異をとなえん |

日本の情報発信力が弱いのはなぜか

2009.05.09 Sat

00:33:15

日本の情報発信力が弱いのはなぜか。
英語ができないからではない。
情報を発信する意義が薄くなっているからだ。

戦前の日本人は、今の日本人より英語がうまかったという話をよく聞く。
今の日本人みたいに小学生、中学生ごろから勉強するのではなく、
社会人になってから勉強したとしても、ずっとうまいというのだ。
その理由は、国際社会の中で日本の主張を世界の人々に聞いてもらうために、
英語で自分たちの意見を発信し続けざるを得なかったからだ。
弱小国の日本は黙っていると、悪意はなくとも無視され、
不利な条件を押しつけられる。
それを拒否するために、当時の日本人には、
自分たちの意見を聞いて欲しいという強い欲求があった。
不平等条約の改定のために、人種差別の反対のために、
必死に言葉を発し続けた。
当然、向こう側からは反論がある。
その反論に答えるために、英語の能力は磨かれていった。

昨今の日本では、情報発信の根源的意義が薄れている。
強く国際社会に主張したいことはなくなった。
欧米の世界分割の野望は潰え、平和は守られ、自由な貿易が普及した。
欧米の侵略から自国を守るために、
日本が戦前欲っしていたことは、ほぼ達成された。

戦後の情報発信はアメリカからの要求に答えるために必要だった。
再軍備とか、市場開放とかいう、
それらの要求に反論するために情報発信が求められた。
アメリカが圧力をかけ、
日本はそれに対応するために国内の状況を説明・発信して、妥協に努めだ。
けれども最近アメリカはほとんと圧力をかけてこない。
クリントン大統領のときの外交交渉が最後といっていい。
日本の経済成長が落ちているために、
圧力をかけても何も出てこないことがわかっているのだ。
そうなると、何も日本側で必死になって、情報発信する必要がなくなった。

貿易についても同じことだ。
戦後貿易立国が言われ、成長するための資源の輸入代金を賄うために、
輸出の増大は死活事項になった。
商社マンは世界に進出し、各国の人々と交渉して輸出を伸ばそうとはげんだ。
繊維、トランジスタラジオ、テレビ、VTR、自動車と
花形輸出品の座は段々と変わり、いつしか貿易黒字は定着していった。
2008年度は貿易赤字になっが、大量の所得収支の黒字によって、
輸入できない不安などは発生していない。
世界最大の純債務国になった日本は当分貿易赤字が続いても、
大丈夫になっている。
つまり、商社マンがアフリカやアラスカの厳しい環境の地を訪ずれる、
必要はなくなっているのだ。
情報発信する力が弱まるわけである。

この流れについては当分続く。
情報発信は弱いままだろう。
でも、それほど問題があるわけではない。
それに、日本が情報発信する必要はなくなっても、
日本の情報を受信したがっている人は世界で増えている。
耳タコのアニメマンガゲームなどの文化だ。
日本がことさらに英語で発信しなくとも、
必要なデータは勝手に日本語の情報を翻訳して持っていく。
情報は伝達され、コミュニケーションできている。

日本の情報発信力の弱さを嘆く声がある。
日本の存在感の薄さを嘆く声がある。
私にはそれらは欧米と日本の間で橋渡しをしている人たちから、
出ているように思う。
英語屋とか呼ばれる人たちだ。
彼らは日本と国際社会の接点で活動している。
日本が情報発信に必死になると彼らの出番が来る。
逆に日本が情報発信しなくなると、彼らの出番はなくなってしまう。
最近の情報発信の弱さ論は、彼ら英語屋の危機意識が言わせている。
当人たちには、日本のために有益な提言をしているつもりだろうが、
実際は求職活動に近い。
もちろん、情報発信する必要性を感じたからこそ、
接点となる仕事についたわけだから、当然の行為ではある。
重要なのは客観的に日本が情報発信する必要があるかどうかだ。
情報発信力が弱いという意見には、
少くとも何の情報を発信する必要があるのかを問わねばならない。
その情報を世界にもっと発信したいという意識があるならば、
そこに努力を向ければいい。

たとえば、捕鯨問題は確かに情報発信する必要があるかもしれない。
ただ、この件に関しては日本はかなり必死にやっているように見える。
捕鯨国を代表しリーダーシップを取っているというのが私の理解だ。
少数派でなかなか受け入れられないが、だからこそ、情報発信する必要がある。

欧米社会の意見をそのままなぞって、
同じようなことを言うのでは情報発信する意味がない。
日本の情報発信力が弱いのは、
基本的に欧米諸国の主流と意見が一致しているので、
特に発言する必要を感じないからだ。
存在感は高めるために発言するというのは、本末転倒だ。
今後の情勢についてはわからない。
日本が発言力を高める必要性が生まれるかもしれない。
その場合も基本的な英語力を持っている人は増えているのだから、
必要性さえ生まれれば、メッセージを伝えることはできる。
それで十分だと思う。

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