在は、国家が土地を所有しているのだから、
国家は膨大なキャピタルゲインを手に入るはずだ。
でも政府は、それを認識していない。
土地自体は、売買できないのだから、認識しようがないと言える。
政府が土地の価格の上昇を認識できるのは、
公共の利益のためという理屈をつけて、土地を強制収用する時ぐらいだ。
その場合、安い補償料により、ただ同然に入手した土地を、
より効率のいい利用に変換することができるので、
使用権を高く売ることができる。
「中国現代化の落し穴」では、政府による土地の収奪と批判されているが、
土地の所有権が国家にあるならば、正当な権利とも思える。
それが批判の的になること自体が中国の制度問題なのだろう。

前の私の説と比較検討してみると、
まず、外資が利益を中国に貯めているというのは、間違っていた。
外資が中国に利益を蓄えているとしても、それを現金のまま持っているわけがない。
金融商品等に変換すれば、それは投資に回ることになる。
消費性向は変わらなくとも、貿易黒字は減る。

もう一つの説である、富の集中した上位層が消費し切れないというのは、
ある意味正しい。
土地のキャピタルゲイン分を使っていないというのは同じだからだ。
ただ、使わない理由を、少数だから消費し切れないというのではなく、
認識できていないから消費しようがないという今回の説が正しく思える。

現在中国政府は、景気の後退を食い止めるため、
巨額の公共投資を実行している。
これは、とにかくどっかに存在しているであろう、
土地のキャピタルゲインを使っているという点で、
正しい政策なのかもしれない。

このエントリーをはてなブックマークに追加
LINEで送る

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURLはこちら

223 土地と通貨の類似性

サッカーワールドカップ予選でオーストラリアに負けた。 つくづく日本は弱いな。 一点取った後、ケーヒルに二点取られて逆転という、 ワールドカップと同じパターンで負けるとは全然進歩がない。 なんか、がくっと来てしまった。 元気がないので、今回は前にメモしておいた文...